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2024年1月に「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(略称:電子帳簿保存法)」の猶予期間が終了し、すべての事業者において電子取引データの保存が完全義務化されました。
これまでは紙での保存が慣習として認められていた部分も厳格化され、「発注書や注文書は紙で保存してはいけないのか」「メールで受け取ったPDFはどうすればいいのか」と、対応に迷われている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、物品の購入だけでなく、IT系や建築系などの協力会社へ業務委託する際の発注も含め、初心者の方にもわかりやすく発注書の保存方法を解説します。
2008年に弁護士登録し、大阪市内の法律事務所に勤務したのち、2021年に独立開業しました。契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
【目次】
【結論】発注書の保存方法は「受け取り方」で決まる

電子帳簿保存法への対応で最も重要なポイントは、その発注書をどのように受け取った、または送ったかという一点に尽きます。
書類に書かれている内容ではなく、受け渡しの経路によって保存ルールが決まるのです。
まずは以下の判断フローチャートで、自社の発注書がどの保存方法に該当するかを確認しましょう。
| 【保存方法フローチャート】 Q1. 発注書をどのような形式で受け取りましたか? A. 電子データ(メール、Webダウンロード、クラウドサービス、EDIなど) →電子取引として電子データのまま保存することが義務です。紙に出力して原本とすることはできません。 B. 紙(郵送、手渡し、FAXなど) →紙保存またはスキャナ保存のいずれかを選択できます。 |
電子データで受け取った発注書→電子保存が「義務」
メールの添付ファイル(PDFなど)や、Webサイト(ネットショッピングサイトなど)からダウンロードした発注書・領収書、さらにはチャットツールで送られてきた注文情報は、すべて電子取引に該当します。
これらは、データのまま保存しなければなりません。
以前は「印刷して紙でファイリングしているから大丈夫」という運用が特例で認められていましたが、2024年1月以降は原則として認められていません。
必ず電子データの状態で、後述する保存要件を満たして管理する必要があります。
紙で受け取った発注書→紙保存 or スキャナ保存を「選択」
一方、取引先から郵送で届いた発注書や、手渡しされた注文請書などの紙の書類については、以下の2パターンの中から選ぶことができます。
- 紙のまま保存する:従来どおりの方法です。ファイリングしてキャビネットや倉庫などで管理します。
- スキャンして電子データとして保存する:一定の要件(スキャナ保存制度)を満たせば、紙原本を破棄してデータのみで管理できます。
発注書・注文書の保存義務に関する法的根拠
結論から申し上げますと、発注書や注文書には法律上の保存義務があります。
たとえ商習慣上で発注書という名称を使わず、メール本文のみで発注のやり取りをしている場合でも、それが取引の証拠となる限り保存が必要です。
発注書は「取引に関して作成・受領した書類」として保存義務あり
ビジネスにおいてお金やモノ、サービスが動くとき、その証拠となる書類を証憑(しょうひょう)書類と呼びます。
請求書や領収書が代表的ですが、発注書(注文書)や見積書、契約書もこれに含まれます。
とくに発注書は、いつ・誰に・何を・いくらで注文したか、あるいは注文を受けたかを証明する重要な書類です。
後々のトラブル防止、たとえば「言った・言わない」の水掛け論などを防ぐ観点からも、また税務調査において取引の事実関係を確認するためにも、適切に保存されていなければなりません。
税務上の証憑書類と完全に同じというわけではありませんが、発注書は契約内容を証明するものとして、法律上も非常に重要です。特に契約書が作成されていない取引や、契約書に明確に定められていない契約内容について、どのような契約が成立したかを立証するための資料、証拠として、発注書の内容が重要となることがあります。
法律上の証拠として価値があるという点からも、発注書はしっかりと保存するようにしましょう。
保存義務の法的根拠(法人税法・所得税法)
保存義務は、税法によって定められています。
| 法人の場合 | 法人税法施行規則により、取引に関して作成または受領した書類の保存が義務付けられています。 |
|---|---|
| 個人事業主の場合 | 所得税法および青色申告決算に関連する規定により、同様に保存義務があります。 |
これらに違反して書類を保存していない場合、経費として認められなかったり、最悪の場合は青色申告の承認が取り消されたりするリスクがあります。
取適法(従来の下請法)の適用のある取引には、発注書は取適法で定める契約内容を明示する書面(いわゆる4条書面)に該当することがあり、その場合には同法で2年間の保存期間が定められています。
このように同じ書類(発注書)であっても、法人税法では7年間、取適法では2年間と異なる保存期間が設けられていることがあります。その場合には、両方の法律が適用されますので、長いほうの期間を遵守するようにしましょう。
参考:国税庁「電子帳簿保存法の内容が改正されました~令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要~」
電子帳簿保存法とは|発注書に関係する3つの保存区分

電子帳簿保存法は、国税関係帳簿書類を電子データで保存することを認める、あるいは義務付ける法律です。
この法律は大きく3つの区分に分かれており、発注書の取り扱いはそれぞれ異なります。
まずはその全体像を把握しましょう。
電子帳簿保存法の概要と2024年改正のポイント
1998年に施行された電子帳簿保存法ですが、何度かの改正を経て、2022年(令和4年)の改正で要件が大幅に緩和される一方で、電子取引データの電子保存が義務化されました。
2年間の猶予期間を経て、2024年1月からはすべての事業者(個人事業主を含む)に対し、電子取引データの電子保存が強制適用となっています。
参考:国税庁「電子帳簿保存法の内容が改正されました~令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要~」
発注書に関係する保存区分①「電子取引」
もっとも重要な区分です。以下のようなやり取りで使用された発注情報が、電子帳簿保存法内の「電子取引」に該当します。
- メール
- Web
- クラウド
- EDI
- FAX(複合機でデータ受領する場合) など
これは希望すれば電子保存できるというものではなく、電子保存しなければならない区分です。
発注書に関係する保存区分②「スキャナ保存」
「スキャナ保存」は、紙で受け取った発注書を、スキャナやスマートフォンで撮影して電子化し、保存する区分です。
これは希望者が行える(任意)区分です。
紙のまま保存しても問題ありませんが、ペーパーレス化を推進したい企業はこの制度を利用します。
発注書に関係する保存区分③「電子帳簿等保存」との違い
会計ソフトなどで作成する仕訳帳や総勘定元帳などの帳簿そのものに関する区分です。
発注書や注文書は書類にあたるため、直接的にはこの区分ではなく、上記の電子取引かスキャナ保存のルールを確認することになります。
ただし、販売管理システムなどで発注データ(控え)を作成・保存する場合は、この区分の要件が関係することもあります。
参考:国税庁「電子帳簿保存法の内容が改正されました~令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要~」
【パターン別】発注書・注文書の正しい保存方法

ここでは、具体的な業務シーンに合わせて、発注書・注文書の保存方法を解説します。
物理的な商品を仕入れる場合だけでなく、システム開発やデザイン制作、工事などを協力会社へ発注する場合も同様なので、ぜひ参考にしてみてください。
パターン①:メール・クラウドで受け取った発注書(電子取引)
取引先からメールに添付されたPDFの発注書や、専用の受発注システム(Web)からダウンロードした注文データがこれにあたります。
| 保存方法 | データのまま保存(HDD、クラウドストレージなど)。 |
|---|---|
| 注意点 | 印刷して紙で保存するだけではNGです。必ず改ざん防止措置と検索機能の確保を行ってデータを残してください。 |
パターン②:メール・クラウドで発行した発注書の控え
自社が発注側となり、Excel(エクセル)やWord(ワード)で作成した発注書をPDF化してメールで送った場合、その送信したデータの控えも保存が必要です。
| 保存方法 | 送信したPDFファイル、または送信履歴が残るシステムのデータを保存。 |
|---|---|
| 注意点 | 作成元のExcel(エクセル)ファイルだけでなく、実際に送付した確定版(PDFなど)を保存するのが望ましいです。 |
パターン③:紙で受け取った発注書
郵送やFAX(紙出力)で届いた発注書です。
| 保存方法A(紙保存) | 受け取った原本をファイルに綴じて保存。 |
|---|---|
| 保存方法B(スキャナ保存) | スキャンまたはスマホ撮影し、要件を満たしてデータ保存。その後、紙原本は破棄可能(要件を満たすか確認後)。 |
パターン④:紙で発行した発注書の控え
自社で印刷して郵送した発注書の控えです。
| 保存方法A(紙保存) | 印刷した控えを紙で保存。 |
|---|---|
| 保存方法B(スキャナ保存) | 控えをスキャンしてデータ保存。 |
| 保存方法C(電子作成データの保存) | 作成に使用したPC内のデータ(控え)を、電子帳簿保存法の要件に合わせて保存することも認められています。 |
【受注側向け】受注データ・受注した注文書の保存方法
仕事を受ける側(中小受託事業者)はとくに「電子帳簿保存法で受注データはどのように保存するのでしょうか?」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
受注側にとって、クライアントから送られてくる注文書は売上の根拠となる非常に重要な書類です。
| メールやチャットなどで受信した場合 | 電子取引として、そのメッセージや添付ファイルを保存します。 |
|---|---|
| Webシステムで受注した場合 | Webシステムの管理画面上の受注データも、画面キャプチャやCSV/PDFダウンロードを行い、保存要件を満たす形で保管してください。 |
ITフリーランスや建設業の一人親方などが、元請けからメールで発注書を受け取った場合も、例外なく電子保存の義務が発生します。
【早見表】発注側・受注側別の保存方法まとめ
発注書や注文書の保存方法は、電子で受け取ったか、紙で受け取ったか、によって大きく異なります。
以下の早見表で、ご自身のケースに当てはまる保存方法を確認してみてください。
| ケース | 具体例 | 該当する区分 | 保存方法 |
|---|---|---|---|
| 電子で受領 | メール添付、Web DL、クラウド | 電子取引 | 電子保存(義務) |
| 紙で受領 | 郵送、手渡し、FAX(紙) | スキャナ保存 | 紙のまま or スキャン保存 |
| 電子で発行 | メール送信、システム送信 | 電子取引 | 送信データの控えを電子保存(義務) |
| 紙で発行 | 郵送、FAX送信 | スキャナ保存 | 控えを紙保存 or スキャン保存 |
ポイントは、電子データでやり取りしたデータは「電子保存が義務」であるという点です。
一方、紙で受領・発行した書類については、紙のまま保存するか、スキャンして電子保存するかを選択できます。
自社の業務フローに合わせて、適切な保存方法を選びましょう。
契約書は作成せずに発注書のみで契約成立とするなど、発注書が契約の成立を証するものを兼ねる場合、もし発注書を紙媒体で作成すると、課税文書に当たるとして印紙税法に基づいて印紙を貼付しなければならないケースがあります。印紙の貼付漏れが発覚した場合には過怠税が課されるリスクもあります。
ただし、印紙は紙媒体の書類のみが課税対象ですので、電子データで作成・送付・保存した場合には印紙は不要です。
こうした点から見ても、電子取引を行うメリットがあると言えます。
電子取引データ保存の要件【2024年義務化対応最新版】

電子データをただ保存すればいいわけではありません。
後から税務職員が確認できるように、またデータの改ざんを防ぐために、以下の要件を守る必要があります。
電子取引データ保存の対象となる書類の範囲
「電帳法で注文書に金額が書いていなくても保存しないといけないのですか?」といった疑問点を抱える方もいらっしゃるでしょう。
たとえば、基本契約に基づく発注で、単価が別途定められているため数量しか記載されていない注文書などのケースはどうでしょうか。
結論は、金額の記載がなくても保存が必要です。
電子帳簿保存法における保存対象は取引情報であり、これには「取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類」が含まれます。
金額が未定であっても、取引の事実を証明する書類であれば保存の対象となります。
参考:e-Gov 法令検索「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」
電子取引データ保存の要件
電子帳簿保存法では、電子データでの保存時に、真実性や可視性を担保するための以下の3つの要件を満たす必要があります。
- 電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備付け
- 見読可能装置の備付け等
- 検索機能の確保
以上3つの要件に加え、さらに次の4つの措置のうち、いずれか1つを行わなくてはなりません。
| 一 タイムスタンプが付された後の授受 二 授受後遅滞なくタイムスタンプを付す 三 データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用 四 訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付け |
これらの要件を満たすことで、国税庁から罰則を受けずに済むだけでなく、結果的に自社の電子データに統一性が生まれ、生産性も向上するのです。
ただし、中小企業向けに、「相当の理由」による猶予措置が設けられていることも忘れてはいけません。
システム対応が間に合わないなどの「相当の理由」があり、かつ税務調査の際にデータのダウンロード要求およびプリントアウトした書面の提示に応じることができる場合は、改ざん防止措置や検索要件を満たしていなくても、単にデータを保存しておくだけでよいという猶予措置があります。
このような猶予措置も上手く活用しながら、電子データの保存をスムーズに行えるようにしましょう。
スキャナ保存の要件【紙の発注書を電子化する場合】

ここでは、紙で届いた発注書をスキャンして保存する場合(スキャナ保存)のルール(要件)について解説します。
スキャナ保存では、紙をただ写真に撮ればいいわけではありません。
スキャナ保存の要件が定められており、たとえば以下のようなポイントに気を付けてスキャナしなくてはなりません。
解像度・階調の要件
- 解像度:200dpi以上
- 色調:カラー画像による読み取りができること(資金や物の流れに直結しない書類はグレースケール画像でも可)
タイムスタンプの要件
スキャン後、速やかにタイムスタンプを付与する必要があります。
入力期間の制限
書類を受け取ってから、いつまでも放置してよいわけではありません。以下のように、各入力方式によって入力期間が異なります。
| 入力方式 | 内容 |
|---|---|
| 早期入力方式 | 国税関係書類に係る記録事項の入力をその受領等後、速やか(おおむね7営業日以内)に行うこと |
| 適時入力方式 | 国税関係書類に係る記録事項の入力をその業務の処理に係る通常の期間(最長2か月以内)を経過した後、速やか(おおむね7営業日以内)に行うこと ※国税関係書類の受領等から入力までの各事項の処理に関する規程を定めている場合に限る |
| 適時入力方式 | 適時に入力 |
参考:国税庁「はじめませんか、書類のスキャナ保存!(令和3年11月)」
このように、スキャナ保存には解像度やタイムスタンプ、入力期間といった複数の要件が定められています。
とくに入力期間については、早期入力方式であれば受領後おおむね7営業日以内、適時入力方式でも最長で約2か月と7営業日以内にスキャンを完了させる必要があります。
「後でまとめてスキャンしよう」と放置してしまうと、要件を満たせなくなる可能性があるため、書類を受け取ったら早めに処理する習慣をつけておくことが大切です。
スマートフォンでの撮影も可能
ちなみに、スキャナだけでなく、スマートフォンやデジカメでの撮影も認められています。外出先で受領した発注請書などをその場で撮影し、経理へ送るといったフローも可能になっていますので、書類の量や効率性を鑑みて検討してみると良いでしょう。
参考:国税庁「はじめませんか、書類のスキャナ保存(令和5年7月)」
スキャナ保存のメリット・デメリット
スキャナ保存の要件がわかったところで、メリットとデメリットについて考えてみましょう。
メリットとデメリットのバランスを考えて、自社にとって適切な保存方法かどうかを確認してみることをおすすめします。
| メリット | 保管スペースの削減、検索性の向上、テレワーク対応(自宅から書類が見られる)。 |
|---|---|
| デメリット | スキャン作業の手間、一定の解像度チェックなどの事務負担。 |
スキャナ保存は、書類の物理的な保管場所を大幅に減らせる点が最大の魅力です。
また、データ化することで必要な書類をすぐに検索・閲覧できるようになり、業務効率の向上にもつながります。
一方で、スキャン作業や解像度の確認といった事務負担が発生するため、書類の量や業務フローを今一度シミュレーションしてみるのもおすすめです。
また書類が少ない場合は、紙のまま保存する方が手間がかからないケースもあります。
発注書の保存期間について詳しく解説

発注書の保存期間は、会社の規模や個人・法人によって異なります。基本的には7年間と覚えておけば安心ですが、詳細を確認しましょう。
法人の場合:原則7年(最大10年)
法人税法により、発注書を含む帳簿書類は7年間の保存が必要です。
ただし、青色申告書を提出した事業年度で欠損金(赤字)が生じた場合、その赤字を将来の黒字と相殺(繰越控除)できる期間に合わせて、10年間の保存が必要となる場合があります。
仕訳帳や総勘定元帳などの会社法上の会計帳簿に該当する書類は、会社法で10年間保存することが定められています(会社法432条)。なお、発注書は会計帳簿には該当しません。
そのため、帳簿書類については、法人税法で7年、会社法で10年の保存期間の定めがあることになり、この場合には長いほうの会社法に則って10年間は保存するようにしましょう。
どの書類が会社法上の会計帳簿に当たるか判断がつかない場合には、税理士や弁護士などの専門家にお尋ねください。
個人事業主の場合:原則5年(課税事業者は7年)
| 申告区分・事業者区分 | 保存期間 |
|---|---|
| 白色申告 | 5年間 |
| 青色申告 | 原則5年間(ただし、前々年の所得が300万円以下の場合は5年だが、請求書・見積書・発注書などは5年で良いとされる規定があるものの、帳簿自体は7年。実務上は7年保存が推奨されます) |
| 消費税の課税事業者(インボイス登録事業者など) | 消費税法により7年間の保存が必要です。 |
保存期間の起算日はいつから?
発注書の日付から7年ではありません。
その事業年度の確定申告期限の翌日から起算して7年間です。
書類の日付よりも長く保管する必要があるため、余裕を持って「決算期末からプラス8年程度」保管しておくと安全です。
発注書と少しずれますが、各書類の保存期間の起算点について、本稿では税金の課税リスクの観点から、起算日を「その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日」として解説されていますが、厳密には各法律によって起算点が異なります。
例えば、会社法の会計帳簿は「閉鎖の時から10年間(同法432条)」、計算書類については「作成したときから10年間(同法435条)」、労働基準法(施行規則)では、「労働者名簿については、労働者の死亡、退職又は解雇の日」、「賃金台帳については、最後の記入をした日」から各5年間(経過措置の間は3年間)とされています。
各書類の保存期間を確認する際には起算点も併せて確認するようにしてください。
電子帳簿保存法を守らなかった場合の罰則・リスク

「面倒だから、電子帳簿保存法に対応しなくてもバレないだろう」と考えるのは危険です。違反した場合、以下のようなリスクがあります。
青色申告の承認取消
もっとも重いペナルティの一つです。
国税庁のQ&Aでは、最低限の要件(規則第2条第2項)を満たしていれば「保存義務違反による青色申告の承認の取消し等の対象にはなりません」と解説されています。
しかし裏を返せば、要件を満たさず、適切な保存が行われていない場合は、青色申告の承認取消しの対象となり得ることを示しています。
参考:国税庁「電子帳簿保存法の内容が改正されました~令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要~」
税務調査での不利益
税務調査において、必要な発注書が検索・提示できない場合、経費の実在性を証明できず、経費計上を否認される(=税金が増える)おそれがあります。
そのため、税務調査の際には、電子取引データの「ダウンロードの求め」や「プリントアウトした書面の提示・提出の求め」に応じることができるようにしておく必要があります。
参考:e-Gov 法令検索「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(第八条)」
発注書の電子保存を始めるための実務ステップ

これから発注書の電子保存を始める方、または対応を見直したい方に向けた、具体的なプランをご紹介します。
ステップ①:現状の発注書の受領・発行方法を棚卸し
まずは社内の業務フローを確認します。
- ECサイトの利用はあるか?
- メール添付でPDFの発注書を受け取っているか?
- 特定運送委託などで専用システムを使っているか?
- 現場で紙の手渡しはあるか?
ステップ②:保存方法・保存場所を決める
専用の文書管理システムを導入するか、汎用クラウドストレージを使うか、あるいは社内サーバーに保存するかを決定します。コストと手間のバランスを考慮しましょう。
ステップ③:ファイル名・フォルダ管理ルールを策定
検索要件を満たすためのルールを決めます。
| 【フォルダ名のルール例】 日付_取引先名_金額.pdf 【フォルダ構成例】 「2025年度」>「発注書」>「月別」 |
ステップ④:事務処理規程を整備する(テンプレートの活用)
システムで改ざん防止ができない場合(ドライブなどに保存する場合)は、国税庁が公開している事務処理規程のサンプルをダウンロードし、自社名を入れて社内規定として定めます。
ステップ⑤:運用開始・定期的な見直し
ルールを決めたらスタッフに周知し、運用を開始します。
半年に一度など、ルールどおりに保存されているかチェックする機会を設けましょう。
発注書の電子保存に関するよくある質問(FAQ)

ここでは、発注書の電子保存に関するよくある質問にお答えします。
発注書と注文書は同じ扱い?
はい、同じ扱いです。
企業によって呼び方が異なりますが(発注書、注文書、オーダーシートなど)、取引の内容を証明する書類であれば、名称に関わらず電子帳簿保存法の対象となります。
発注書・注文書の「控え」は保存が必要?
はい、発行した側(発注側)も控えの保存が必要です。
法人税法上、取引の相手方から受け取った書類だけでなく、自己が作成して取引の相手方に交付した書類の写し(控え)も保存義務の対象となっています。
電子メールで送信した場合も同様で、送信済みメールや添付したファイルを自社発行の控えとして保存しなければなりません。
取引先ごとに紙と電子が混在している場合は?
取引先A社はメール、B社は郵送、というケースはよくあります。
この場合、A社の分は電子保存、B社の分は紙保存(またはスキャナ保存)と、保存方法が混在することになります。
管理が煩雑になるため、可能であればどちらかに統一するよう取引先に相談する、あるいはすべての紙をスキャナ保存して全件データ管理に一本化することをおすすめします。
過去の紙の発注書も電子化しないといけない?
いいえ、義務化されたのは2024年1月以降の電子取引データです。
過去に紙で受け取って保存している分まで遡って電子化する必要はありません。
もし、過去の紙の発注書(スキャナ保存を開始する日より前に作成・受領した重要書類)を電子化して保存しようとする場合は、あらかじめ税務署に届出書を提出する必要があります。
参考:国税庁「はじめませんか、書類のスキャナ保存(令和5年7月)」
記事のまとめ:電子帳簿保存法を守りながら正しく保存しましょう
2024年1月の電子帳簿保存法・完全義務化により、発注書・注文書の保存は、以前よりも厳格な管理が求められるようになりました。
とくにメールやWebで受け取ったものは、紙に出力して保存しても原本と認められない(電子データのまま保存必須)ので、電子帳簿保存法の中で最も注意が必要です。まずは、
- 電子か紙か、受け取り方を確認する
- 電子なら、リネームして所定のフォルダへ保存する(またはシステムを使う)
- 事務処理規程を用意する
この3つの基本を押さえれば、法令違反のリスクは回避できます。
ITツールなども活用しながら、無理のない範囲で確実な保存体制を整えていきましょう。
発注書は、税務上の証憑書類として重要というだけではなく、契約内容を証明するための文書という点からも非常に重要なものです。
また、取適法の適用対象の取引である場合には、発注書は取適法の4条書面となり、取適法が定める要件を明示しなければなりません。
発注書はこうした重要な役割を果たす書面であることから、しっかりと保存しなければなりません。法人税法などに則り、少なくとも7年間は保存するようにしましょう。
保存方法としては、管理しやすい電子データの活用がおすすめです。電子データで作成、保存すれば、印紙税の課税リスクを回避できるというメリットもあります。
他方で、電子帳簿保存法が定める要件を満たさない保存形式にしてしまうと、税務調査での不利益などのデメリットもあります。
電子帳簿保存法の内容をしっかりと認識いただき、電子保存を有効活用できるようにしていきましょう。
本記事は、作成時点の法令、ガイドライン、および公的機関の情報に基づいて作成されています。内容の正確性には万全を期しておりますが、法改正や制度変更等により、最新の情報と異なる場合があります。
また、本コンテンツは一般的な情報の提供を目的としており、法律的、税務的その他の具体的なアドバイスをするものではありません。個別具体的な事案については、必ず弁護士、税理士等の専門家にご相談ください。
本記事の情報を利用して行われた判断やアクションによって生じた損害、およびリンク先情報の正確性等について、当社は一切の責任を負いかねます。なお、本記事の記載内容は予告なしに変更することがあります。
この記事を書いた人
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