注意事項
・本記事は公開時点の情報に基づいています。法令・制度変更等により内容が変わる可能性があるため、最新情報は公式サイト等でご確認ください。
・記事内の画像はイメージです。実際の商品・サービスとは異なる場合があります。
ビジネスにおいて、発注依頼メールは取引の起点となる重要なコミュニケーションです。
しかし、「どのような内容を記載すればよいのか」「法的に問題はないのか」と悩む方も多いのではないでしょうか。
この記事では、物品の発注だけでなく、IT開発や建築工事などのサービス発注まで幅広くカバーし、シーン別の例文10選と実務で役立つ注意点を解説します。
2008年に弁護士登録し、大阪市内の法律事務所に勤務したのち、2021年に独立開業しました。契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
【目次】
発注依頼メールの基本の書き方と送付マナー

発注依頼メールとは、商品やサービスの購入・契約を正式に依頼するために送信するビジネスメールのことです。
口頭や電話での依頼と異なり、発注内容が文書として残るため、後々のトラブル防止にも役立ちます。
件名を明確にし、本文には必要事項を漏れなく記載することが基本です。
発注メールと注文メールの違い
「発注」は、主に企業間取引(BtoB)で使われる用語で、継続的な取引関係や大量の商品・サービスを依頼する際に用いられます。
一方、「注文」は、より一般的な表現で、個人が商品を購入する場合(BtoC)や、単発の小規模な取引でも使われます。
ビジネスシーンでは「発注」を使うことで、よりフォーマルで専門的な印象を与えることができます。
法律上では、発注と注文の使い分けはなく、いずれも契約成立に向けた「申込」と評価されます。また、発注を以って契約成立とする場合には「承諾」と評価される可能性もあります。
発注・注文などの「申込」と、これに対する「承諾」があると契約成立となります(民法522条)。
したがって、発注・注文は、契約成立に向けた重要な行為であると言えます。
メール・電話・チャット、どの方法で発注すべき?
メールは、発注内容を正確に記録として残せるため、金額や納期などの重要事項を伝える際に最適です。
とくに取適法(中小受託取引適正化法)が関係する取引では、書面(メールを含む)での発注が義務付けられている場合もあります。
電話は緊急性が高い場合に有効ですが、後から「言った・言わない」のトラブルになりやすいため、電話後に内容確認のメールを送ることをおすすめします。
ビジネスチャットは、社内発注や日常的な小規模取引では便利ですが、正式な契約として記録を残す必要がある場合は、メールまたは発注書の添付が必要です。
※下請法(下請代金支払遅延等防止法)は、2026年1月1日から取適法(中小受託取引適正化法)に改正・名称変更されました。
発注依頼メールを送る適切なタイミング
発注依頼メールは、見積書を受け取って内容を確認し、社内での承認が得られた後、速やかに送信します。
見積書の有効期限内に発注することが基本ですが、検討に時間がかかる場合は、その旨を事前に取引先へ連絡しておくと、信頼関係を損なわずに済みます。
リピート発注の場合は、前回の納品後すぐに次回分の発注予定を伝えておくと、取引先も生産計画を立てやすくなります。
【発注形態別】発注依頼メールに必ず記載すべき項目
発注依頼メールには、取引内容によって記載すべき項目が異なります。
ここでは、物品・サービス・共通項目の3つに分けて解説します。
物品・商品の発注時に必要な項目
物品や商品を発注する際は、以下の項目を明確に記載しましょう。
- 品名・型番:商品を特定できる正確な名称や型番
- 数量:発注する個数や単位
- 単価・合計金額:1個あたりの価格と総額
- 納期:納品希望日または期限
- 納品場所:配送先の住所や部署名
- 支払条件:支払方法(振込・手形など)や支払期日
これらの情報が不足していると、取引先から確認の連絡が入り、発注処理が遅れる原因になります。
とくに型番や数量は、記載誤りがあると大きなトラブルにつながるため、送信前に必ず確認しましょう。
サービス発注(IT開発・デザイン・建築)時に必要な項目
IT開発、デザイン制作、建築工事などの無形サービスを発注する場合は、物品発注とは異なる項目が必要です。
- 業務範囲・作業内容:具体的に何をどこまで依頼するのか
- 成果物の定義:納品物の形式や仕様(システムの機能、デザインデータの形式など)
- スケジュール:着手日、中間報告日、納品日などのマイルストーン
- 検収条件:どのような基準で完成とみなすか
- 修正回数・範囲:無償対応できる修正の回数や範囲
- 著作権・知的財産権の帰属:成果物の権利がどちらに帰属するか
サービス発注では、「イメージと違う」「想定していた内容ではない」といった認識のズレが起きやすいため、できる限り具体的に記載することが重要です。
すべての発注に共通する基本項目
物品・サービスを問わず、すべての発注依頼メールに記載すべき基本項目は以下の通りです。
- 発注者情報:会社名、部署名、担当者名、連絡先
- 発注書の有無:正式な発注書を別途送付するか、メールのみで完結するか
- 見積書の参照:見積番号や見積日付を記載し、どの見積に基づく発注かを明確にする
- その他の特記事項:梱包方法、保険の要否、機密保持契約の確認など
【シーン別・例文10選】すぐに使える発注依頼メールのテンプレート

ここからは、実際のビジネスシーンで使える発注依頼メールの例文を10パターン紹介します。
例文①初めて取引する企業への発注依頼メール
件名:【発注依頼】○○商品のご発注について(株式会社△△) 株式会社○○ 営業部 ◎◎様 いつもお世話になっております。 株式会社△△の◇◇でございます。 先日ご提示いただきました見積書(見積番号:EST-2025-001)の内容を確認し、 社内で検討いたしました結果、下記の通り発注させていただきたく存じます。 【発注内容】 ・品名:○○○○(型番:ABC-123) ・数量:50個 ・単価:1,000円 ・合計金額:50,000円(税込55,000円) ・納期:2025年1月15日 ・納品場所:〒100-0001 東京都千代田区○○1-2-3 株式会社△△ 本社倉庫 ・支払条件:納品月末締翌月末払い(銀行振込) なお、正式な発注書は本日中に郵送いたします。 ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。 何卒よろしくお願い申し上げます。 --- 株式会社△△ 購買部 ◇◇ TEL:03-1234-5678 Email:xxx@example.com
例文②見積書受領後の発注依頼メール
件名:Re:【見積書送付】○○サービスのお見積について 株式会社○○ 営業部 ◎◎様 お世話になっております。 株式会社△△の◇◇です。 先日ご送付いただきました見積書の内容を確認いたしました。 条件面で問題ございませんので、下記の通り発注させていただきます。 【発注内容】 ・サービス名:Webサイトリニューアル業務 ・見積番号:EST-2025-002 ・契約金額:500,000円(税込550,000円) ・作業期間:2025年1月10日~2025年2月28日 ・納品物:デザインデータ一式、HTML/CSSコーディングデータ 今後のスケジュールや打ち合わせ日程につきまして、 改めてご相談させていただければと思います。 引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。 --- 株式会社△△ マーケティング部 ◇◇
例文③発注書(注文書)を添付する場合のメール
件名:【発注書送付】○○製品のご発注について 株式会社○○ 営業部 ◎◎様 いつもお世話になっております。 株式会社△△の◇◇です。 標記の件、正式な発注書を添付いたしますので、ご確認ください。 【添付書類】 ・発注書(注文書番号:PO-2025-001) 【発注概要】 ・品名:○○製品 ・数量:100個 ・納期:2025年1月20日 ・納品場所:弊社倉庫 発注書の内容にご不明点やご質問がございましたら、 お気軽にお問い合わせください。 納期につきましては厳守いただきますよう、お願い申し上げます。 --- 株式会社△△
例文④リピート発注・追加発注のメール
件名:【追加発注】○○商品の追加発注について 株式会社○○ 営業部 ◎◎様 お世話になっております。 いつもご対応いただき、ありがとうございます。 前回ご発注いたしました○○商品について、 好評につき追加発注をお願いできればと思います。 【発注内容】 ・品名:○○商品(前回と同じ型番:ABC-123) ・数量:30個(前回は50個) ・単価:前回同様1,000円でお願いできますでしょうか ・納期:2025年1月25日 ・納品場所:前回と同じ お忙しいところ恐縮ですが、納期のご確認をお願いいたします。 引き続き、よろしくお願いいたします。 --- 株式会社△△
例文⑤IT開発・システム構築の外注依頼メール
件名:【発注依頼】販売管理システム開発業務について 株式会社○○ 開発部 ◎◎様 お世話になっております。 株式会社△△の◇◇です。 先日ご提案いただきました販売管理システムの開発につきまして、 下記の通り正式に発注させていただきます。 【発注内容】 ・業務名:販売管理システム開発業務 ・業務範囲:要件定義、設計、開発、テスト、納品 ・開発言語・環境:Python(Django)、PostgreSQL ・成果物:ソースコード一式、設計書、操作マニュアル ・スケジュール: - 要件定義:2025年1月10日~1月31日 - 設計・開発:2025年2月1日~3月31日 - テスト・納品:2025年4月1日~4月15日 ・検収条件:事前に合意した要件を満たしていること ・契約金額:3,000,000円(税込3,300,000円) ・支払条件:着手金30%、納品時70% なお、著作権は納品完了後に弊社に帰属することを確認させてください。 キックオフミーティングの日程調整につきまして、別途ご連絡いたします。 何卒よろしくお願いいたします。 --- 株式会社△△
例文⑥デザイン・クリエイティブ制作の発注メール
件名:【発注依頼】会社案内パンフレットデザイン制作について 株式会社○○ デザイン部 ◎◎様 お世話になっております。 株式会社△△の◇◇です。 先日お打ち合わせさせていただきました会社案内パンフレットの制作を、 正式に発注させていただきます。 【発注内容】 ・制作物:会社案内パンフレット(A4サイズ、8ページ) ・納品形式:Adobe Illustrator形式、PDF形式 ・スケジュール: - 初稿提出:2025年1月20日 - 修正対応:2025年1月27日 - 最終納品:2025年2月3日 ・修正回数:2回まで無償対応 ・制作費用:150,000円(税込165,000円) デザインのトーンやイメージにつきましては、 添付の参考資料をご確認ください。 ご不明点がございましたら、お気軽にご連絡ください。 よろしくお願いいたします。 --- 株式会社△△
例文⑦建築・施工業者への工事発注メール
件名:【発注依頼】オフィス内装工事のご発注について ○○建設株式会社 工事部 ◎◎様 お世話になっております。 株式会社△△の◇◇です。 先日ご提示いただきました見積内容を確認し、 下記の通りオフィス内装工事を発注させていただきます。 【発注内容】 ・工事名:本社オフィス内装リニューアル工事 ・工事場所:東京都千代田区○○1-2-3 株式会社△△ 本社3階 ・工事内容:間仕切り壁撤去、床材張替え、照明器具交換 ・工事期間:2025年2月1日~2025年2月28日 ・工事金額:5,000,000円(税込5,500,000円) ・支払条件:着工時50%、完工時50% 工事開始前に、近隣へのご挨拶や安全管理についてご相談させてください。 また、正式な工事請負契約書は別途取り交わしさせていただきます。 何卒よろしくお願い申し上げます。 --- 株式会社△△ 総務部 ◇◇
例文⑧コンサルティング・業務委託の依頼メール
件名:【発注依頼】人事制度改革コンサルティング業務について 株式会社○○ コンサルティング部 ◎◎様 お世話になっております。 株式会社△△の◇◇です。 人事制度改革コンサルティング業務につきまして、 下記の通り正式に発注させていただきます。 【発注内容】 ・業務名:人事制度改革コンサルティング業務 ・業務内容:現状分析、課題抽出、新制度設計、導入支援 ・契約期間:2025年1月15日~2025年6月30日(6ヶ月間) ・成果物:現状分析レポート、新人事制度案、運用マニュアル ・月次ミーティング:月2回(各2時間程度) ・契約金額:2,400,000円(税込2,640,000円、月額400,000円×6ヶ月) ・支払条件:毎月末締翌月末払い 機密情報を取り扱うため、秘密保持契約書を別途締結させてください。 初回ミーティングの日程につきまして、ご都合をお聞かせください。 よろしくお願いいたします。 --- 株式会社△△ 人事部 ◇◇
例文⑨社内の他部署への備品発注依頼メール
件名:【社内発注】営業部備品購入のお願い 総務部 ◎◎様 お疲れ様です。 営業部の◇◇です。 下記の備品を購入したく、発注手続きをお願いできますでしょうか。 【購入希望品】 ・品名:ノートパソコン(メーカー:○○、型番:ABC-123) ・数量:3台 ・用途:新入社員用 ・希望納期:2025年1月20日まで ・予算:1台あたり100,000円程度(合計300,000円) ・配送先:営業部(本社5階) 予算は営業部の備品費から支出予定です。 承認が必要な場合は、上長の承認を得ておりますので、ご安心ください。 お忙しいところ恐縮ですが、手配のほどよろしくお願いいたします。 --- 営業部 ◇◇ 内線:1234
例文⑩社内稟議後の正式発注連絡メール
件名:【稟議承認済】○○システム導入の正式発注について 株式会社○○ 営業部 ◎◎様 お世話になっております。 株式会社△△の◇◇です。 先日ご提案いただきました○○システムにつきまして、 社内稟議が承認されましたので、正式に発注させていただきます。 【発注内容】 ・システム名:○○システム ・ライセンス数:50ユーザー ・契約期間:2025年2月1日~2026年1月31日(1年間) ・初期費用:500,000円(税込550,000円) ・月額費用:50,000円(税込55,000円)×12ヶ月 ・合計金額:1,100,000円(税込1,210,000円) 導入スケジュールや初期設定につきまして、 改めて打ち合わせのお時間をいただけますと幸いです。 引き続き、よろしくお願いいたします。 --- 株式会社△△ 情報システム部 ◇◇
発注依頼メールへの返信の書き方【受注側向け】
発注依頼メールを受け取った側(受注側)も、適切な返信を送ることで、スムーズな取引につながります。
発注を受諾する場合の返信例文
件名:Re:【発注依頼】○○商品のご発注について 株式会社△△ 購買部 ◇◇様 お世話になっております。 株式会社○○の◎◎です。 この度は、○○商品をご発注いただき、誠にありがとうございます。 ご依頼いただきました内容を確認いたしました。 下記の通り、ご発注を承りましたことをご報告申し上げます。 【受注内容】 ・品名:○○○○(型番:ABC-123) ・数量:50個 ・納期:2025年1月15日 ・納品場所:貴社本社倉庫 納期は厳守いたします。 万が一、製造工程で問題が発生した場合は、速やかにご連絡いたします。 今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。 --- 株式会社○○ 営業部 ◎◎
条件確認・見積修正が必要な場合の返信例文
件名:Re:【発注依頼】○○サービスのご発注について 株式会社△△ マーケティング部 ◇◇様 お世話になっております。 株式会社○○の◎◎です。 ご発注いただき、ありがとうございます。 ご依頼内容を確認いたしましたところ、 納品物の一部について確認させていただきたい点がございます。 ・「デザインデータ一式」について、Adobe Illustrator形式のみでよろしいでしょうか。 ・それともPhotoshop形式も含めた全データをご希望でしょうか。 形式によって作業工数が変わるため、念のためご確認させてください。 お手数をおかけいたしますが、ご返信いただけますと幸いです。 よろしくお願いいたします。 --- 株式会社○○
納期調整や仕様変更を提案する返信例文
件名:Re:【発注依頼】○○製品のご発注について 株式会社△△ 購買部 ◇◇様 お世話になっております。 株式会社○○の◎◎です。 ご発注いただき、誠にありがとうございます。 ご依頼いただきました納期(1月15日)につきまして、 現在、原材料の入荷が遅れており、1月20日の納品となってしまいます。 誠に申し訳ございませんが、納期の調整をお願いできますでしょうか。 もし1月15日が絶対条件の場合は、数量を30個に減らすことで対応可能です。 お客様のご都合に合わせて対応させていただきますので、 ご検討のほどよろしくお願い申し上げます。 --- 株式会社○○ 営業部 ◎◎
発注を辞退する場合の丁寧な断り方
件名:Re:【発注依頼】○○システム開発業務について 株式会社△△ 情報システム部 ◇◇様 お世話になっております。 株式会社○○の◎◎です。 この度は、弊社にご発注のご検討をいただき、誠にありがとうございます。 大変心苦しいのですが、現在、他プロジェクトが立て込んでおり、 ご希望の納期(4月15日)での対応が困難な状況でございます。 せっかくご検討いただいたにも関わらず、ご期待に添えず申し訳ございません。 今後、弊社のリソースに余裕が出てまいりましたら、 改めてご提案させていただければ幸いです。 何卒ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。 --- 株式会社○○ 開発部 ◎◎
発注依頼メールを送る際の注意点とチェックリスト

発注依頼メールは金銭が絡む重要な取引のため、送信前のチェックが欠かせません。
わかりやすい件名の付け方(良い例・悪い例)
件名は、受信者が一目で内容を把握できるように工夫しましょう。
良い例
- 【発注依頼】○○商品のご発注について(株式会社△△)
- 【注文書送付】PO-2025-001 ○○製品の発注
- 【追加発注】○○サービスの追加契約について
悪い例
- お願いがあります
- ご連絡
- 発注の件
悪い例は、内容が不明確で、他のメールに埋もれてしまう可能性があります。
件名には「発注依頼」「注文書」といったキーワードを入れ、商品名や会社名も記載することで、相手がすぐに内容を理解できるようにしましょう。
発注書(注文書)の添付ルール【PDF化と押印の要否】
発注書を添付する場合は、PDF形式に変換してから送信することが一般的です。
PDF形式であれば、相手の環境に関わらず正確に表示され、改ざんのリスクも低くなります。
押印については、電子帳簿保存法の改正により、電子取引では必ずしも押印が必要ではなくなりました。
ただし、取引先によっては押印済みの発注書を求められる場合もあるため、初回取引時には事前に確認しておくと安心です。
CCとBCCの使い分け
発注依頼メールを送る際、社内の関係者にも情報共有が必要な場合があります。
CCを使うべき場合
- 上司や関連部署の担当者など、取引先にも「この人が関係している」と知らせたい場合
- プロジェクトメンバー全員で情報共有する場合
BCCを使うべき場合
- 社内記録用に自分のアーカイブ用アドレスに送る場合
- 取引先に知らせる必要のない社内関係者に共有する場合
CCに入れた相手のメールアドレスは、すべての受信者に表示されるため、取引先に不要な情報を見せないよう注意しましょう。
CCとBCCの間違いはよく起こりうるものですが、ケースによっては機密情報、個人データの漏洩として個人情報保護法などの法令に違反するという事態に発展しかねません。
日常的に起こりうるミスですので、日ごろから意識していただくことが重要です。
送信前の最終チェックリスト(宛先・金額・納期)
発注依頼メールを送信する前に、以下の項目を必ず確認しましょう。
| チェック項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 宛先 | 送信先のメールアドレスに誤りはないか |
| 宛名 | 会社名、部署名、担当者名は正確か |
| 件名 | 内容が一目でわかる件名になっているか |
| 金額 | 単価、数量、合計金額に誤りはないか |
| 納期 | 希望納期は実現可能な日付か |
| 添付ファイル | 発注書やその他の必要書類は添付されているか |
とくに金額と納期は、後々のトラブルに直結するため、複数回確認することをおすすめします。
メール送信後のフォローアップ方法
発注依頼メールを送信した後は、相手が確実に受信したかを確認することも大切です。
重要な発注の場合は、メール送信後に電話やビジネスチャットで「先ほど発注メールをお送りしました」と一言伝えることで、相手の見落としを防げます。
また、数日経っても返信がない場合は、「先日お送りした発注メールをご確認いただけましたでしょうか」と丁寧にフォローしましょう。
下請取引での発注依頼メールの法的注意点
発注依頼メールには、法的な側面も関わってきます。とくに取適法に関する知識は、BtoB取引を行う企業にとって必須です。
取適法における書面交付義務とは?
取適法では、委託事業者が中小受託事業者に業務を委託する際、発注内容を明記した書面を交付することが義務付けられています。
この書面は「3条書面」と呼ばれ、委託事業者・中小受託事業者の名称、委託内容の詳細、製造委託等代金の額、支払期日、支払方法などを記載する必要があります。
この義務に違反すると、公正取引委員会から勧告を受けたり、企業名が公表されるなどのペナルティがあります。
取適法は、従来の下請法のことです。2026年1月1日から施行され、名称が下請法から取適法に変更されます。
また、取適法では、従来の下請法から適用対象が拡大されます。すなわち、下請法では資本金によって親事業者と下請事業者を区別していましたが、取適法では、従業員数(300人)による基準が加えられ、また、取引の対象に運送委託業務が加わりました。
取適法のもとでは、従来の下請法では適用対象でなかった取引に適用される可能性があり、書面交付義務を負っていることに気付かずに交付漏れとなってしまうおそれがありますので、ご注意ください。
なお、「3条書面」は下請法に由来する呼称で、取適法では4条に定められていますので、今後は「4条書面」という呼称になるかもしれません。
メールでの発注は取適法上有効か?
取適法では、書面交付義務がありますが、この「書面」には電子メールも含まれます。
ただし、中小受託事業者の承諾を得ていること、中小受託事業者が電子メールの内容を出力して書面化できること、必要な記載事項がすべて含まれていることが条件です。
つまり、取引先が電子メールでの発注に同意していれば、メールでの発注も法的に有効です。
電子メールで発注する場合の記載必須事項(3条書面)
電子メールで発注する場合も、3条書面に記載すべき事項を漏れなく記載しなければなりません。
具体的には、委託事業者および中小受託事業者の名称、委託内容(製造、修理、情報成果物作成など)、委託内容の詳細(品名、数量、仕様、納期)、製造委託等代金の額(算定方法でも可)、支払期日、支払方法です。
これらの情報がメール本文または添付ファイルに明記されていれば、取適法上の書面交付義務を果たしたことになります。
取適法に加えて、フリーランス保護法にもご注意いただいたほうが良いです。
発注先がフリーランス(従業員を使用しない個人事業主や一人会社)である場合、フリーランス保護法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)の適用があります。
フリーランス保護法も取適法と同様に取引条件を明示する義務があります。
フリーランスへの発注の場合にも取適法と同様の内容を記載するようにしましょう。
発注内容の変更・キャンセル時の注意点
発注後に内容を変更したり、キャンセルする場合にも、取適法上のルールがあります。
取適法では、発注後の一方的な発注取消しや、中小受託事業者に責任のない理由での返品は禁止されています。
やむを得ず変更やキャンセルが必要な場合は、速やかに中小受託事業者に連絡し、協議の上で合意を得ることが必要です。
また、変更内容についても書面(メール)で記録を残し、変更後の条件を明確にしておくことが、後々のトラブル防止につながります。
発注依頼メールと電子帳簿保存法の関係
発注依頼メールは、税務上の証憑書類としても重要な役割を持ちます。
発注メールは会計上の証憑(取引証憑)になる?
発注依頼メールは、取引の事実を証明する「証憑」として、会計上の重要な書類になります。
税務調査の際にも、発注メールは取引内容を証明する資料として提示を求められることがあります。
そのため、発注依頼メールや添付された発注書は、適切に保存・管理する必要があります。
電子帳簿保存法におけるメールの保存要件
電子帳簿保存法では、電子メールで受け取った発注書や請求書などの取引情報は、真実性の確保(データの改ざん防止策を講じること)、可視性の確保(必要に応じて速やかに内容を確認できること)、検索性の確保(取引年月日、取引金額、取引先で検索できること)という要件を満たして保存する必要があります。
発注メールを適切に保存・管理する方法
発注メールを適切に保存・管理するためには、以下の方法が有効です。
- 専用フォルダで管理:発注関連のメールは、専用フォルダに分類して保存
- ファイル名のルール化:「発注日_取引先名_商品名」など、統一されたルールでファイル名を付ける
- 定期的なバックアップ:メールサーバーの障害に備え、定期的にバックアップを取る
- 保存期間の遵守:法人税法では、帳簿書類を7年間保存する義務があるため、発注メールも同様に保存
発注依頼はメールとビジネスチャットどちらが良い?
近年、ビジネスチャットツール(Slack、Microsoft Teams、Chatworkなど)が普及し、発注依頼の方法も多様化しています。
法律上では、メールとチャットの明確な違いというものはありません。そもそも口頭でもお互いの意思の合致があれば契約成立となります(民法522条など)。
ただ、「誰から」「誰に」「いつ」「どのような内容を」送ったかという点では、チャットよりもメールのほうが立証しやすいという側面はあるかと思います。
そうした立証のしやすさから考えると、契約トラブルになった際の証拠としてはメールのほうがよいかもしれません。もちろん、チャットでも上記が立証できるのであれば有力な証拠となりえます。
メールとチャットの特徴比較表
スクロールできます→
| 項目 | メール | ビジネスチャット |
|---|---|---|
| 正式性 | 高い(公式な記録として扱われる) | やや低い(カジュアルな印象) |
| 検索性 | 高い(件名や日付で検索可能) | 高い(キーワード検索が容易) |
| 即時性 | やや低い(確認まで時間がかかる場合あり) | 高い(リアルタイムでやり取り可能) |
| 法的効力 | 明確(取適法にも対応) | 要件を満たせば有効 |
メールでの発注が向いているケース
メールでの発注は、正式な契約や大規模な取引、取適法が適用される取引、長期間にわたり記録を保存する必要がある取引、初めて取引する相手との発注、添付書類(発注書、仕様書など)が多い場合に適しています。
メールは、ビジネスの正式なコミュニケーション手段として広く認知されているため、重要な発注には適しています。
チャットでの発注が向いているケース
ビジネスチャットでの発注は、社内発注や社内での備品購入依頼、少額かつ簡単な内容の発注、既に関係性が構築されている取引先との発注、緊急性が高く、すぐに確認が必要な発注、発注前の事前相談や条件のすり合わせで効果的です。
チャットの即時性を活かして、発注内容の細かい調整をスピーディーに行うことができます。
併用する場合のベストプラクティス
実務では、メールとチャットを併用することで、それぞれのメリットを最大限に活かすことができます。
推奨される使い分け
- 事前相談・条件調整:ビジネスチャットで素早くやり取り
- 正式発注:内容が確定したらメールで正式に発注書を送付
- 進捗確認:ビジネスチャットで気軽に状況確認
- 納品・検収:メールで正式に納品完了の記録を残す
このように段階に応じて使い分けることで、スピード感を保ちながら、正式な記録もしっかり残すことができます。
発注依頼メールでよくあるトラブルと対処法

実務では、発注依頼メールに関するトラブルも発生します。ここでは、よくあるトラブルとその対処法を紹介します。
「発注メールが届いていない」と言われた場合
発注メールを送ったのに「届いていない」と言われたら、まず送信履歴で宛先を確認し、相手に迷惑メールフォルダのチェックを依頼しましょう。
その上でメールを再送し、電話で着信を確認します。
今後は重要なメールを送った際、電話やチャットで一言添える習慣をつけると安心です。
発注内容の認識相違が発生した場合
「聞いていた内容と違う」というトラブルは、曖昧な表現や記載漏れから生じます。
まずは取引先と連絡を取り、双方でメールを確認してどこに誤解が生じたかを特定しましょう。
その上で、正しい内容を改めてメールで送り直し、双方で合意します。
今後は発注内容をより具体的に記載し、添付資料も活用することで同様のトラブルを防げます。
発注後に条件変更したい場合の対応
数量や納期の変更が必要になったら、速やかに取引先へ連絡し、変更可能かを確認します。
変更内容と理由を丁寧に説明し、追加費用が発生する場合はその点も必ず合意を得ましょう。
その後、変更内容を改めてメールで送り、記録として残すことが大切です。
なお、取適法では一方的な変更は禁止されているため、必ず相手の合意を得ることが重要です。
納期遅延の連絡を受けた場合の返信例
取引先から「納期に間に合わない」という連絡を受けた場合、冷静に対応することが大切です。
以下のようにメールに返信しましょう。
件名:Re: 納期遅延のご連絡について 株式会社○○ 営業部 ◎◎様 お世話になっております。 株式会社△△の◇◇です。 納期遅延のご連絡、承知いたしました。 状況をご説明いただき、ありがとうございます。 新しい納期として、○月○日をご提示いただきましたが、 弊社のスケジュール上、○月○日までには納品いただく必要がございます。 何か対応策はございますでしょうか。 例えば、一部を先行納品いただくことは可能でしょうか。 ご検討のほど、よろしくお願いいたします。 --- 株式会社△△
感情的にならず、代替案を提示しながら協議する姿勢が、良好な取引関係の維持につながります。
記事のまとめ
この記事では、発注依頼メールの基本的な書き方から、物品・サービス別の具体的な例文、法的な注意点まで幅広く解説しました。
発注メールは取引の起点となる重要な記録であり、品名・数量・納期などの必須項目を正確に記載することが不可欠です。
取適法や電子帳簿保存法といった法的要件も意識しながら、メールとビジネスチャットを適切に使い分けることで、スムーズな取引が実現できます。
明確で丁寧な発注依頼メールを通じて、取引先との信頼関係を築き、ビジネスを成功に導きましょう。
発注・注文は、契約成立に向けた「申込」や「承諾」にあたる重要な行為であると言えます。発注する内容が不明確であると、後々の法的トラブルに発展しかねませんので、内容は正確に記載するようにしましょう。その取引が取適法(従来の下請法)やフリーランス保護法の適用対象である場合には、契約内容等を明示した書面等を交付する義務がありますので、この点からも正確に記載すべきであると言えます。
送付方法については、メールやビジネスチャットで行うこともできますが、トラブルになった場合の証拠としては、立証の観点からメールのほうが好ましいと言えます。
ビジネスを円滑に進めるためにも、適切で正確な発注依頼メールを作成するようにしましょう。
本記事は、作成時点の法令、ガイドライン、および公的機関の情報に基づいて作成されています。内容の正確性には万全を期しておりますが、法改正や制度変更等により、最新の情報と異なる場合があります。
また、本コンテンツは一般的な情報の提供を目的としており、法律的、税務的その他の具体的なアドバイスをするものではありません。個別具体的な事案については、必ず弁護士、税理士等の専門家にご相談ください。
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