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「発注者と受注者、それぞれどんな責任を負うのか」
「契約でトラブルにならないために、何を押さえておけばいいのか」
ビジネスの現場で当たり前のように使われる「発注者」「受注者」という言葉ですが、その法的な定義や責任範囲を正しく理解している方は意外と少ないのではないでしょうか。
この記事では、発注者と受注者の基本的な違いから、IT業界・建設業界における実務上の注意点、契約トラブルを防ぐためのポイントまでを解説します。
【目次】
発注者と受注者の違い

発注者と受注者は、いずれも契約の当事者ですが、果たす役割と負う責任は大きく異なります。
まずは法的な定義を押さえたうえで、それぞれの責任範囲と両者の関係性を見ていきましょう。
発注者とは
発注者(注文者)とは、民法上の請負契約において、当事者の一方(請負人)に対してある仕事の完成を依頼し、その仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束する者を指します。
発注者の主な責任は、完成した仕事の目的物の引き渡しを受けると同時に報酬を支払うことです。
また、原則として請負人が第三者に加えた損害について注文者は責任を負いませんが、注文や指図について過失があった場合は賠償する責任を負うことがあります。
参照:e-Gov法令検索「民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進を図るための関係法律の整備に関する法律 第六百三十二条、第六百三十三条、第七百十六条」
受注者とは
受注者(請負人)とは、発注者からの依頼を受け、ある仕事を完成させることを約束する者です。仕事の完成に対して報酬を受ける権利を有します。
受注者は、適切な時期に仕事に着手し、契約で定められた仕事を完成させる義務を負います。
仕事の目的物が契約の内容と適合しない場合(契約不適合)には、修補や損害賠償などを行う責任(契約不適合責任)を負うことがあります。
参照:e-Gov法令検索「民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進を図るための関係法律の整備に関する法律 第六百三十二条、第五百五十九条、第五百六十二条」
発注者と受注者の関係性
発注者と受注者の関係は、契約形態によって大きく変わります。
実務でとくに重要なのが、請負契約と準委任契約の違いです。
| 請負契約 | 準委任契約 | |
|---|---|---|
| 目的 | 仕事の完成 | 事務の処理(業務の遂行) |
| 完成義務 | あり(受注者が完成リスクを負担) | なし(善管注意義務を負う) |
| 報酬の発生条件 | 成果物の完成・引渡し | 業務の遂行自体 |
| 向いているケース | 成果物が明確に定義できる場合 | 要件が流動的・コンサル型の業務 |
参照:経済産業省「情報サービス・ソフトウェア産業における中小受託適正取引等の推進のためのガイドライン」
契約形態を選ぶ際は、この違いが判断基準になります。
たとえばシステム開発では、要件が固まっている工程は請負契約、要件定義のように流動性が高い工程は準委任契約とするなど、フェーズごとに使い分けるケースも一般的です。
契約当事者としては対等な関係であるべきですが、実際には技術的な専門性や業務知識の非対称性が存在します。
だからこそ、双方が役割分担を明確にし、協力してプロジェクトを進める協働の姿勢が不可欠です。
参照:経済産業省「情報サービス・ソフトウェア産業における中小受託適正取引等の推進のためのガイドライン」
トラブル回避のために契約段階で定めておくべきこと
とりわけITシステム開発では、契約締結時に成果物が具体的に存在しないことが多く、開発プロセスの中で仕様変更が発生しやすいという特徴があります。
「最初に決めたとおりにやればいい」が通用しにくい世界だからこそ、あらかじめルールを定めておくことがトラブル回避のポイントです。
具体的には、以下のような取り決めを契約段階で行っておくことをおすすめします。
- 変更管理のルール: 仕様変更が発生した場合の手続き(誰が承認し、費用・納期への影響をどう扱うか)
- 役割分担の明確化: どの工程を発注者・受注者のどちらが主導し、責任を持つか
- 連絡協議会の設置: 定期的な情報共有と意思決定の場を確保する(※モデル契約書などで推奨される体制整備)
参照:経済産業省「情報サービス・ソフトウェア産業における中小受託適正取引等の推進のためのガイドライン」
これらの契約上のポイントについては、後ほど詳しく解説します。
建設業法・労働安全衛生法から見る発注者・受注者

「発注者」「受注者」という言葉は、民法だけでなく、建設業法や労働安全衛生法でも独自の定義で使われています。
法律によって意味が微妙に異なるため、自社の取引がどの法律の適用を受けるのかを正しく理解しておくことが大切です。
| 民法(請負契約) | 建設業法 | 労働安全衛生法 | |
|---|---|---|---|
| 発注者 | 仕事の完成を依頼し、その結果に対して報酬を支払う者(注文者) | 建設工事の注文者のうち、その仕事を他の者から請け負わないで注文する者(施主) | 特定事業の仕事を自ら行わず、他人に請け負わせる注文者(施主) |
| 受注者 | 仕事の完成を約束する者(請負人) | 建設業者(元請負人、下請負人を含む) | 仕事を請け負った者(事業者、請負人) |
| 発注者の主な責任 | ・報酬の支払い ・注文や指図に過失がある場合の賠償責任 |
・著しく短い工期の禁止 ・不当に低い請負代金の禁止 |
・安全で衛生的な作業遂行を損なう条件(工期・工法など)を付さない配慮義務 |
| 受注者の主な義務 | ・仕事の完成 ・契約不適合責任(修補、損害賠償など) |
・技術者の設置(主任技術者・監理技術者) ・一括下請負(丸投げ)の禁止 |
・労働災害防止措置の実施 ・労働者の安全衛生教育 |
参照:e-Gov法令検索「民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進を図るための関係法律の整備に関する法律 第六百三十二条、第六百三十三条、第七百十六条」
参照:e-Gov法令検索「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律 第二条、第十九条の五、第二十二条、第二十六条」
参照:e-Gov法令検索「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律 第三条、第三十条」
建設業法上における定義と義務
建設業法では、「発注者」とは建設工事の注文者のうち、その仕事を他の者から請け負うのではなく、自ら注文する者をいいます。
ここで混同しやすいのが「注文者」との違いです。
一般的に「注文者」は仕事を依頼する側全般を指しますが、建設業法上の「発注者」は、いわゆる施主(最初の注文者)を指します。
元請負人が下請負人に注文する場合、元請負人は「注文者」にはなりますが「発注者」とは区別されることを覚えておきましょう。
なお受注者(建設業者)に対しては、適正な施工を確保するための技術者の設置義務や、一括下請負の禁止(丸投げの禁止)などの義務が課されています。
参照:e-Gov法令検索「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律 第二条第五項、第二十二条、第二十六条」
労働安全衛生法での区別
労働安全衛生法でも、仕事を他人に請け負わせる者についての規定があります。
特定事業の仕事を自ら行わず他人に請け負わせる者を「発注者」と定義し、労働災害防止のための措置を講ずべき者としての責任を定めています。
具体的には、建設工事の発注者は、施工方法や工期などについて、安全で衛生的な作業の遂行を妨げるおそれのある条件を付けないよう配慮しなければなりません。
無理な工期の設定が現場の安全を脅かすケースは少なくなく、発注者側にも「安全に配慮する責任」があるということです。
参照:e-Gov法令検索「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律 第三条第三項、第三十条第二項」
IT業界への応用と注意点
こうした建設業法の考え方は、IT業界にも応用されています。
システム開発契約においても、契約内容の書面化や製造委託等代金の支払期日などの適正化が求められます。
とくに注意が必要なのが偽装請負の問題です。
偽装請負とは、実態は労働者派遣であるにもかかわらず請負契約を装うことを指します。
発注者が受注者の労働者に直接指揮命令を行わないよう注意が必要です。
参照:経済産業省「情報サービス・ソフトウェア産業における中小受託適正取引等の推進のためのガイドライン」
偽装請負と判断されやすいケース・されにくいケースの境界線は、実務で迷いやすいので注意しましょう。
- 偽装請負にあたりうる行為:発注者が受注者の労働者に対し、作業の順序・方法を直接指示する、出退勤時間を管理するなど
- 偽装請負にあたらない行為:業務委託契約で合意した範囲での安全管理に関する注意喚起(長時間労働の是正推奨など)
「請負だから相手の働き方には一切口を出せない」というわけではない、という点も押さえておきましょう。
システム開発における発注者・受注者

法的な定義を押さえたところで、ここからはシステム開発の現場に焦点を当てます。
発注者・受注者それぞれにどのような役割が求められるのか、また業務効率化の手段として推奨される発注管理システム(EDI)についても見ていきましょう。
システム開発での発注者の役割
「お金を出す側だから、あとはプロに任せれば大丈夫」
こうした認識が、システム開発における多くのトラブルの原因になっています。
発注者に求められる主な役割は以下の3点です。
| 役割 | 内容 | リスク |
|---|---|---|
| 要件定義 | 自社の業務を熟知する発注者が主体となり、システム仕様を明確化する | 要件が不明確なまま進むと、開発遅延や協力義務違反を問われる可能性あり |
| プロジェクトへの能動的な関与 | 連絡協議会への参加、進捗確認、仕様未定事項への意思決定を適時行う | 「ベンダー任せ」は問題発覚の遅れや手戻りの原因に |
| 受入検査(検収)の徹底 | 納品されたシステムが仕様どおりに動作するかを確認する | 検査基準の曖昧さや形骸化した検収は、トラブルや法令違反リスクにつながる |
参照:経済産業省「情報サービス・ソフトウェア産業における中小受託適正取引等の推進のためのガイドライン」
いずれも「情報システム・モデル取引・契約書」において発注者の重要な役割として位置づけられているものです。
「お金を払っているのだから」という受け身の姿勢ではなく、 プロジェクトの当事者として主体的に関わることが求められます。
システム開発での受注者の役割
受注者(ベンダー)は、ITの専門家としての知見に基づき、システムの設計、プログラミング、テストを実施し、契約で定められた機能や性能を実現する義務を負います。
ただし、単に「言われた通りに作る」だけでは不十分です。受注者には以下のような踏み込んだ責任も求められます。
プロジェクトマネジメント義務
専門家としてプロジェクトの阻害要因を発見し、発注者に対策を提案するなど、プロジェクトを円滑に進めるための管理義務です。
問題を認識しながら発注者に報告しなかった場合、受注者側の責任が問われることもあります。
参照:経済産業省「情報サービス・ソフトウェア産業における中小受託適正取引等の推進のためのガイドライン」
納品後の責任(契約不適合責任)
納品物にバグなどの不具合(契約不適合)があった場合、契約内容に基づき、修補や損害賠償を行う責任があります。
「納品したら終わり」ではなく、品質に対する責任は納品後も一定期間続きます。
参照:経済産業省「情報サービス・ソフトウェア産業における中小受託適正取引等の推進のためのガイドライン」
発注者と受注者の契約で押さえるべきポイント

発注者と受注者の関係を健全に保つためには、契約内容の精緻化が欠かせません。
「契約書なんて形式的なもの」と思っている方ほど、いざトラブルが起きたときに痛い目を見ることになります。
契約書に明記すべき重要事項
中小受託取引適正化法(取適法) の観点から、トラブルを未然に防止するために以下の4点を明確に定めることが重要です。
①業務範囲と成果物の定義
どの作業を誰が行うのか、何を作成して納品するのか(給付の内容)を明確に定義する必要があります。
取適法第四条では、発注に際して「給付の内容」などを記載した書面または電磁的記録(4条書面)を直ちに交付・提供することが義務付けられています。
仕様や作業内容が曖昧なままだと、受領拒否や不当なやり直しといったトラブルの原因となります。
参照:公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法 テキスト」
②納期・検収基準
いつまでに納品し(給付を受領する期日)、検査を行う場合はいつまでに完了するか(検査を完了する期日)をあらかじめ明示することが法律で義務付けられています。
また、検査基準が明確でないことを理由に受領を拒否したり返品したりすることは認められないため、明確な基準の合意が重要です。
参照:公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法 テキスト」
③責任範囲と費用負担
納品物に不備があった場合や第三者からの損害賠償請求などが発生した場合の責任範囲について定めておくべきです。
特に、委託事業者の指示などにより不具合が生じた場合など、中小受託事業者に責任がないにもかかわらず、費用を負担させやり直しをさせることは「不当なやり直しの禁止」として規制されています。
損害賠償の負担についても、一方的に押し付けるのではなく、合理的な割合で負担するよう協議することが求められます。
参照:公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法 テキスト」
④知的財産権の帰属
成果物に伴い知的財産権が発生する場合、その権利が委託事業者と中小受託事業者のどちらに帰属するか、あるいは譲渡・許諾する範囲を明記する必要があります。
発注時にこれらを明確にせず(4条書面に含めず)、後から無償で権利を譲渡させることは「不当な経済上の利益の提供要請」などに該当するおそれがあります。
権利を譲渡させる場合は、その対価についても十分に協議する必要があります。
参照:公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法 テキスト」
契約トラブルを防ぐための注意点
実務で頻発するトラブルには、以下のようなパターンがあります。
取適法では、こうしたトラブルを防ぐために具体的な義務が定められています。
| トラブル例 | 原因 | 防止策・法的根拠 |
|---|---|---|
| 正式発注前に作業が始まる | 発注書面の交付が遅れる | 取適法 第四条に基づき、委託事業者は発注時に直ちに給付の内容、代金、支払期日などを書面または電磁的方法で明示しなければなりません。 |
| 「言った言わない」の認識齟齬 | 要件定義が不十分、「一式」などの曖昧な表現 | 取適法 第四条(給付の内容の明示)の趣旨に則り、作業内容・成果物を具体的に列挙し、曖昧さを排除する必要があります。 |
| 仕様変更に伴う費用トラブル | 変更管理のルールが未整備 | 承認手続き・費用・納期への影響を契約段階で取り決めておくことが重要です。 |
とくに仕様変更については、取適法でも、中小受託事業者に責任がないのに給付内容を変更させたりやり直しをさせたりすること(第五条第二項第三号)や、コスト変動時に協議に応じず一方的に代金を決定すること(第五条第二項第四号)が明確に禁止されています。
参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律 第四条、第五条第二項第三号、第五条第二項第四号」
取適法(中小受託取引適正化法)・独占禁止法との関係
委託事業者(発注者)と中小受託事業者(受注者)の取引では、取適法や独占禁止法の以下の規制を押さえておく必要があります。
| 規制内容 | 根拠法 | 具体例 |
|---|---|---|
| 書面交付・内容明示の義務 | 取適法 第四条 | 給付の内容、代金の額、支払期日などを直ちに明示する(書面または電磁的方法)。 |
| 代金の支払期日 | 取適法 第三条 | 給付を受領した日(役務提供の日)から60日以内で、かつできる限り短い期間内に定める。 |
| 買いたたきの禁止 | 取適法 第五条第一項第五号 | 給付の内容と同種・類似の給付に対し通常支払われる対価に比し、著しく低い額を不当に定めること。 |
| 協議を経ない代金決定の禁止 | 取適法 第五条第二項第四号 | コスト変動などの事情が生じ、中小受託事業者が協議を求めたにもかかわらず、協議に応じず(または必要な説明を行わず)、一方的に代金を決定すること。 |
| 優越的地位の濫用 | 独占禁止法 第二条第九項第五号 | 取引上の地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に、対価の支払を遅らせたり、減額したり、その他不利益な条件を設定・変更すること。 |
「IT業界だから関係ない」ということはありません。
プログラムの作成などは「情報成果物作成委託」として法の対象となります。
価格決定に際しては中小受託事業者と協議を行い、適正な利益や労務費の転嫁を含めた対価設定が求められます。
参照:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律 第三条、第四条、第五条第一項第五号、第五条第二項第四号」
参照:e-Gov法令検索「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律 第二条第九項第五号」
発注者と受注者が対等な関係を築くには

契約書を整えることはゴールではなく、あくまでスタートラインです。
日々のコミュニケーションや相互理解の積み重ねこそが、トラブルを未然に防ぎ、「この相手となら安心して仕事ができる」という強固な信頼関係(パートナーシップ)を築く鍵となります。
コミュニケーションの重要性
プロジェクトの進捗やリスクを共有するため、定期的に連絡協議会などを開催し、責任者同席のもとで問題解決を図ることが重要です。
仕様変更などの重要な決定事項は、口頭だけで済ませず、必ず書面(またはメールなどの電磁的記録)に残しましょう。
この記録化の徹底は、単なる事務作業ではなく、お互いの認識のズレを防ぎ、信頼関係を守るための共通言語となります。
双方が契約上の役割を理解し、誠実に履行すること。これが信頼の基盤です。
参照:経済産業省「情報サービス・ソフトウェア産業における中小受託適正取引等の推進のためのガイドライン」
相互理解を深める取り組み
対等な関係を実現するには、双方が相手の領域に対する理解を深める「歩み寄り」が欠かせません。
発注者側は、「お金を払う客」という意識を捨て、システム開発などに関する基礎知識を持って主体的にプロジェクトに関与する姿勢が必要です。
一方、受注者側は、技術の専門家として振る舞うだけでなく、発注者のビジネス目的や業務内容を深く理解し、課題解決のための提案を行うことが求められます。
こうした双方向の努力があってはじめて、適正なコスト負担や取引条件の改善に取り組める、Win-Winの関係が実現します。
参照:経済産業省「情報サービス・ソフトウェア産業における中小受託適正取引等の推進のためのガイドライン」
長期的なパートナーシップの構築
単発の取引にとどまらず、継続的な取引を通じてノウハウを蓄積していけば、より効率的で高品質な開発体制を築くことが可能です。
受注者を単なる「業者」ではなく、ビジネスの成長を支える戦略的パートナーとして位置づけ、対等な立場で協力し合うことが重要です。
この一歩踏み込んだ関係性があるからこそ、納期逼迫やトラブル発生時にも、互いに協力しながら乗り越えていける土壌が整います。
発注管理システム(EDIなど)を通じたスムーズな情報共有や取引の効率化は、事務負担を減らすだけでなく、こうした本質的なパートナーシップの強化にも寄与します。
参照:経済産業省「情報サービス・ソフトウェア産業における中小受託適正取引等の推進のためのガイドライン」
発注管理システムで発注者・受注者の業務を効率化するメリット

ここまで見てきたように、発注者と受注者の関係を適正に保つには、契約内容の明確化やコミュニケーションの充実が不可欠です。
しかし、これらをすべて人力だけで徹底するのは容易ではありません。
そこで有効なのが、発注管理システム(受発注EDI)の活用です。
発注管理システム(受発注EDI)とは
発注管理システムとは、見積り、発注、受注、納品、検収、請求といった一連の取引業務を電子データでやり取りし、一元管理する仕組みのことです。
情報の正確性や業務スピードの向上、ペーパーレス化によるコスト削減など、業界を問わず多くの導入メリットがあります。
参照:経済産業省「情報サービス・ソフトウェア産業における中小受託適正取引等の推進のためのガイドライン」
メリット1:発注者側の「コンプライアンス自動化」と「管理コスト削減」
発注者にとっての大きなメリットは、システム化によって法令遵守のプロセスが自動化される点です。
法令遵守の徹底
システム上で発注を行うことで、取適法などで定められた必須記載事項を網羅した発注書データが確実に交付されます。
これにより、担当者のうっかりミスによる「書面交付義務違反」などの法令違反を未然に防ぐことができます。
管理コストの削減
発注状況や取引履歴がデータとして一元管理されるため、手配漏れや納期の遅延リスクを早期に発見できます。
また、蓄積されたデータを分析することで、予算管理やコストの最適化も容易になります。
参照:経済産業省「情報サービス・ソフトウェア産業における中小受託適正取引等の推進のためのガイドライン」
メリット2:受注者側の「処理迅速化」と「トラブル防止」
受注者にとっても、単に「発注側の指定システムに従う」だけでなく、明確な実利があります。
受注処理の迅速化
発注情報を即座にデジタルデータで受け取ることで、自社システムへの転記・再入力の手間を省き、迅速に作業や手配に着手できます。
請求・回収ミスの防止
受注データに基づいて請求書を自動作成したり、システムのログを確実なエビデンス(証拠)として残したりすることで、請求漏れや「言った言わない」の口頭合意によるトラブルを回避し、確実な代金回収につなげることができます。
参照:経済産業省「情報サービス・ソフトウェア産業における中小受託適正取引等の推進のためのガイドライン」
メリット3:電子帳簿保存法への対応負荷を大幅に軽減
2024年1月から完全義務化された「電子帳簿保存法(電子取引データの保存)」への対応においても、システム導入は非常に有効です。
「電子取引」としての保存義務
EDIシステムを介した受発注情報は、電子帳簿保存法上の「電子取引」に該当します。
これらは紙に出力して保存することが原則認められず、電子データのまま一定の要件(改ざん防止措置や検索機能など)を満たして保存しなければなりません。
保存要件の自動クリア
多くの発注管理システムは、電子帳簿保存法の要件に標準で対応しています。
- 真実性の確保(改ざん防止): 「訂正・削除の履歴が残るシステム」を利用することで、別途タイムスタンプを付与したり、事務処理規程を作成・運用したりする手間をかけずに、改ざん防止措置(真実性の要件)を満たすことができます。
- 検索機能の確保:システム上で「取引年月日」「取引金額」「取引先」などの条件でデータを検索・参照できるため、手動でファイル名を変更(リネーム)したり、索引簿(インデックス)をExcel(エクセル)で作成したりする煩雑な作業が不要になります。
このように、発注管理システムを活用することで、業務効率化と同時に、複雑な法対応を自動的かつ確実に行うことが可能になります。
まとめ:発注者と受注者の違いを理解して適切な関係構築を
発注者と受注者は、それぞれ「仕事の完成に対する報酬支払い」と「仕事の完成」という異なる責任を負います。
しかし、プロジェクトを成功に導くのは、どちらか一方の力ではありません。
双方の協力と役割分担の明確化があってこそ、はじめて成り立つものです。
契約内容を適正化し、対等なパートナーシップを築くことがトラブル防止の第一歩。
そして、業務の効率化や信頼関係の強化のために、発注管理システム(電子受発注システム)の導入も有効な選択肢のひとつです。
煩雑な事務作業はシステムに任せ、本来注力すべき業務に集中できる環境を整えましょう。
本記事は、作成時点の法令、ガイドライン、および公的機関の情報に基づいて作成されています。内容の正確性には万全を期しておりますが、法改正や制度変更等により、最新の情報と異なる場合があります。
また、本コンテンツは一般的な情報の提供を目的としており、法律的、税務的その他の具体的なアドバイスをするものではありません。個別具体的な事案については、必ず弁護士、税理士等の専門家にご相談ください。
本記事の情報を利用して行われた判断やアクションによって生じた損害、およびリンク先情報の正確性等について、当社は一切の責任を負いかねます。なお、本記事の記載内容は予告なしに変更することがあります。
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