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取適法対応の契約書作成ガイド|条項例・チェックリスト・改定ポイント


注意事項

・本記事は公開時点の情報に基づいています。法令・制度変更等により内容が変わる可能性があるため、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

・記事内の画像はイメージです。実際の商品・サービスとは異なる場合があります。

2026年1月1日に施行された中小受託取引適正化法(通称:取適法)により、業務委託契約書の作成ルールが大きく変わりました。

製造業の部品発注だけでなく、IT企業がシステム開発を協力会社に委託するケースや、建設業における下請工事の発注なども対象となる可能性があるため、多くの企業が対応を迫られています。

本記事では、取適法に対応した契約書の作成方法を、条項例やチェックリストを交えながらわかりやすく解説します。

【目次】

取適法とは?契約書作成に必要な基礎知識

取適法とは?契約書作成に必要な基礎知識

そもそも取適法とは何なのか、いまいちよくわからないとお悩みの方もいるでしょう。

まずは、取適法への対応を進めるにあたり、法律の基本的な内容を押さえておきましょう。

ここでは、契約書作成の前提となる取適法の基礎知識を解説します。

取適法(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)とは

取適法とは、中小事業者やフリーランスなどの「中小受託事業者」を保護するために制定された法律です。

正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」といい、2026年1月1日に施行されました。

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」

これまでの下請法を改正し、より幅広い取引を保護対象とするものです。

発注者である委託事業者(旧:親事業者)に対して、書面交付義務や支払期日の設定義務などを課すことで、中小受託事業者が不当な扱いを受けることを防ぎます。

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(第三条、第四条)」

取適法の主な特徴は以下のとおりです。

  • 法律の題名・用語の変更
  • 適用対象の拡大
  • 禁止行為の追加
  • 面的執行の強化 など

参照:公正取引委員会「中小受託取引適正化法ガイドブック「下請法」は「取適法」へ~知っておきたい制度改正のポイント~」

取適法における「契約書」とは

取適法における契約書とは何か、混乱される方も少なくありません。

取適法では、委託事業者が発注時に交付する書面を「4条書面」と呼びます。

これは下請法時代の「3条書面」に相当するもので、委託内容や支払条件などを明記した書面です。

一般的な「業務委託契約書」や「請負契約書」がそのまま4条書面になるわけではありません。

4条書面は発注のつど交付が必要であり、個別の発注書や注文書がこれに該当することが多いです。

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(第四条)」

ただし、基本契約書と個別発注書を組み合わせて4条書面の要件を満たす方法もあります。

契約書と4条書面の注意点を整理すると、基本契約書には取引の基本条件(支払サイト、検収方法など)を定め、個別の発注時には発注書で具体的な委託内容や納期・金額を明示するようにしましょう。

参照:公正取引委員会「(令和7年10月1日)「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則」等の整備について」

下請法との違い

取適法は下請法を発展的に改正した法律ですが、いくつかの重要な違いがあります。

用語変更

下請法では「親事業者」「下請事業者」と呼んでいたものが、取適法では「委託事業者」「中小受託事業者」という名称になります。

また、それに伴い「下請代金」も「製造委託等代金」という名称に変更されました。

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(第二条)」

適用対象の拡大

下請法では資本金要件のみで適用の有無を判断していましたが、取適法では従業員数による要件も追加されました。

具体的には、従業員数300人(役務提供委託等は100人)の区分が新設されたため、規制および保護の対象が広がったのです。

これにより、資本金が小さくても従業員数が多い企業は委託事業者として義務を負う可能性があります。

弁護士・南 陽輔のコメント:
取適法の適用がある取引においては、本文にもある通りに4条書面の交付、書類の作成保存や禁止行為など、委託事業者に様々な遵守事項が求められることになります。今回の法改正で追加された従業員要件は、取引相手方の従業員数も関わってくるものであり、取適法の適用があるかどうかの判断が難しい場面も想定されます。取適法の適用があるどうかについて、取引ごとにしっかりと確認するようにしましょう。

特定運送委託の追加

取引類型についても、新たに「特定運送委託」が追加され、製造・販売などの目的物の引渡しに必要な運送の委託が対象になりました。

禁止行為の追加

禁止行為として「協議に応じない一方的な代金決定」や「手形払等の禁止」が新設され、中小受託事業者との対等な交渉がより重視されるようになります。

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(第二条、第五条)」

参照:公正取引委員会「中小受託取引適正化法ガイドブック「下請法」は「取適法」へ~知っておきたい制度改正のポイント~」

取適法とフリーランス法の違い

取適法とフリーランス・事業者間取引適正化等法(通称:フリーランス法)はどちらも中小事業者やフリーランスを保護する法律ですが、適用場面が異なります。

フリーランス法は2024年11月に施行された法律で、発注者が事業者であれば資本金や従業員数にかかわらず適用されます。

一方、取適法は委託事業者と中小受託事業者の規模要件を満たす場合に適用されます。

両方の法律が適用される場合は、より厳しい規定に従う必要があります。

たとえば、IT企業が個人のエンジニアにシステム開発を委託する場合、フリーランス法と取適法の両方が適用される可能性があり、それぞれの義務を満たす契約書を作成しなければなりません。

弁護士・南 陽輔のコメント:
公正取引委員会が示しているところによれば、フリーランス法と取適法の双方が適用されうるケースでは、フリーランス法を優先して適用されることになります。取適法とフリーランス法では、契約内容の明示や受領から60日以内の支払いルールなど、共通する点が多いです。まずは、当該取引において、取適法、フリーランス法のいずれか、あるいは双方の適用対象かをしっかりと確認するようにしましょう。

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(第二条)」

参照:政府広報オンライン「2026年1月から下請法が「取適法」に!委託取引のルールが大きく変わります」

参照:政府広報オンライン「フリーランスが安心して働ける環境づくりのための法律、2024年11月からスタート!」

契約書作成が必要な取引類型(5類型を解説)

取適法が適用される取引は5つの類型に分類されます。自社の取引がどの類型に該当するかを確認し、適切な契約書を準備しましょう。

①製造委託

物品の製造や加工を他の事業者に委託する取引が該当します。たとえば、自動車メーカーが部品製造を協力会社に発注するケースです。

②修理委託

物品の修理を他の事業者に委託する取引です。機械メンテナンスを専門業者に依頼する場合などが含まれます。

③情報成果物作成委託

ソフトウェア、映像、デザインなどの情報成果物の作成を委託する取引です。

IT企業がシステム開発を協力会社に発注する場合や、広告代理店がデザイン制作を外注する場合が該当します。

④役務提供委託

運送、ビルメンテナンス、警備などのサービス提供を委託する取引です。

元請けの建設会社が設備工事を下請会社に発注するケースも、役務提供委託に該当することがあります。

⑤特定運送委託

取適法で新たに追加された類型で、貨物運送を他の運送事業者に委託する取引が該当します。

これらの取引類型に該当し、かつ資本金・従業員数の要件を満たす場合に、取適法の義務が発生します。

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(第二条)」

取適法で契約書に盛り込むべき必須事項

取適法に対応した契約書を作成するには、法律で定められた必須記載事項を漏れなく盛り込む必要があります。

ここでは、具体的に記載すべき項目を紹介します。

取適法で契約書に必ず記載すべき11項目

委託事業者は、発注の際に、下記の記載事項をすべて記載している書面か、電磁的記録を直ちに中小受託事業者に交付する義務があります。

【書面または電磁的記録に記載すべき具体的事項】
(1) 委託事業者及び中小受託事業者の名称(番号、記号等による記載も可)
(2) 製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託又は特定運送委託をした日
(3) 中小受託事業者の給付の内容(役務提供委託又は特定運送委託の場合は、提供される役務の内容)
(4) 中小受託事業者の給付を受領する期日(役務提供委託又は特定運送委託の場合は、その委託に係る役務の提供を受ける期日又は期間)
(5) 中小受託事業者の給付を受領する場所(役務提供委託又は特定運送委託の場合は、その委託に係る役務の提供を受ける場所)
(6) 中小受託事業者の給付の内容(役務提供委託又は特定運送委託の場合は、提供される役務の内容)について検査をする場合は、その検査を完了する期日
(7) 代金の額
(8) 代金の支払期日
(9) 代金の全部又は一部の支払につき、一括決済方式で支払う場合は、金融機関名、貸付又は支払いを受けることができることとする額(支払額に占める一括決済方式による割合でも可)及びその期間の始期、委託事業者が代金債権相当額または代金債務相当額を金融機関へ支払う期日(決済日)
(10) 代金の全部または一部の支払いにつき、電子記録債権で支払う場合は、電子記録債権の額(支払額に占める電子記録債権による割合でも可)及び中小受託事業者が代金の支払を受けることができることとする期間の始期、電子記録債権の満期日
(11) 原材料等を有償支給する場合は、その品名、数量、対価、引き渡しの期日、決済期日及び決済方法
弁護士・南 陽輔のコメント:
委託事業者としては、書面で交付するか、電磁的記録で送るかいずれでも良いですが、電磁的記録の場合で、中小受託事業者から書面を求められた際には、遅滞なく書面を交付すべき義務があります(取適法4条2項)。もし、中小受託事業者から求められた場合には、しっかりと対応するようにしましょう。

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(第四条)」

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則(第一条)」

参照:公正取引委員会「委託事業者の義務」

【条項例付き】支払条件の書き方|60日ルールとは

取適法60日ルールとは何かご存じでしょうか。

「60日ルール」とは、「支払期日を定める義務」の「製造委託等代金の支払期日を給付の受領後60日以内のできる限り短い期間内に定めること」の俗称です。

かみ砕いて説明すると、中小受託事業者から給付を受領した日より、60日以内のできるかぎり短い期間内に支払期日を設定しなければならない、という内容になっています。

たとえば、成果物を4月15日に受領した場合、支払期日は6月14日以前に設定する必要があります。

「月末締め翌月末払い」の場合、締め日から支払日まで最大60日となるため、受領日によっては60日を超えてしまう可能性があります。運用には注意が必要です。

60日ルールに違反した場合、受領日から60日を経過した日から実際の支払日までの期間について、年14.6%の遅延利息を支払う義務が生じます。

弁護士・南 陽輔のコメント:
実務でよく起こる誤解の一つとして、「検収した日から60日以内」と理解してしまうことが挙げられます。契約書においても検収完了日を基準として定められているのを目にすることもあります。しかし、検収を基準にしてしまうと、委託事業者側の判断で支払いを遅らせることが可能になってしまいます。取適法では「給付を受領した日」を起算日とすることが明記されています。また、その他の誤解の例として「発注元(元請け)から代金が入ってから支払う」というものがあります。これも取適法違反になってしまいますので、気を付けましょう。

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(第三条、第六条)」

【記載例付き】委託内容・納期の書き方

委託内容は、中小受託事業者が何をすべきかを明確に理解できるよう、具体的に記載しましょう。

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(第四条)」

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則(第一条)」

参照:公正取引委員会「(令和7年10月1日)「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則」等の整備について」

たとえば、IT系の開発委託であれば、開発対象のシステム名・機能要件・使用する技術などを、建設系の工事委託であれば、工事の名称・場所・工事内容・仕様などを具体的に記載します。

参照:公正取引委員会「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」

契約書における委託内容と納期の記載例は以下のとおりです。

【委託内容の記載例】
第○条(委託業務の内容)
甲は、乙に対し、以下の業務を委託し、乙はこれを受託する。
(1)業務の名称:○○システム開発業務
(2)業務の内容:別紙仕様書に定める機能を有するシステムの設計、開発およびテスト
(3)納入成果物:ソースコード一式、設計書、テスト報告書
【納期の記載例】
第○条(納期)
乙は、令和○年○月○日までに、前条の成果物を甲に納入する。

参照:厚生労働省「契約書の参考例 ─基本契約─」

記載漏れしやすい項目と対策

4条書面で記載漏れしやすい項目として、以下のものが挙げられます。

検査完了期日

検収を行う場合は、いつまでに検査を完了するかを明記する必要があります。単に「検収を行う」と書くだけでは不十分です。

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則(第一条)」

給付を受領する場所

納品場所が自明な場合でも、契約書に明記しておくことが望ましいです。

データ納品の場合は、メールやクラウドストレージなど、具体的な納品方法を記載します。

参照:公正取引委員会「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」

有償支給原材料の取扱い

製造委託で原材料を有償で支給する場合は、その対価や決済条件を明記する必要があります。

対策としては、4条書面の記載項目について、発注前に必ず確認する運用を徹底することが有効です。

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(第一条、第四条)」

既存の契約書を取適法に対応させる改定ポイント

既存の契約書を取適法に対応させる改定ポイント

すでに作成している、下請法に対応した契約書を使用している企業も多いでしょう。

ここでは、既存の契約書を取適法に対応させるための改定ポイントを解説します。

下請法時代の契約書から何を変更すべきか

下請法時代の契約書から取適法対応に向けて変更すべき主なポイントは以下のとおりです。

用語の変更

下請法(旧) 取適法(新)
親事業者 委託事業者
下請事業者 中小受託事業者/特定受託事業者

条文の更新

契約書中で下請法の条文を引用している場合は、取適法の該当条文に更新しましょう。

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」

禁止行為の見直し

取適法では、禁止行為として「協議に応じない一方的な代金決定の禁止」と「手形払等の禁止」が追加されたため、代金決定プロセスに関する条項を見直す必要があります。

たとえば、手形での支払を前提とした条項があれば、削除または修正が必要です。

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(第二条、第五条、第六条)」

改定が必要な条項のビフォー・アフター例

代金決定に関する条項の改定例は、以下の通りです。

【代金決定に関する条項の改定例】

  • 改定前:「委託料は、甲が定める単価表に基づき算出する。」
  • 改定後:「委託料は、甲乙協議のうえ、別途定める単価表に基づき算出する。甲は、単価の改定を行う場合、事前に乙と協議を行い、乙の意見を十分に考慮するものとする。」

一方的に委託事業者が代金を決定できる条項は、取適法違反となるリスクがあります。協議プロセスを明記することで、対等な取引関係を担保しましょう。

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(第五条)」

契約巻き直しが必要なケース・不要なケース

すべての契約を一から作り直す必要はありません。契約巻き直しが必要なケースと不要なケースを整理しておきましょう。

契約巻き直しが必要なケースとしては、契約書中に下請法の条文番号を直接引用しており、取適法施行後も契約が継続する場合が挙げられます。

また、禁止行為に該当するおそれのある条項が含まれている場合も、巻き直しを検討すべきです。

参照:公正取引委員会「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」

一方、契約巻き直しが不要なケースとしては、用語の変更のみで対応できる場合や、基本契約の内容に実質的な問題がない場合があります。このような場合は、覚書で対応可能です。

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(第二条、第五条)」

覚書での対応方法

軽微な変更であれば、覚書を締結することで対応できます。覚書には、変更する条項の特定・変更内容・変更の効力発生日を明記します。

【覚書の記載例】
第1条(用語の変更)
原契約における『親事業者』の表記は『委託事業者』に、
『下請事業者』の表記は『中小受託事業者』に、それぞれ読み替えるものとする。
第2条(効力発生日)
本覚書は、2026年1月1日から効力を生じる。

参照:公正取引委員会「中小受託取引適正化法ガイドブック「下請法」は「取適法」へ~知っておきたい制度改正のポイント~」

取適法対応契約書の3つのチェックリスト

取適法対応契約書の3つのチェックリスト

契約書が取適法に対応しているか確認するためのチェックリストを紹介します。

契約締結前、支払・検収条件、禁止行為の3つの観点からチェックしましょう。

契約締結前チェックリスト

契約締結前に確認すべき項目は以下のとおりです。

▢ 自社が「委託事業者」に該当するか(資本金・従業員数要件)を確認したか
▢ 取引が5類型のいずれかに該当するかを確認したか
▢ 委託内容が具体的かつ明確に記載されているか
▢ 納期が明記されているか
▢ 対価の算定根拠が明確か
▢ 中小受託事業者と対価について協議を行ったか
▢ 4条書面の必須記載事項がすべて含まれているか

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(第二条、第四条、第五条)」

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則」

参照:公正取引委員会「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」

支払・検収条件チェックリスト

支払・検収条件に関するチェック項目は以下のとおりです。

▢ 支払期日は受領日から60日以内に設定されているか
▢ 検収期間は合理的な長さか(60日ルールを遵守できるか)
▢ 支払方法は現金または振込となっているか(手形払いは原則禁止)
▢ 振込手数料の負担者は明記されているか
▢ 検収基準が明確に定められているか
▢ 検収不合格時の対応手順が定められているか

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(第三条、第五条)」

参照:公正取引委員会「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第七条の書類等の作成及び保存に関する規則」

禁止行為に該当しないかのチェックリスト

契約条項が禁止行為に該当しないかを確認するチェック項目は以下のとおりです。

▢ 対価が不当に低く設定されていないか(買いたたき)
▢ 一方的に対価を決定・変更できる条項がないか
▢ 受領後の返品を不当に認める条項がないか
▢ 対価の減額を不当に認める条項がないか
▢ 中小受託事業者に不当な負担を強いる条項がないか
▢ 委託内容の変更・やり直しに関する条件が明確か

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(第五条)」

参照:公正取引委員会「中小受託取引適正化法ガイドブック「下請法」は「取適法」へ~知っておきたい制度改正のポイント~」

取適法違反になりやすい契約条項と修正例

取適法違反になりやすい契約条項と修正例

取適法違反のリスクが高い契約条項と、その修正例を解説します。契約書のレビュー時に参考にしてください。

買いたたきに該当しやすい条項

買いたたきとは、通常支払われる対価に比べて著しく低い対価を不当に定めることです。

  • 問題のある条項例:「委託料は、甲が市場価格を考慮して一方的に定める金額とする。」
  • 修正例:「委託料は、乙が提示する見積書をもとに、甲乙協議のうえ決定する。甲は、委託料の決定にあたり、原材料費、労務費その他の適正なコストを考慮するものとする。」

中小受託事業者との協議なく、一方的に低い対価を設定することは買いたたきに該当するおそれがあります。

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(第五条)」

参照:公正取引委員会「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」

支払遅延・減額に該当しやすい条項

支払遅延や不当な減額につながりやすい条項にも注意が必要です。

  • 問題のある条項例:「甲の資金繰りの都合により、支払期日を延長することができる。」
  • 修正例:「甲は、第○条に定める支払期日までに委託料を支払う。ただし、乙の責めに帰すべき事由により成果物に瑕疵がある場合は、当該瑕疵の修補が完了するまで、瑕疵に相当する部分の支払いを留保することができる。」

支払期日を委託事業者の都合で一方的に延長できる条項は、支払遅延の禁止に違反するリスクがあります。

また、受領日から60日以内(役務提供の場合は提供完了から60日以内)に定められた支払期日までに全額を支払わなければなりません。

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(第三条、第五条)」

不当な給付内容の変更に該当しやすい条項

発注後に委託内容を一方的に変更できる条項も問題となります。

  • 問題のある条項例:「甲は、いつでも委託内容を変更でき、乙はこれに従わなければならない。」
  • 修正例:「甲は、委託内容の変更を必要とする場合、あらかじめ乙と協議のうえ、変更内容および変更に伴う対価・納期の調整について合意するものとする。」

委託内容の変更には中小受託事業者との協議が必要であり、変更に伴い追加コストが発生する場合、委託事業者がその費用を負担しないことは不当な給付内容の変更にあたります。

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(第五条)」

参照:公正取引委員会「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」

協議なき一方的な代金決定に該当しやすい条項

取適法で新設された禁止行為である「協議に応じない一方的な代金決定」に該当しやすい条項にも注意が必要です。

  • 問題のある条項例:「次年度の委託料は、甲が経営状況を勘案して決定し、乙に通知する。」
  • 修正例:「次年度の委託料については、甲乙間で誠実に協議を行い、合意のうえ決定する。協議においては、乙の提示する根拠資料を十分に検討するものとする。」

中小受託事業者との協議を経ずに一方的に代金を決定することは、取適法違反となります。

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(第五条)」

参照:公正取引委員会「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」

参照:公正取引委員会「中小受託取引適正化法ガイドブック「下請法」は「取適法」へ~知っておきたい制度改正のポイント~」

取適法における書面の電子化ルール

取適法では、書面交付の電子化に関するルールも変更されます。電子契約や電子発注を活用している企業は、新しいルールを確認しておきましょう。

弁護士・南 陽輔のコメント:
電子契約を活用すれば印紙税を節約することができます。印紙税法では、業務請負契約などの20種類の課税文書が定められていて、これらの課税文書を作成した場合には、契約金額に応じて印紙を貼付する必要があります。しかし、印紙は紙媒体の契約書でのみ必要になるもので、電子契約では不要とされています。この点は、国税庁の通達で示されています。契約書のほかに個別の発注書についても契約の成立を証するものである場合には課税文書に該当しますが、こちらも電子メールなどであれば課税されません。

2026年改正で緩和された点

委託事業者は、中小受託事業者に対し、発注内容(給付の内容・代金額・支払期日・支払方法)などを書面又は電子メールなどで明示する義務があります。

今回の2026年法改正では、電子メールなどによる発注内容などの明示は、中小受託事業者の承諾がなくても可能になりました。

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(第四条)」

参照:公正取引委員会「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」

参照:政府広報オンライン「2026年1月から下請法が「取適法」に!委託取引のルールが大きく変わります」

取適法に違反した場合の罰則・制裁

取適法に違反した場合、どのような罰則や制裁があるのかを確認しておきましょう。

違反を未然に防ぐためにも、リスクを理解しておくことが重要です。

罰則の内容(罰金・勧告・公表)

以下のような取適法違反を行ってしまうと、最高で50万円の罰金が科されることがあります。

  • 発注内容等の書面又は電磁的方法による明示義務違反
  • 取引内容を記載・記録した書類又は電磁的記録の作成・保存義務違反
  • 報告徴収に対する報告拒否、虚偽報告
  • 立入検査の拒否・妨害・忌避

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(第十四条、第十五条)」

公正取引委員会による検査・報告要求

公正取引委員会は、取適法の施行状況を監視するため、委託事業者に対して報告を求めたり、立入検査を行ったりする権限を持っています。

調査に備えて、取引記録や契約書類を適切に保存しておく必要があります。

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(第十二条)」

参照:公正取引委員会「中小受託取引適正化法ガイドブック「下請法」は「取適法」へ~知っておきたい制度改正のポイント~」

取適法違反時の罰則の詳細や、勧告から社名公表に至るまでの段階的な制裁措置、違反を指摘された場合の対応手順については、別記事「取適法の罰則とは?違反時の罰金・社名公表のリスクと対処法を解説」で詳しく解説していますので、こちらも合わせてご確認ください。

よくある質問(FAQ)

ここでは、契約実務や運用現場で特によく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。自社の体制に不備がないか、最終確認としてお役立てください。

Q. 資本金・従業員数の要件は?

A. 取引の内容(類型)と、双方の規模によって異なります。大きく分けて、以下の2つのパターンがあります。

① 製造委託・修理委託・特定運送委託などの場合(モノ作り、修理、運送など)
以下のいずれかに該当すれば適用対象です。

  • 委託事業者が「資本金3億円超」または「従業員300人超」で、中小受託事業者が「資本金3億円以下(個人含む)」の場合
  • 委託事業者が「資本金1,000万円超〜3億円以下」で、中小受託事業者が「資本金1,000万円以下(個人含む)」の場合

② 情報成果物作成委託・役務提供委託の場合(IT開発、デザイン、サービス提供など)
以下のいずれかに該当すれば適用対象です。

  • 委託事業者が「資本金5,000万円超」または「従業員100人超」で、中小受託事業者が「資本金5,000万円以下(個人含む)」の場合
  • 委託事業者が「資本金1,000万円超〜5,000万円以下」で、中小受託事業者が「資本金1,000万円以下(個人含む)」の場合

※なお、従業員基準については、資本金基準が適用されない場合に適用されます。

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(第二条)」

参照:公正取引委員会「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」

Q. 契約書の保存期間は?

A. 取適法では、取引が完了した場合、給付内容や代金の額など、取引に関する記録を書類又は電磁的記録(電子データ)として作成し、2年間保存することが義務付けられています。

バックアップ体制も整えておきましょう。

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(第七条)」

参照:公正取引委員会「2026年1月から「下請法」は「取適法」へ!」

Q. 個人事業主との取引も対象になる?

A. はい、個人事業主との取引も取適法の対象となります。中小受託事業者が個人事業主であっても、委託事業者が資本金・従業員数の要件を満たしていれば、取適法の義務が発生します。

なお、中小受託事業者がフリーランス(特定受託事業者)にも該当する場合に、取適法とフリーランス法のいずれにも違反する行為が委託事業者から行われたときは、原則としてフリーランス法が優先的に適用されます。

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(第二条)」

参照:公正取引委員会「中小受託取引適正化法ガイドブック「下請法」は「取適法」へ~知っておきたい制度改正のポイント~」

記事のまとめ:取適法に対応した契約書を正しく作成しましょう

記事のまとめ:取適法に対応した契約書を正しく作成しましょう

取適法は2026年1月1日に施行された重要な法改正であり、多くの企業が契約書の見直しを迫られています。

4条書面の必須記載事項を漏れなく盛り込み、60日ルールを遵守した支払条件を設定することが基本となります。

既存の契約書については、用語の変更や禁止行為への対応を確認し、必要に応じて覚書や契約巻き直しで対応しましょう。

本記事で行った解説やチェックリストを活用して、取適法に適合した契約書を作成してください。

弁護士・南 陽輔のコメント:
2026年の取適法の制定により、従業員要件と特定運送委託が加わったことで、従来の下請法よりもかなり広い範囲の取引が取適法の適用範囲になります。取適法の適用がある取引であるのに取適法を遵守できていなかった場合には、公正取引委員会からの指導、勧告や、場合によっては罰則の適用などの強いペナルティが科されるリスクがあります。事業者としては、取適法の適用があるのかについて、各取引を全体的に見直すことが求められます。取適法の適用がある取引については、契約書のまき直しや、支払いサイトの見直しなど、取適法違反とならない内容へと修正するようにしましょう。

参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(第二条、第三条、第四条、第五条)」

※免責事項

本記事は、作成時点の法令、ガイドライン、および公的機関の情報に基づいて作成されています。内容の正確性には万全を期しておりますが、法改正や制度変更等により、最新の情報と異なる場合があります。

また、本コンテンツは一般的な情報の提供を目的としており、法律的、税務的その他の具体的なアドバイスをするものではありません。個別具体的な事案については、必ず弁護士、税理士等の専門家にご相談ください。

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