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ビジネス取引において、発注書(注文書)を受け取ることは日常茶飯事かと思います。
しかし、発注書に対する返答としての発注請書(注文請書)について、その役割や法的な重要性を正しく理解していますか?
「わざわざ発行しなくても、メールでの返答で良いのでは?」と考える方もいるでしょう。
実は、発注請書はトラブルを未然に防ぎ、企業の信頼を守るための重要な防波堤となるのです。
とくに金額が大きい取引や、長期にわたるプロジェクトでは、発注請書の有無が後々のトラブル対応を大きく左右することがあります。
本記事では、以下の内容について2025年の最新実務に基づいて徹底解説します。
- 発注請書(注文請書)の定義
- 発注書と発注請書の明確な違い
- 発注請書の正しい書き方
- 収入印紙のルール
物品の売買だけでなく、IT業界のシステム開発や建設業界の工事請負など、サービス取引における注意点も網羅していますので、初心者の方もぜひ参考にしてください。
2008年に弁護士登録し、大阪市内の法律事務所に勤務したのち、2021年に独立開業しました。契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
【目次】
発注請書(注文請書)とは?
発注請書(注文請書)という言葉を聞いたことはあっても、具体的にどのような効力を持つ書類なのか、詳細までは自信がないという方も多いはずです。
まずは、この書類の基本的な定義と、ビジネスにおける役割について解説します。
発注請書の定義と法的位置づけ
発注請書(はっちゅううけしょ)とは、取引先から送られてきた発注書(注文書)に対して、その内容を承諾し、注文を受ける意思を相手方に伝えるために発行する文書のことです。
この記事に辿り着いた方の中には、「発注請書には法的効力はありますか?」という疑問を持っている方もいらっしゃるでしょう。
結論から言えば、発注請書には強力な法的効力があります。
民法第522条において、契約は一方の申込みと、もう一方の承諾の意思表示が合致した時点で成立すると定められています。
ビジネスにおいては、発注書が「申込み」にあたり、発注請書が「承諾」にあたるのです。
つまり、発注請書を発行して相手に到達した瞬間、法的に契約が成立したとみなされます。
これにより、受注側には「商品を納品する義務」や「仕事を完成させる義務」が発生し、発注側には「代金を支払う義務」が発生するという、法的な拘束力が生まれるのです。
この法的効力があるからこそ、発注請書は単なる事務手続きではなく、企業間の信頼関係を支える重要な書類として位置づけられています。
裏を返すと、「発注請書を発行しなければ契約は成立していない」とも考えられますが、そうではありません。
民法527条では取引上の慣習により承諾を必要としない場合には、承諾の意思表示と認めるべき事実があったときに契約が成立すると定められています。例えば、受注者側が契約の一部に着手するなど、契約成立を前提とした行動を取った場合には、同条により契約成立と評価される場合もあります。
また、そもそも口頭での承諾や黙示の合意により契約成立となることもあります。
受注の意思があるのに請書を発行しないままになった場合、発注者側としては承諾がないものとして他の事業者に発注してしまうなどということも起こりえます。
こうした誤解を避けるためには、発注請書を発行するように努めるほうが良いでしょう。
参考:法務省民事局「民法(債権関係)の改正に関する説明資料-主な改正事項-」
発注請書を発行する3つの目的
なぜ、わざわざ紙やデータで発注請書を発行する必要があるのでしょうか。主な目的は以下の3点です。
①契約成立の証拠として
口頭や電話でも契約は成立しますが、言った・言わないのトラブルになりがちです。
発注請書があれば、いつ・誰が・どのような条件で契約を承諾したかを客観的に証明できます。
とくに裁判になった場合、発注請書は契約成立を証明する決定的な証拠となります。
②取引条件の相互確認
発注書に記載された納期・金額・仕様などに誤りがないか、受注側が改めて確認し、「この条件で引き受けます」と宣言することで、認識のズレを防ぎます。
とくに複雑な仕様や長期にわたるプロジェクトでは、この確認プロセスが重要です。
③トラブル防止とリスク管理
万が一、裁判沙汰になった場合、発注請書は契約の成立と内容を証明する決定的な証拠となります。
とくに金額が大きい取引や、工期が長い建設・ITプロジェクトでは必須と言えます。また、担当者が変わった場合でも、発注請書があれば契約内容を正確に把握できます。
注文請書・発注請書・請書の呼び方の違い
実務では、「発注請書」「注文請書」「請書(うけしょ)」といった言葉が混在しています。
これらはすべて同じ意味であり、法的な扱いに違いはありません。 一般的には以下のように使い分けられることが多いです。
| 注文請書 | 物品の売買や、製造業などでよく使われます。 |
|---|---|
| 発注請書 | サービス業、IT業界、建設業界などで「発注」という言葉と対で使われます。 |
| 請書 | 建設業界や官公庁との取引などで、略称あるいは正式名称として使われます。 |
自社でフォーマットを作る際は、相手から来る書類が「注文書」なら「注文請書」、「発注書」なら「発注請書」と合わせると丁寧ですが、厳密なルールはありません。
どの名称を使っても、法的な効力に違いはないので安心してください。
発注書(注文書)と発注請書(注文請書)の違い【比較表付き】

発注書と発注請書は、セットで扱われることが多いため、それぞれの役割や発行のタイミングを混同してしまうことがあります。ここでは、両者の違いを明確にします。
発注書(注文書)とは?
発注書(注文書)とは、買い手(発注者)が売り手(受注者)に対して、「この商品を買いたい」「この仕事を依頼したい」という意思を表示する書類です。
先述した通り、法的には契約の申込みに該当します。しかし、発注書はあくまで依頼の段階であるため、相手がこれを承諾しない限り、契約は成立しません(ただし、継続的取引契約がある場合などは例外もあります)。
発注書には、以下の内容が記載されます。
- 発注する商品やサービスの内容
- 数量
- 金額
- 納期
- 納品場所 など
受注者はこの発注書の内容を確認し、受けるかどうかを判断します。
発注書と発注請書の5つの違い【比較表】
発注書と発注請書の違いを一目で理解できるように、比較表を作成しました。
「発注書と請書の違いは何ですか?」と悩んだ際には、以下の表をご覧ください。また、「注文書と請書、どっちが作る?」と迷った場合も、この表の発行者の欄を確認してください。
| 項目 | 発注書(注文書) | 発注請書(注文請書) |
|---|---|---|
| 発行者 | 発注者 (買い手・依頼主) |
受注者 (売り手・請負人) |
| 法的性質 | 契約の「申込み」 | 契約の「承諾」 |
| 発行タイミング | 契約を希望する時 | 発注書の内容に合意した時 |
| 収入印紙 | 原則不要 (契約書扱いされる例外あり) |
必要 (請負契約等の場合) |
| 主な目的 | 依頼内容の通知 | 受注の意思表示・契約成立の確定 |
| 契約への影響 | これだけでは契約不成立 | 発行により契約成立 |
このように、注文書(発注書)は仕事をお願いする側が作成し、請書(発注請書)は仕事を受ける側が作成するものです。役割が対になっていることを理解しておきましょう。
印紙について、他に判断が悩ましいものとして、請負契約と委任契約が挙げられます。請負契約では印紙が必要、委任契約では印紙が不要となります。
法律上の定義では、請負は仕事を完成させるもの、委任は事務の処理や遂行を目的とするものとして別のものとされていますが、実際には契約内容によって判断が悩ましいものがあります。
判断が難しい場合には、税務署や税理士などの専門家に相談するようにしましょう。
発注書と発注請書を使った取引の流れ
一般的な取引の流れは以下のようになります。
ステップ1:見積書の提出
受注者が発注者へ、「この金額と条件ならできます」と提案する。
法律的には、見積は申込みを誘うものとして、「申込の誘引」と言われることもあります。
ステップ2:発注書の発行
発注者が内容に納得し、「その条件でお願いします」と発注書を送る(申込み)。
ステップ3:発注請書の返送
受注者が発注書を確認し、「承知しました」と発注請書を送り返す(承諾)。
発注書の内容と異なる内容の請書を出した場合、その請書の内容が新たな申込みとみなされることになります(民法528条)。
思わぬトラブルに発展しかねませんので、発注書の内容を請書に転記する際にミスがないか、しっかりと確認するようにしましょう。
ステップ4:契約成立
発注請書が発注者に到達した時点で、契約が法的に成立。
ステップ5:納品・検収
商品や成果物を納め、発注者がチェックする。
ステップ6:請求・支払い
請求書を発行し、代金が支払われる。
このステップ3にあたるのが発注請書の役割です。発注請書が発行されることで、双方の権利義務が確定し、安心して業務を進められるようになります。
発注請書に関するよくあるトラブルと対処法

発注請書にまつわるトラブル事例と、その解決策を知っておきましょう。事前に対策を知っておくことで、トラブルを未然に防ぐことができます。
トラブル①:発注請書を発行し忘れた
忙しくて請書を出し忘れたまま、納品まで完了してしまった場合です。
発注請書を発行し忘れても契約は有効か?
有効です。
契約は意思の合致で成立するため、実際に納品し、相手がそれを受け取っていれば、黙示の承諾があったとみなされます。
発注請書を発行し忘れた際の注意点
発注請書を発行し忘れた場合、後から条件面で揉めた時に証拠が弱くなります。
気付いた時点で「遅くなりましたが」と発行するか、納品書や請求書に詳細を記載して補完しましょう。
トラブル②:発注書と異なる内容で作業を開始してしまった
発注書の金額が間違っているのに、気付かずに請書を出してしまった、あるいは作業を始めてしまった場合です。
発注書と異なる内容で請書を出し、作業を開始してしまった時の対処法
速やかに相手に連絡し、訂正を求めます。
民法の「錯誤(勘違い)」による取り消しを主張できる可能性がありますが、重過失があると認められないこともあります。早期発見・早期連絡が鉄則です。
追加費用が発生する場合は、追加の見積書と発注書を取り交わしましょう。
トラブル③:収入印紙を貼り忘れた
税務調査で、請書への印紙貼り忘れを指摘された場合です。
収入印紙を貼り忘れることのリスク
収入印紙を貼り忘れると、本来納めるべき印紙税額の3倍(本来の額+2倍の過怠税)を徴収されます。
例えば、1,000円の印紙が必要だった場合、3,000円を支払うことになります。
収入印紙を貼り忘れた時の事後対応
調査を受ける前に自主的に気付いて申告すれば、1.1倍で済みます。過去の書類をチェックし、貼り忘れがあれば速やかに納税しましょう。
弁護士へのよくあるご相談の一つに、「印紙を貼り忘れた場合には契約は無効になるのか」というものがあります。
印紙の貼り忘れは、印紙法の違反にはなりますが、当事者間の契約の効力が否定される(無効になる)ものではありません。
ただ、契約は有効であるとしても法令違反の状態は避けたほうが良いですので、印紙の貼り忘れが生じないよう注意しましょう。なお、印紙を貼るだけではなく、消印を併せて必ず行うように注意してください。
トラブル④:電子発注請書の証拠力に不安
「メールやPDFで本当に裁判に勝てるのか?」という不安です。
電子発注請書の証拠力について解説
電子署名法や民事訴訟法の改正により、電子データの証拠能力は認められています。
ただし、改ざんされていないことを証明するために、「電子署名」や「タイムスタンプ」が付与された電子契約サービスを利用するのが確実です。
単なるメールの添付ファイルでも証拠にはなりますが、改ざんの容易さを指摘されるリスクはゼロではありません。重要な契約は電子契約サービスの利用を検討しましょう。
発注請書の電子化で得られるメリット
最後に、発注請書を電子化(ペーパーレス化)することのメリットを解説します。現代のビジネスにおいて、紙での運用はコストとリスクの温床になりつつあります。
電子化による5つのメリット
①収入印紙代の削減(年間数万円〜数十万円)
発注請書の電子化で得られる最大のメリットとして挙げられるのが、収入印紙代の削減です。
請負契約の発注請書を電子化すれば、印紙代は全額カットできます。
例えば、月に10件、500万円規模の請負契約がある企業の場合、年間で120,000円(10,000円×12ヶ月)の印紙代が0円になります。
②郵送費・郵送時間の削減
発注請書を電子化すると、切手代と封筒代、そして投函の手間がなくなります。
郵送にかかる1〜2日のタイムラグも解消され、即時に契約成立となります。とくに急ぎの案件では、このスピードが重要になります。
③保管スペースの削減
7年〜10年の保存義務がある書類(発注請書)を、物理的な倉庫で管理する必要がなくなります。オフィスの有効活用にもつながります。
④検索性の向上
「〇年前のあの取引の条件はどうだったっけ?」と思った時、発注請書を電子化することで、ファイル名や日付ですぐに検索できるようになります。
紙の書類をファイルから探し出す手間がなくなり、業務効率が大幅に向上します。
⑤紛失リスクの低減
紙の紛失や、コーヒーをこぼして汚損するといった物理的なリスクがなくなります。
バックアップを取っておけば、災害時のデータ消失リスクも回避できます。
電子化による年間コスト削減シミュレーション
ここで、月間30件の請負契約(平均単価300万円)を受注する企業を例として、年間でどれほどコストを削減できるのかシミュレーションしてみましょう。
| 項目 | 紙の場合 | 電子化した場合 |
|---|---|---|
| 印紙代 | 1,000円 × 30件 = 30,000円 | 0円 |
| 郵送代 | 110円 × 30件 = 3,300円 | 0円 |
| 封筒・紙代 | 約500円 | 0円 |
| 作業人件費(概算) | 約5,000円 | 約1,000円 |
| システム利用料 | ー | 約10,000円 |
| 月間合計 | 38,800円 | 約11,000円 |
| 年間合計 | 465,600円 | 約132,000円 |
このように、年間で30万円以上のコスト削減が可能になります。
電子契約サービスの選び方
電子契約サービスの選び方について解説します。
電子契約サービス導入時のチェックポイント
- 相手方(発注者)もそのシステムを利用することに同意してくれるか
- 操作は簡単か(ITに詳しくない担当者でも使えるか)
- 電子帳簿保存法の要件を満たしているか
- セキュリティは十分か
電子化への移行ステップ
いきなり全てを電子化するのは難しいかもしれません。以下のような3つの移行ステップで、段階的に進めましょう。
ステップ1:社内ルールの整備
誰が承認し、どこにデータを保存するかを決める。
ステップ2:取引先への説明
「来月から電子契約に切り替えさせてください」と案内を出す。
ステップ3:段階的導入
まずは新規取引先や、付き合いの長い親しい取引先から始めるのがコツです。
【FAQ】発注請書・注文請書に関するよくある質問
ここでは、発注請書・注文請書に関するよくある質問について、Q&A形式でお答えします。
Q1. 発注請書に押印は必須?
法律上は必須ではありません。 しかし、日本のビジネス慣習として、意思確認の証拠力を高めるために「角印(社印)」を押すのが一般的です。電子契約の場合は電子署名がこれに代わります。
Q2. 発注請書を後から修正できる?
一方的な修正はできません。 一度相手に到達した発注請書は、契約成立を意味するため、一方的に撤回・修正はできません。修正が必要な場合は、相手と協議の上、合意解除または変更契約を結ぶ必要があります。
Q3. 発注請書と契約書の違いは?
発注請書も契約書の一種です。「発注書+発注請書」のセットは、「契約書」と同等の法的効力を持ちます。ただし、細かい条件(秘密保持、知的財産権の帰属、損害賠償の範囲など)を定めたい場合は、別途「基本契約書」や「個別契約書」を締結することが推奨されます。
まとめ:発注請書は契約の証拠として適切に作成・管理しよう

発注請書(注文請書)について、以下のように、その重要性と実務上のポイントを解説してきました。
- 発注書は「申込み」、発注請書は「承諾」
- 発注請書には法的効力がある
- 注文書(発注書)は発注者が作り、請書(発注請書)は受注者が作る
- 原則発行を推奨
- 請負契約の場合は印紙が必要
- 電子化がおすすめ
「たかが紙一枚」と思わず、発注請書を正しく発行・管理することは、自社を守り、取引先との信頼関係を強固にする第一歩です。
とくに請負契約を行う企業様は、印紙税のコスト削減の観点からも、電子化を含めた運用の見直しを検討してみてはいかがでしょうか。
不明点や複雑な契約内容の場合は、自己判断せず、弁護士や税理士、行政書士などの専門家に相談することをお勧めします。
発注請書の発行は、民法上の「承諾」にあたり、契約を成立させる重要な行為であると言えます。ただ、発注請書を発行しなくても、お互いの黙示の合意があったり、口頭で承諾したり、契約の履行に着手したりすることで、契約は成立したものとなり、したがって、発注請書の発行は絶対に不可欠であるとまでは言えません。
しかし、当事者間での誤解を回避するためには、しっかりと書面化しておくことが大切です。
発注請書が契約の成立を証明するものである場合には、その内容が印紙法上の課税文書に当たるのであれば印紙を貼付する必要もあります。
発注請書の意義をご認識いただき、正確な発注請書の発行を行うようにしましょう。
本記事は、作成時点の法令、ガイドライン、および公的機関の情報に基づいて作成されています。内容の正確性には万全を期しておりますが、法改正や制度変更等により、最新の情報と異なる場合があります。
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