注意事項
・本記事は公開時点の情報に基づいています。法令・制度変更等により内容が変わる可能性があるため、最新情報は公式サイト等でご確認ください。
・記事内の画像はイメージです。実際の商品・サービスとは異なる場合があります。
日々の業務において、発注書や請求書など、多くの書類を用いたやり取りが行われています。
「これらの書類はいつまで保存しておけばよいのか?」と疑問に思ったことはないでしょうか。
とくに、発注書や注文書は、契約の成立を証明する重要な証憑(しょうひょう)書類です。誤って廃棄してしまうと、税務調査での指摘や、取引先とのトラブル時に不利になるリスクがあります。
この記事では、発注書・注文書それぞれについて、法人の場合と個人事業主の場合の違い、電子帳簿保存法への対応、そして具体的な保管期間の計算方法まで、初心者の方にもわかりやすく徹底解説します。
2008年に弁護士登録し、大阪市内の法律事務所に勤務したのち、2021年に独立開業しました。契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
【目次】
- 1 【結論】発注書・注文書の保管期間は「原則7年」
- 2 注文書・注文請書・発注書の保管義務とは
- 3 法人の発注書・注文書の保管期間
- 4 個人事業主の発注書・注文書の保管期間
- 5 【業種別】特別な保管期間が定められているケース
- 6 保管期間の「起算日」はいつ?具体例で解説
- 7 発注書・注文書の正しい保管方法【2026年最新】
- 8 電子帳簿保存法の改正ポイントと実務対応
- 9 発注書・注文書を保管しなかった場合のリスク・罰則
- 10 保管期間経過後の発注書・注文書は捨てていい?正しい廃棄方法
- 11 発注書・注文書の保管に関するよくある質問(FAQ)
- 12 記事のまとめ:発注書・注文書は保管期間と方法を正しく理解して管理しよう
【結論】発注書・注文書の保管期間は「原則7年」

忙しい業務の合間に確認されている方のために、まずは結論となる発注書・注文書保管期間を一覧表にまとめました。
ご自身の状況に合わせて、最低限必要な年数を確認してください。
なお、法人の場合は「欠損金の繰越控除」の適用状況によって期間が異なりますので注意が必要です。
| 法人の区分 | 書類の種類 | 保管期間 | 起算日 |
|---|---|---|---|
| 青色申告法人 | 注文書・発注書(控) | 7年間 | 事業年度終了の日の翌日から2ヶ月を経過した日 |
| 青色申告法人 (欠損金の繰越控除を受ける場合) |
注文書・発注書(控) | 10年間 | 事業年度終了の日の翌日から2ヶ月を経過した日 |
| 青色申告以外の法人 (白色申告など) |
注文書・発注書(控) | 7年間 | 事業年度終了の日の翌日から2ヶ月を経過した日 |
青色申告法人の場合、基本的には「7年間保管しておけば安心」と考えておくと間違いがありません。
ただし、欠損金の繰越控除を受ける場合は10年間の保管が義務付けられているため注意が必要です。
また、建設業など特定の業種ではさらに長い期間が定められている場合もありますので、詳細を後述の章で確認しましょう。
業務で扱う書類には、本稿の発注書のほかにも様々なものがあり、その保存期間は書類の種類に応じて様々な法律で定められています。例えば、会社法では、貸借対照表や損益計算書などの計算書類や株主総会議事録などの各書類の保存期間は10年間と定められています。他にも、賃金台帳や雇用契約書などの労働関係の書類は労働基準法で5年間(経過措置が適用される間は3年間)の保存期間の定めがあります。
書類の保存期間は、根拠法令によって異なりますので、しっかりと確認するようにしてください。
参照:e-Gov 法令検索「法人税法施行規則(第五十九条、第二十六条の三、第六十七条)」
注文書・注文請書・発注書の保管義務とは

そもそも「注文書や注文請書に保管義務があると知らなかった」という方もいらっしゃるかもしれません。
結論から申し上げますと、事業を行ううえで発生した取引書類には、法律によって明確な保管義務が課されています。
これは、物理的な商品の売買だけでなく、システム開発の委託や、建設工事の外注、デザイン制作の依頼といった「サービスの受発注」に関しても同様です。
ここでは、その法的根拠とリスクについて理解を深めましょう。
保管義務の法的根拠(法人税法・所得税法)
発注書や注文書の保管義務は、主に「法人税法」および「所得税法」によって定められています。
これらの法律では、事業の取引内容を記録した帳簿や書類を、一定期間適切に保存することを義務付けています。
これは、税務署が「正しく税金が計算され、納税されているか」を事後的に確認(税務調査)するために必要だからです。
もし保管義務がなければ、架空の経費を計上したり、売上を隠したりといった不正が容易になってしまいます。
そのため、取引の事実を客観的に証明する書類として、発注書の保管が必須とされているのです。
各法令で定められている保存期間は、概ね、時効との関連で年数が決められていることが多いです。法人税法、所得税法などの税金の関連では、税金の時効が原則5年、悪質な場合で7年と、最長7年間されていることから、税金算定の根拠資料となる書類の保存期間も7年とされているものと考えられます。
時効との関連で保存期間が定められていることを認識しておくと、書類に応じた保存期間が覚えやすくなるかもしれません。
注文書・発注書・注文請書の違いと保管義務の範囲
似たような言葉が多くて混乱しがちですが、注文書・発注書・注文請書のそれぞれの書類の役割を整理しておきましょう。
保管義務はいずれの書類にも適用されます。
| 書類名 | 発行者 | 目的・意味 |
|---|---|---|
| 発注書(注文書) | 商品やサービスを「買いたい(依頼したい)」側 | 「これをお願いします」という意思表示 |
| 注文請書(発注請書) | 注文を受けた側 | 「確かにその注文を引き受けました」という承諾の意思表示 |
これらの書類は、セットで「契約の成立」を証明するものとなります。
たとえば、IT企業がフリーランスのエンジニアに開発を依頼する場合、会社側が発行する「発注書」と、エンジニア側が発行する「注文請書」の両方を保管しておくことが理想的です。
どちらか一方しかない場合でも、取引の事実を証明する重要書類として保管義務の対象となります。
保管義務を怠った場合のリスク
もし、「場所をとるから」といって勝手に書類を破棄してしまった場合、以下のような重大なリスクを負うことになります。
| リスク | 具体的なリスクの内容 |
|---|---|
| 経費の否認 | 税務調査が入った際、その支出が本当に事業のために使われたのか証明できず、経費として認められない可能性があります。その結果、追徴課税が発生します。 |
| 青色申告の承認取り消し | 帳簿書類の保存は青色申告の要件です。ずさんな管理が発覚すれば、青色申告の特典(特別控除など)が受けられなくなる恐れがあります。 |
| 消費税の仕入税額控除の否認 | 消費税の計算において、支払った消費税を差し引くことができなくなり、納税額が大幅に増える可能性があります。 |
法人の発注書・注文書の保管期間

法人の場合、発注書や注文書の保管期間は「7年間」が基本です。
しかし、会社の経営状態によっては期間が延長されるケースがあります。
ここでは、法人が守るべき発注書・注文書の保管期間について具体的なルールを解説します。とくに赤字決算を出したことがある企業は注意が必要です。
原則7年間の根拠(法人税法)
法人税法において、帳簿書類の保存期間は「その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間」と定められています。
これは、すべての法人に適用される基本ルールです。
たとえ小規模な会社であっても、取引先が発行した注文請書や、自社の控えとして残している発注書は、7年間捨てずに保管しておかなければなりません。
オフィスのキャビネットが一杯になってしまう場合は、後述する「電子保存」への切り替えを検討しましょう。
10年保管が必要になるケースとは
原則は7年ですが、以下の条件に当てはまる場合は「10年間」の保管が必要になります。
- 平成30年(2018年)4月1日以後に開始する事業年度で、欠損金の生じた事業年度
- 青色申告書を提出した事業年度で、欠損金の繰越控除を受ける場合
参照:e-Gov 法令検索「法人税法施行規則 第二十六条の三」
簡単に言うと、「赤字(欠損金)が出た年」や「過去の赤字を使って黒字を相殺(節税)している年」の書類は、証拠として長く残しておく必要があるということです。
法人税法の帳簿書類には、貸借対照表や損益計算書が含まれます。貸借対照表等の保存期間については、会社法で10年間とする定めがあります(会社法435条)。
つまり、法人税法上は原則7年ですが、会社法に基づいて10年間保存しなければならないということになります。このように同じ書類について各法令で保存期間が異なっていることがあります。
こうした場合には最も長い保存期間(上記の例でいえば10年間)を遵守するようにしてください。
欠損金の繰越控除を受ける場合の注意点
「欠損金の繰越控除」とは、赤字が出た年のマイナス分を翌年以降に繰り越し、将来の黒字から差し引いて法人税を安くできる制度です。
この制度を利用する場合、税務署は過去の赤字が正しいものであったかをさかのぼって確認する可能性があります。
そのため、保管期間が9年や10年に延長されています(制度改正により期間が延びています)。
自社が過去に赤字を出して繰越控除を利用している場合は、安易に7年で廃棄せず、税理士に確認することをおすすめします。
参照:国税庁「No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除」
個人事業主の発注書・注文書の保管期間

個人事業主やフリーランスの場合、保管期間は「原則5年」ですが、条件によっては「7年」になります。
法改正や消費税のインボイス制度導入により、実務上は7年保管が推奨される傾向にあります。ここでは、その理由について詳しく解説していきます。
原則5年間の根拠(所得税法)
所得税法上、個人事業主の書類保管期間は以下のとおり区分されています。
| 書類の種類 | 具体例 | 保存期間 |
|---|---|---|
| 帳簿 | 仕訳帳・総勘定元帳など | 7年間 |
| 決算関係書類 | 損益計算書・貸借対照表など | 7年間 |
| 現金預金取引等関係書類 | 領収書・請求書・発注書など | 5年間 |
発注書や注文書は「その他の書類」に分類されるため、所得税法だけで見れば5年間の保管で済みます。
消費税課税事業者は7年間に延長
注意が必要なのは、消費税の課税事業者(消費税を納めている人)の場合です。
消費税法では、仕入税額控除を受けるための要件として、帳簿および請求書などの「7年間」の保存を義務付けています。
インボイス制度の導入により、これまで免税事業者だった方も課税事業者になっているケースが増えています。
自分が消費税を納める立場であれば、所得税法の5年ではなく、消費税法に合わせて7年間保管する必要があります。
青色申告・白色申告での違いはある?
青色申告と白色申告での違いを整理すると以下のようになります。
| 申告方法 | 保存期間 |
|---|---|
| 青色申告 | 帳簿や決算書類は7年、領収書や発注書などの証憑書類は5年(ただし前々年の所得が300万円以下の場合は5年でよい書類もある)。 |
| 白色申告 | 収入金額や必要経費を記載した帳簿は7年、その他の書類(発注書含む)は5年。 |
このように、制度上は「5年でよいケース」が存在しますが、後から消費税の課税事業者になったり、電子帳簿保存法の要件を満たす必要が出てきたりすることを考えると、個人事業主であっても一律「7年間」保管することが、ミスを防ぐための賢い方法です。
【業種別】特別な保管期間が定められているケース

記事序盤でも少し触れたように、「建設業法での注文書の保管期間はどうなっていますか?」といった疑問を持つ方も多いでしょう。
一般的な商取引以外に、特定の業種や法律が関わる取引では、通常とは異なる保管期間が定められています。
ここでは、建設業法や取適法など、特定のルールについて解説します。
建設業法における注文書の保管期間(5年または10年)
建設業を営む場合、建設業法によって「帳簿」および「営業に関する図書」の保存が義務付けられています。
注文書などの契約書類は「帳簿」の添付書類として扱われます。
建設工事の注文書(契約書)の保管期間は原則5年間ですが、発注者と締結した新築住宅を新築する建設工事に関しては、契約不適合責任の観点から10年間の保存が義務付けられています。
なお、完成図や打合せ記録などの「営業に関する図書」については、工事の種類にかかわらず10年間の保存が必要です。
参照:国土交通省 関東地方整備局 建政部 建設産業第一課「建設工事の適正な施工を確保するための建設業法(令和7.2版)」
取適法が適用される場合の保管義務(2年)
委託事業者(旧:親事業者)が中小受託事業者(旧:下請事業者)に製造や修理、情報成果物作成(IT開発など)や役務提供を委託する場合、2026年1月1日に施行された「取適法(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)」が適用されます。
取適法の対象となる取引の場合、委託事業者は発注書(4条書面)の交付義務に加え、取引記録を記載した書類(5条書類)を作成し、「2年間」保存する義務があります。
「なんだ、2年でいいのか」と思われるかもしれませんが、これはあくまで取適法上の義務です。
同時に法人税法上の義務(7年)も満たす必要があるため、長い方の期間(7年)に合わせて保管しなければなりません。
参照:公正取引委員会「2026年1月から「下請法」は「取適法」へ!」
その他業種別の注意点
| 業種・法人形態 | 保存期間 |
|---|---|
| 特定運送委託(物流・運送業) | 貨物自動車運送事業法などにより、点呼記録や運行記録計(タコグラフ)などは1年または3年の保存が求められますが、運送の発注書・契約書に関してはやはり税法上の7年保管が基本となります。 |
| 医療法人・NPO法人 | 基本的に法人税法が適用されるため、7年間の保管が必要です。 |
どのような業種であっても、「税務申告に関わるお金の動きを示す書類」は7年保管が原則であると認識しておきましょう。
保管期間の「起算日」はいつ?具体例で解説

「7年間」といっても、いつから数え始めて7年なのでしょうか。
「発行した日」や「受け取った日」から数えると間違いの元になります。
この章を読んで、正しい起算日(期間を数え始める日)を知っておきましょう。
起算日の基本ルール
保管期間の起算日は、書類の発行日や受領日ではありません。
「その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日」が起算日となります。
法人であれば決算月の2ヶ月後、個人事業主であれば翌年の3月15日が基準となります。
つまり、取引から実際に7年が経過していても、起算日から数えるとまだ保管期間内であるケースがほとんどです。
本稿では税金の課税リスクの観点から、起算日を「その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日」として解説されていますが、厳密には各法律によって起算点が異なります。
例えば、会社法435条では「計算書類を作成したときから10年間」、同法318条では「株主総会の日から10年間」、労働基準法(施行規則)では、「労働者名簿については、労働者の死亡、退職又は解雇の日」、「賃金台帳については、最後の記入をした日」とされています。
参照:e-Gov 法令検索「法人税法施行規則 第五十九条 第二項」
【具体例】2026年3月発行の発注書はいつまで保管?
たとえば、3月決算の法人が、2026年(令和8年)3月20日に発注書を発行した場合で考えてみましょう。
| 事業年度 | 2025年4月1日~2026年3月31日 |
|---|---|
| 確定申告期限 | 2026年5月31日(決算日から2ヶ月以内) |
| 起算日 | 2026年6月1日(申告期限の翌日) |
| 7年後の満了日 | 2033年5月31日 |
このように、2026年3月の書類であっても、2033年5月末まで保管する必要があります。
単純に発行日から7年後の2033年3月に捨ててしまうと、約2ヶ月足りないことになり、法律違反となってしまいます。
事業年度をまたぐ場合の考え方
もし上記の会社で、発注書の日付が2026年4月10日だった場合はどうなるでしょうか。
| 事業年度 | 2026年4月1日~2027年3月31日(新しい期に入ります) |
|---|---|
| 確定申告期限 | 2027年5月31日 |
| 起算日 | 2027年6月1日 |
| 7年後の満了日 | 2034年5月31日 |
たった1ヶ月の違いですが、事業年度をまたぐことで保管期限が1年延びることになります。
管理を簡単にするため、「決算期ごとに箱にまとめ、その箱の廃棄年を一律に設定する」という方法をおすすめします。
発注書・注文書の正しい保管方法【2026年最新】

保管期間がわかったところで、次は具体的な保管方法について解説します。
かつては紙での保存が当たり前でしたが、現在はデジタル化が進んでいます。
受け取り方によって保存方法のルールが異なるため注意が必要です。
紙で受け取った発注書の保管方法
郵送やFAX、手渡しなど「紙」で受け取った発注書は、そのまま「紙の原本」としてファイリングして保管することが認められています。
- 取引先ごとに分ける
- 月別・日付順に並べる
- 事業年度ごとに段ボールやバインダーで管理する
これらが一般的な整理方法です。
なお、紙で受け取ったものをスキャンして電子データとして保存し、原本を廃棄することも可能です(スキャナ保存制度)。
電子取引で受け取った場合は電子保存が義務
ここが非常に重要なポイントです。
PDFをメールで受け取った、Webサイトからダウンロードした、クラウドサービス上でやり取りしたといった「電子取引」の場合、原則として紙に出力して保存することは認められていません(猶予措置あり)。
電子データそのものを、後述する電子帳簿保存法の要件に従って保存する必要があります。
たとえば、Excel(エクセル)で作った発注書をPDFにしてメール添付で送った場合、そのPDFデータ自体を適切に保存しなければなりません。
紙の発注書をスキャナ保存する場合の要件
紙で届いた大量の注文書をデータ化してペーパーレス化したい場合、「スキャナ保存制度」を利用します。これには一定の要件があります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 入力期間の制限 | 制限なし(発注書などの「一般書類」は、適時に入力することが可能です)。※領収書などの「重要書類」は、おおむね7営業日以内などの制限があります。 |
| 解像度・階調 | 200dpi以上、フルカラー(一般書類はグレースケールでも可)など。 |
| タイムスタンプの付与 | データの改ざんを防ぐため、タイムスタンプを付与する(訂正削除履歴が残るクラウドシステムなどを利用する場合は不要)。 |
スマートフォンのカメラで撮影したデータも認められますが、画質が不鮮明だと証拠として認められないため注意してください。
電子帳簿保存法の改正ポイントと実務対応

「書類の保存期間はいつまでですか?」「電子保存の義務化っていつから?」といった疑問を持つ方も多くいらっしゃるでしょう。
結論から申し上げると、2024年1月から、電子取引データの電子保存が完全義務化されました。ここでは、最新の法対応について解説します。
国としては、様々な方策によりDX化を進めています。本テーマの電子帳簿保存法もDX化の一環と言えます。また、今後は、E-TAXを利用し、かつ電子帳簿保存を行っている者に対して75万円の青色申告特別控除を設けることが予定されています。
電子化は国の方針であるとともに、私たち事業者側にとっても、保存の容易性、確実性や紙媒体での保管による保管コストの削減など、メリットも多々ありますので、電子保存の活用に取り組んでいきましょう。
2024年1月からの電子取引データ保存義務化とは
電子帳簿保存法(電帳法)の改正により、2024年1月1日以降、電子取引(メール、Webダウンロード、EDIなど)で受け取った書類データは、紙に印刷して保存するだけでは税法上の保存書類として認められなくなりました。
以前は「紙に出力して保存すればOK」というルールがありましたが、それが廃止されたのです。
現在は、電子データは電子データのまま、決められたルールで保存しなければなりません。
なお、本章冒頭で登場した「いつまで」というような期限付きの話ではなく、恒久的なルールです。
参照:国税庁「電子帳簿保存法の内容が改正されました~令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要~」
真実性の確保(タイムスタンプ・訂正削除履歴)
電子データを保存する際は、そのデータが改ざんされていないことを証明する「真実性」の要件を満たす必要があります。
具体的には以下のいずれかの措置が必要です。
- タイムスタンプが付与されたデータを受け取る。
- 受領後、速やかにタイムスタンプを付与する。
- データの訂正や削除ができない、または履歴が残るシステム(クラウド型の会計ソフトなど)を使用する。
- 事務処理規程を作成し、備え付ける(もっとも手軽な方法)。
小規模な事業者であれば、4の「正当な理由がない訂正・削除を禁止する」という社内ルール(事務処理規程)を作り、それに従って運用する方法がコストもかからずおすすめです。
検索要件を満たす具体的な方法
もう一つ重要なのが「可視性(検索機能)」の確保です。保存したデータは、税務調査の際にすぐに検索できなければなりません。
以下の3つの項目で検索できるようにしておく必要があります。
- 取引年月日
- 取引金額
- 取引先名
専用システムを使わない場合、ファイル名にこれらを含める方法が有効です。
| 【ファイル名の例】20240320_株式会社ABC_110000.pdf |
|---|
このようにファイル名を統一し、特定のフォルダに保存しておけば、Windowsのエクスプローラーなどの検索機能で要件を満たすことができます。
中小企業向けの相当の理由がある場合の猶予措置
「システム対応が間に合わない」「資金がない」という中小企業や個人事業主のために、猶予措置も設けられています。
以下の2点を満たしていれば、電子データを単に保存しておくだけ(改ざん防止措置や検索機能がなくてもよい)で認められます。
- システム対応ができないことに「相当の理由」があること(税務署への事前届出は不要)。
- 税務調査の際に、データのダウンロードの求めおよび書面の提示・提出の求めに応じることができること。
ただし、これはあくまで「検索要件」などを緩和するものであり、データを捨ててよいわけではありません。
電子データ自体は必ず保存しておきましょう。
参照:国税庁「電子帳簿保存法の内容が改正されました~令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要~」
発注書・注文書を保管しなかった場合のリスク・罰則

「万が一、保管していなかったらどうなるの?」という疑問点は、経営者にとって最大の懸念事項でしょう。
ここでは、発注書・注文書を保管しなかった場合のリスク・罰則について解説します。
税務調査で指摘された場合のペナルティ
税務調査において、経費として計上している取引の発注書や請求書が見当たらない場合、その取引自体が存在しなかった(架空経費)と疑われます。
証拠がないと判断されれば、その経費は否認され、本来払うべきだった税金に加え、過少申告加算税(10%~15%)や、悪質な隠蔽とみなされれば重加算税(35%~40%)といった重い罰金が科されます。さらに、延滞税も発生します。
参照:国税庁「法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」
青色申告の取消リスク
前述のとおり、帳簿書類の適切な保存は青色申告の承認要件です。
保存義務違反が著しい場合、青色申告の承認が取り消される可能性があります。
取り消されると、青色申告特別控除(最大65万円)が使えなくなるだけでなく、赤字の繰越控除もできなくなります。これは経営にとって大打撃となります。
取引先とのトラブル時に証拠がない問題
税金面だけでなく、ビジネス上のリスクも無視できません。
「発注した数と違う」「仕様が違う」「金額が合意と異なる」といったトラブルが起きた際、発注書や注文請書が手元になければ、自社の正当性を主張できません。
とくに「言った・言わない」の争いになりやすい追加発注や仕様変更についても、メールやチャットのログだけでなく、正式な書類として残し、保管しておくことが身を守る術となります。
保管期間経過後の発注書・注文書は捨てていい?正しい廃棄方法

「注文書は捨ててもいいですか?」という質問もよくありますが、保管期間を過ぎた書類であれば廃棄しても問題ありません。
しかし、ただゴミ箱に捨てるのは危険です。適切な処分の仕方を知っておきましょう。
保管期間を過ぎたら廃棄してOK(ただし確認事項あり)
起算日から数えて7年(または10年)が経過した書類は、法的な保管義務がなくなります。
オフィスのスペースを空けるためにも、定期的に廃棄することをおすすめします。
ただし、廃棄する前に「係争中の案件に関する書類ではないか」「PL法(製造物責任法)など、ほかの観点で長期保存が必要な製品ではないか」を一度確認しましょう。
紙の発注書の廃棄方法(シュレッダー・溶解処理)
発注書には、取引先担当者の氏名・金額・取引内容などの機密情報が含まれています。
そのまま古紙回収に出すのは情報漏洩のリスクが高くNGです。
| 処分方法 | 内容 |
|---|---|
| シュレッダーにかける | 量が少ない場合。 |
| 溶解処理サービスを利用する | 量が多い場合。段ボールごと専門業者に送り、溶かしてもらう方法です。開封されずに処理されるためセキュリティが高く、証明書も発行されるため安心です。 |
電子データの削除時の注意点
電子データの場合、単にパソコンのゴミ箱に入れるだけでなく、「完全に削除」する必要があります。
また、バックアップデータが残っていないかも確認しましょう。
クラウドサービスを利用している場合は、解約後のデータ保持期間なども確認しておく必要があります。
廃棄記録を残すべき理由
廃棄する際は、「20XX年度分の書類を、20XX年X月X日に廃棄した」という記録(廃棄リスト)を残しておくことをおすすめします。
後日、社内で「あの書類がない!」と騒ぎになった際、適正に廃棄されたものなのか、紛失したのかを区別するためです。
発注書・注文書の保管に関するよくある質問(FAQ)

最後に、日々の業務で迷いやすい発注書・注文書の保管に関するポイントをQ&A形式で解説します。
発注書と注文書に違いはある?
実務上は同じ意味で使われることがほとんどです。
一般的に「発注書」も「注文書」も、商品やサービスの購入を依頼する書類を指します。法律上も明確な区別はなく、どちらも「証憑書類」として扱われます。
自社で呼び方を統一しておけば問題ありません。
発注書と注文書の違いについては、発注書とは?注文書との違いや正しい書き方、発行タイミングを実務視点で解説でも詳しく解説しています。ぜひ、あわせてご覧ください。
クラウドサービスで保管しても問題ない?
問題ありません。むしろ推奨されます。
電子帳簿保存法の「真実性の確保」や「可視性の確保」といった要件を満たしているクラウドサービスであれば、安心して保管できます。
サービス選定の際は、「JIIMA認証(法的要件を満たしていることを認証するもの)」を取得しているソフトを選ぶと安心です。
電子と紙が混在している場合はどうすればいい?
原則はそれぞれの方法で保管ですが、一元管理も可能です。
紙で届いたものは紙で、電子で届いたものは電子で保管するのが基本ルールです。
しかし、管理が煩雑になるため、紙の書類をスキャン(スキャナ保存)し、すべての書類を電子データとして一元管理する企業が増えています。
参照:国税庁「電子帳簿保存法の内容が改正されました~令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要~」
保管期間中に会社が変わった場合はどうなる?
合併などの場合、保管義務は引き継がれます。
会社が合併した場合、消滅した会社の権利義務は新会社や存続会社に包括的に引き継がれます。
したがって、過去の発注書や注文書などの書類も、新しい会社が引き継いで残りの期間保管する必要があります。
※事業譲渡の場合も、契約により事業に関連する書類が引き継がれることが一般的であり、その場合は同様に保管が必要です。
参照:e-Gov 法令検索「法人税法施行規則 第二十六条の三」
記事のまとめ:発注書・注文書は保管期間と方法を正しく理解して管理しよう
発注書や注文書は、単なる事務的な書類ではなく、会社の取引と信頼を証明する重要な資産です。
基本的には「法人も個人も7年間保管」と覚えておき、電子取引データに関しては「データのまま保存」することが現代のルールです。
これらを適切に管理することは、税務リスクを回避するだけでなく、過去の取引履歴を分析して経営に活かすことにもつながります。
「まだ紙で保存していてキャビネットが溢れている」「電子保存のルールが守れているか不安だ」という方は、この機会に社内の文書管理ルールを見直してみてはいかがでしょうか。
まずは、現在保管している書類の「起算日」を確認し、廃棄できるものがないか整理するところから始めてみましょう。
発注書などの書類の保存期間については、各法令に横断的に定められています。発注書に絞れば所得税法、法人税法などの税金関係で7年間(例外的に10年間)、建設業法で5年間から10年間、取適法で2年間などの定めがあります。発注書以外の帳簿やその他の書類に関して言えば、会社法では10年間、労働基準法では5年間(経過措置の間は3年間)などの定めがあります。
また、保存期間の起算点についても、各法令によって異なっています。各法令を見ても10年間を超える保存期間の定めはまずありませんので、10年を目安にしておけば安全と言えますが、保管スペースの関係もあってすべての書類を10年以上保管するというのは難しいかもしれません。その場合には、書類の種類に応じて根拠法令を確認し、二つ以上の法令に異なる保存期間の定めがある場合には長い期間のほうを遵守するようにしましょう。
電子保存を行うことで、省スペースを図ることができ、保管期間の管理も行いやすくなります。また、今後の社会の流れとしては電子化を含めたDX化がこれからますます進んでいくものと思われますので、この点からも電子保存で対応できるようにしていくことが良いと考えます。
本記事は、作成時点の法令、ガイドライン、および公的機関の情報に基づいて作成されています。内容の正確性には万全を期しておりますが、法改正や制度変更等により、最新の情報と異なる場合があります。
また、本コンテンツは一般的な情報の提供を目的としており、法律的、税務的その他の具体的なアドバイスをするものではありません。個別具体的な事案については、必ず弁護士、税理士等の専門家にご相談ください。
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