注意事項
・本記事は公開時点の情報に基づいています。法令・制度変更等により内容が変わる可能性があるため、最新情報は公式サイト等でご確認ください。
・記事内の画像はイメージです。実際の商品・サービスとは異なる場合があります。
商品やサービスを発注する際に必要となる発注書ですが、「どのように書けばよいのか」「何を記載すればトラブルを防げるのか」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
発注書は取引内容を明確にし、後々のトラブルを防ぐために非常に重要な書類です。
この記事では、発注書の基本的な書き方から必須記載項目、下請法対応、作成時の注意点まで、実務で役立つ情報を網羅的に解説します。
初めて発注書を作成する方でも安心して取り組めるよう、わかりやすくご紹介します。
※下請法(下請代金支払遅延等防止法)は、2026年1月1日から取適法(中小受託取引適正化法)に改正・名称変更されます。
2008年に弁護士登録し、大阪市内の法律事務所に勤務したのち、2021年に独立開業しました。契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
【目次】
発注書(注文書)とは

発注書とは、商品の購入やサービスの提供を依頼する際に、発注者が受注者に対して発行する書類のことです。
「この商品を○個、この金額で購入します」「このサービスを○○円で依頼します」といった取引内容を正式に伝えるための重要な証憑書類となります。
発注書は法的には売買契約における「申込み」の意思表示にあたり、受注者がこれを承諾することで契約が成立します。
口頭での約束よりも証拠力が高く、後々のトラブル防止に役立つため、企業間取引(BtoB)では発注書の発行が商習慣として定着しています。
なお、発注書と注文書は呼び方が異なるだけで、同じ書類を指します。
業界や企業の慣習によって呼び方が異なりますが、どちらを使用しても問題ありません。
物理的な商品の購入だけでなく、IT開発の外注や建築工事の依頼、コンサルティングサービスの発注など、形のないサービスの取引においても発注書は広く活用されています。
発注書を適切に作成・管理することで、安心・安全な取引を実現しましょう。
民法では、申込(発注)に対して、承諾(受注)の意思表示があって初めて契約成立となるのが原則です(民法522条)。
ただし、発注によって契約成立となるケースもあります。例えば、継続的取引の場合、基本契約書に「発注から〇日以内に異議がない場合には契約が成立したものとみなす」というような条項を設けていることがあります。この場合には個別契約は発注書の送付のみで契約成立に繋がることになります。
発注書は、契約成立に直結する重要なものであることを認識したうえで作成するようにしましょう。
【発注書の書き方】必須記載項目10点を解説

発注書には以下の10項目を記載する必要があります。
これらの項目を漏れなく記載することで、取引内容が明確になり、後々のトラブルを防ぐことができます。
それぞれの項目について、具体的な記載方法と注意点を詳しく見ていきましょう。
発注書に記載すべき項目は法律上明確に定められているものではありませんので、以下の項目を一つ欠いたからといって、発注が直ちに無効になるというものではありません。
ただ、いつ、誰に、何を(どのような内容を)、いつまでに、などの発注の具体的な内容が分からなければ、どのような契約が成立したのか分からないこととなってしまいます。要素が不明瞭なまま契約を結んでしまうと、後々トラブルに発展しかねません。
トラブルを回避するためには、下記の項目を記載した明確な発注書を作成するようにしましょう。
①発注先(宛先)の正式名称
発注書の宛先には、発注先企業の正式名称を記載します。
略称や通称ではなく、登記簿に記載されている正式な会社名を使用しましょう。
記載例
- 正:株式会社〇〇商事
- 誤:〇〇商事、(株)〇〇商事
また、担当部署や担当者名を記載する場合は、「株式会社〇〇商事 営業部 山田太郎様」のように明記します。
個人事業主に発注する場合は、屋号と代表者名の両方を記載すると丁寧です。
宛名を間違えると、契約の相手方が不明確になり、法的なトラブルの原因となることがあるため注意が必要です。
②発注書の発行日
発注書を作成した日付、または発注先に送付する日付を記載します。
この日付は契約成立日の証拠となるため、正確に記載することが重要です。
記載のポイント
- 西暦または和暦で統一する(社内ルールに従う)
- 実際に発行・送付する日付を記載する
- バックデート(過去の日付)は避ける
発行日が明確でないと、納期の起算日や支払期日の計算が曖昧になってしまいます。
③発注書番号(通し番号)
発注書を管理するために、通し番号(発注書番号)を付与します。
この番号があることで、後から特定の発注書を探しやすくなり、管理が効率的になります。
番号の付け方例
- PO-2025-001(PO=Purchase Order:発注書の略、年、連番)
- 2025120001(年月日+連番)
- A-001(部署記号+連番)
番号の付け方に決まりはありませんが、社内で統一したルールを設けることが大切です。
また、欠番が出ないよう連番で管理すると、発注履歴の確認がしやすくなります。
④発注元(自社)の情報
発注書を発行する自社の情報を記載します。以下の項目を含めることが一般的です。
- 会社名(正式名称)
- 住所
- 電話番号
- 担当部署・担当者名
- メールアドレス(任意)
発注元の情報が明確でないと、発注先から問い合わせが来た際に連絡が取れなかったり、注文請書や請求書の宛先が不明確になったりするため、正確に記載しましょう。
また、インボイス制度に対応するため、適格請求書発行事業者の場合は登録番号も記載しておくと、後の請求書との照合がスムーズになります。
⑤商品・サービス名の明記
発注する商品やサービスの名称を正確に記載します。型番や品番がある場合は必ず併記しましょう。
記載例
- 物品の場合:「コピー用紙 A4 白色 500枚×10冊(品番:CP-A4-500)」
- サービスの場合:「Webサイトリニューアル業務 トップページ+下層5ページ」
商品名が曖昧だと、発注先が異なる商品を納品してしまう可能性があります。
似た商品が複数ある場合は、仕様や規格を詳細に記載することが重要です。
IT開発や建築工事などのサービス発注の場合は、業務内容や成果物を具体的に記載し、認識の齟齬が生じないようにしましょう。
⑥数量
発注する商品やサービスの数量を明確に記載します。単位(個、箱、式、時間など)も必ず明記しましょう。
記載例
- 10個
- 5箱
- 1式
- 20時間
「大量」「たくさん」などの曖昧な表現は避けましょう。
また、サービスの発注の場合、作業時間や工数を明記することで、後からの追加請求トラブルを防ぐことができます。
⑦単価
商品やサービス1つあたりの価格を記載します。税抜価格か税込価格かを明示することが重要です。
記載例
- 単価:1,000円(税抜)
- 単価:1,100円(税込)
単価が明記されていないと、数量変更があった際の金額計算ができません。また、見積書と単価が一致しているか必ず確認しましょう。
⑧金額(商品ごと)
単価×数量で計算した、商品・サービスごとの小計金額を記載します。
記載例
| 商品名 | 数量 | 単価(税抜) | 金額 |
|---|---|---|---|
| コピー用紙 A4 | 10箱 | 1,000円 | 10,000円 |
| ボールペン 黒 | 50本 | 100円 | 5,000円 |
複数の商品やサービスを発注する場合は、それぞれの金額を明記することで、内訳が明確になります。
⑨合計金額・消費税・税込総額
発注する全商品・サービスの合計金額、消費税額、税込総額を記載します。
記載例
小計(税抜):15,000円
消費税(10%):1,500円
合計(税込):16,500円
消費税率は現在10%(軽減税率対象は8%)ですが、将来的に税率が変更される可能性もあるため、税率を明記しておくことが望ましいでしょう。
また、端数処理の方法(切り捨て、切り上げ、四捨五入)も社内で統一しておくとトラブルが減ります。
⑩納期・納品場所・支払条件(備考欄)
取引における重要な条件を備考欄に記載します。
記載すべき内容
- 納期:「2025年12月31日まで」「発注後10営業日以内」など
- 納品場所:「東京本社(住所)」「指定倉庫」など
- 支払条件:「納品後翌月末払い」「納品後30日以内に銀行振込」など
- その他特記事項:検収条件、返品条件、瑕疵担保期間など
これらの条件が不明確だと、「いつまでに納品すればよいのか」「どこに納品すればよいのか」「いつ支払われるのか」といったトラブルの原因になります。
特にサービス発注の場合は、成果物の検収基準や修正回数の上限なども明記しておくと安心です。
【重要】下請法対象取引の発注書に必要な12項目
下請法(下請代金支払遅延等防止法)が適用される取引では、通常の発注書よりも詳細な情報を記載する義務があります。
下請法違反は罰則の対象となるため、該当する取引を行う企業は必ず理解しておく必要があります。
物品の製造加工などや役務(サービス)提供の業務委託をする場合、その相手方事業者がフリーランス(個人事業主など)である場合には、フリーランス保護法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)の適用を受けます。
フリーランス保護法は立場の弱いフリーランスの方を保護するための法律で、下請法をベースにして定められたものです。
フリーランス保護法の適用を受ける場合には、下請法対象取引と同様に書面交付義務を負います。
まずは下請法の内容を認識いただき、フリーランスへの発注の際も同内容の発注書を作成、交付するようにしましょう。
下請法が適用される取引とは
下請法は、取引上の立場が弱い中小受託事業者を保護するための法律です。
以下の条件に該当する取引が対象となります。
資本金による判定
| 委託事業者の資本金 | 中小受託事業者の資本金 | 対象取引 |
|---|---|---|
| 3億円超 | 3億円以下 | 製造委託、修理委託等 |
| 1,000万円超 | 1,000万円以下 | 製造委託、修理委託等 |
| 5,000万円超 | 5,000万円以下 | 情報成果物作成委託、役務提供委託 |
| 1,000万円超 | 1,000万円以下 | 情報成果物作成委託、役務提供委託 |
対象となる取引の種類
- 製造委託:物品の製造や加工を委託
- 修理委託:物品の修理を委託
- 情報成果物作成委託:プログラム作成、デザイン制作、映像制作などを委託
- 役務提供委託:運送、物品の倉庫保管、情報処理などのサービスを委託
IT業界や建設業界では、下請法が適用されるケースが多いため、特に注意が必要です。
下請法で義務付けられる記載事項一覧
下請法第3条では、委託事業者が中小受託事業者に発注する際、以下の12項目を記載した書面を直ちに交付することが義務付けられています。
必須記載事項12項目
- 委託事業者及び中小受託事業者の名称
- 製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
- 中小受託事業者の給付の内容
- 中小受託事業者の給付を受領する期日
- 中小受託事業者の給付を受領する場所
- 中小受託事業者の給付の内容について検査をする場合は、その検査を完了する期日
- 製造委託等代金の額
- 製造委託等代金の支払期日
- 手形を交付する場合は、その手形の金額及び手形の満期
- 一括決済方式で支払う場合は、その金額及び支払期日
- 原材料等を委託事業者から購入させる場合は、その品名、数量、対価、引渡しの期日、決済期日、決済方法
- 中小受託事業者が委託事業者以外の者から原材料等を購入する場合で、委託事業者が品質の指定や取引先の制限をする場合、その内容
通常の発注書に記載する10項目に加えて、検査完了期日や支払方法の詳細などを明記する必要があります。
特に重要なのは、発注書交付のタイミングです。
下請法では「直ちに」書面を交付することが求められており、事後的な書面交付は違反となります。
記載漏れがあった場合のリスクと罰則
下請法に違反した場合、以下のようなリスクや罰則があります。
行政指導・勧告
公正取引委員会または中小企業庁から、違反行為の是正を求める指導や勧告が行われます。
勧告を受けた場合、企業名が公表されるため、社会的信用を大きく損なう可能性があります。
罰則
- 書面交付義務違反:50万円以下の罰金
- 書類の保存義務違反:50万円以下の罰金
- 公正取引委員会の検査拒否等:50万円以下の罰金
民事上のリスク
下請法違反があった場合、中小受託事業者から損害賠償を請求される可能性もあります。また、取引関係の悪化や取引停止につながることもあります。
下請法対象取引を行う企業は、発注書のフォーマットに12項目すべてが含まれているか確認し、記載漏れがないようチェック体制を整えることが重要です。
3つの発注書の作成方法とそれぞれのメリット・デメリット
発注書を作成する方法は大きく分けて3つあります。
それぞれの特徴を理解し、自社の発注頻度、予算、業務フローに合った方法を選びましょう。
作成方法によって業務効率やミスの発生率が大きく変わるため、慎重に検討することが重要です。
①手書きで作成する場合
文房具店や通販で購入できる発注書用紙に、ボールペンで手書きして作成する方法です。
複写式(カーボン紙を挟んだ2枚綴りや3枚綴り)の用紙を使えば、1回の記入で控えを残すことができ、既製品の発注書用紙には必要な項目があらかじめ印刷されているため、項目の記載漏れを防ぎやすいという利点もあります。
| メリット | デメリット |
|---|---|
|
|
おすすめのケース
小規模事業者で発注頻度が月数回程度の場合や、取引先が手書き文書に慣れている場合に適しています。
②Excel(エクセル)・Word(ワード)のテンプレートで作成
Excel(エクセル)やWord(ワード)で作成したテンプレートに必要事項を入力して作成する方法です。
Excel(エクセル)であれば、単価と数量を入力すると金額が自動計算されるよう数式を設定できるため、計算ミスを大幅に減らすことができます。
作成した発注書をPDFに変換してメールで送付すれば、郵送の手間とコストを削減でき、自社の発注書フォーマットを自由にカスタマイズできる点も魅力です。
| メリット | デメリット |
|---|---|
|
|
おすすめのケース
中小企業で発注頻度が月10〜30件程度の場合や、初期コストを抑えたい場合に適しています。
③発注書作成ソフト・システムを活用
クラウド型の発注書作成サービスや会計ソフトの発注書機能を利用する方法です。発注書だけでなく見積書・納品書・請求書まで一元管理できます。
見積書を受け取った後、ワンクリックで発注書に変換できる機能は非常に便利で、発注書を発行すると自動的に仕訳データが生成され、会計ソフトに連携されるため、経理業務の効率化にも大きく貢献します。
| メリット | デメリット |
|---|---|
|
|
おすすめのケース
発注頻度が月30件以上の企業、複数人で発注業務を行う企業、バックオフィス業務の効率化を図りたい企業に最適です。
おすすめ無料テンプレートとダウンロード先
発注書を手軽に作成したい方向けに、Microsoft Office公式テンプレートやbizocean(ビズオーシャン)など、無料でダウンロードできるテンプレートが多数公開されています。
- 注文書(商品注文書・商品売買契約書)- 無料テンプレート公開中 – Microsoft Office
- 「注文書・発注書」の書式テンプレート・フォーマットのダウンロード|bizocean(ビズオーシャン)
テンプレートを選ぶ際は、必須記載項目10点(下請法対象の場合は12項目)がすべて含まれているか、自社の取引内容に合わせてカスタマイズしやすいかを確認しましょう。
発注書作成時に注意すべき7つのポイント

発注書を作成する際、ミスやトラブルを防ぐために押さえておくべきポイントを7つご紹介します。
①見積書の内容と完全に一致させる
発注書は、受け取った見積書の内容を確認した上で発行するのが基本です。見積書と発注書の内容が異なると、後からトラブルになる可能性があります。
確認すべきポイント
- 商品名・サービス名
- 数量
- 単価
- 合計金額
- 納期
- 支払条件
見積書の内容を変更したい場合は、必ず発注前に発注先と協議し、再見積もりを依頼しましょう。勝手に数量や金額を変更して発注書を発行してはいけません。
②しっかりチェックして金額・数量・納期の記載ミスを防ぐ
発注書の記載ミスで最も多いのが、金額・数量・納期の誤りです。
これらのミスは取引先との信頼関係を損ねるだけでなく、納品トラブルや代金支払いの問題に直結するため、確実に防ぐ必要があります。
以下のチェック方法を実践しましょう。
ダブルチェックをする
発注書は必ず複数の目で確認する体制を整えることが重要です。
作成者本人だけでは見落としがちなミスも、別の担当者が確認することで発見できる可能性が高まります。
特に高額な取引や重要な取引先への発注書については、上長の承認を得る仕組みを社内ルールとして定めておきましょう。
承認フローを明確にすることで、責任の所在も明確になり、ミスの抑止力にもなります。
チェックリストを活用する
発注書を発行する前に、以下のチェックリストを活用して確認作業を行いましょう。
チェック項目を可視化することで、確認漏れを防ぐことができます。
- 数量の単位は正しいか(個、箱、式など):「10」だけでなく「10個」「10箱」と単位まで明記されているか
- 単価×数量=金額の計算は正しいか:電卓やExcel(エクセル)で再計算して確認
- 消費税の計算は正しいか:税率(10%または8%)が正しく適用されているか、端数処理は社内ルール通りか
- 納期は実現可能か、発注先と合意しているか:見積書や事前のやり取りで確認した納期と一致しているか
- 発注先の会社名に誤りはないか:正式名称が記載されているか、「株式会社」の位置は正しいか
これらの項目を印刷したチェックシートを用意し、発注書発行前に必ず確認する習慣をつけることをおすすめします。
システムを活用する
手作業でのチェックには限界があります。
発注書作成ソフトやクラウドシステムを導入すれば、単価と数量から金額を自動計算し、消費税も自動で算出してくれるため、計算ミスを根本から防ぐことができます。
また、承認フロー機能を持つシステムであれば、発注書が自動的に上長に回付され、承認されるまで発行できない仕組みを構築できます。
初期投資は必要ですが、ミスによる損失やトラブル対応のコストを考えれば、十分に元が取れる投資と言えるでしょう。
③曖昧な表現を避ける(「〇〇程度」「約〇〇」はNG)
発注書には曖昧な表現を使わず、具体的な数値や期日を明記することが重要です。
NG例とOK例
| NG例 | OK例 |
|---|---|
| 100個程度 | 100個 |
| 約10万円 | 100,000円 |
| 来月中 | 2025年12月31日まで |
| なるべく早く | 発注後5営業日以内 |
| 適宜 | 具体的な指示内容を明記 |
曖昧な表現は、双方の解釈の違いを生み、トラブルの原因となります。
特に納期や数量は、必ず具体的な数字で記載しましょう。
④【インボイス制度対応】適格請求書発行事業者の登録番号を確認する
2023年10月からインボイス制度が開始され、仕入税額控除を受けるためには、発注先が適格請求書発行事業者であることが条件となりました。
発注書作成時の対応
- 発注先が適格請求書発行事業者かどうかを確認する
- 相手方の登録番号(Tから始まる13桁の番号)を把握しておく
- 発注書に登録番号を記載する欄を設けておくと、後の請求書照合がスムーズ
適格請求書発行事業者でない取引先との取引では、仕入税額控除ができないため、実質的な負担が増えます。
新規取引先との契約前には、必ず登録番号の有無を確認しましょう。
⑤収入印紙が必要になるケースでは収入印紙を貼付する
発注書が課税文書に該当する場合、収入印紙を貼付する必要があります。
発注書は、通常は申込みの内容を記載しているにすぎないので、課税文書に該当することはありません。
ただ、「発注書」という表題であっても、その内容が契約の成立を証するものである場合には、取引内容に応じて課税文書に当たる可能性があります。
例えば、基本契約で一方の申込みにより自動的に契約が成立することとなっている場合における申込書(発注書)などや、発注書に「見積書に基づいて注文します」という記載がある場合には、発注書は契約の成立を証するものとして課税文書に該当することになります。
参照:申込書、注文書、依頼書等と表示された文書の取扱い|国税庁
課税対象となるケース
印紙税法上、発注書が「請負に関する契約書」に該当する場合、契約金額に応じた収入印紙の貼付が必要です。
建設工事・製造・修理・物品の加工・広告制作などの請負がこれに該当します。
印紙税額の例
- 1万円未満:非課税
- 1万円以上100万円以下:200円
- 100万円超200万円以下:400円
- 200万円超300万円以下:1,000円
非課税となるケース
- 単なる物品の売買契約(商品の購入)
- 電子データで発行した発注書(電子契約)
電子メールやクラウドシステムで発注書を発行すれば、収入印紙は不要になるため、コスト削減につながります。
⑥電子発行時は電子帳簿保存法対応を確認する
発注書を電子データで発行・保存する場合、電子帳簿保存法に対応する必要があります。
電子取引データ保存の要件(2024年1月以降)
- 改ざん防止措置:タイムスタンプの付与、または訂正削除の履歴が残るシステムの使用
- 検索機能の確保:取引年月日、取引金額、取引先で検索できるようにする
- 見読可能性の確保:パソコン画面やプリンタで明瞭に出力できる状態を保つ
対応方法
- 電子帳簿保存法に対応したクラウドシステムを利用する
- ファイル名に日付・金額・取引先名を含める(例:20251201_100000円_株式会社〇〇.pdf)
- 専用フォルダで整理して保存する
紙で受け取った発注書をスキャンして保存する場合も、電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります。
参考:電子帳簿保存法の概要
⑦発注内容に変更がある時は記録を残す
発注後に内容変更が必要になった場合、口頭やメールだけで済ませず、必ず書面で記録を残しましょう。
変更時の対応方法
- 変更発注書の発行:元の発注書番号に枝番を付ける(例:PO-2025-001-1)
- 変更内容の明記:何がどのように変わったのかを明確に記載
- 変更理由の記録:社内記録として変更理由を残す
変更が多い場合の注意点
頻繁に変更が発生する取引では、基本契約書を締結した上で、個別の発注書を発行する方法も検討しましょう。
変更の記録を残さないと、最終的な取引内容が不明確になり、代金の支払いや納品物の確認でトラブルになる可能性があります。
発注書の送付方法と送付時のマナー
発注書を作成したら、発注先に送付します。発注書を使った取引は、一般的に「見積書の受領 → 発注書の発行・送付 → 注文請書の受領 → 納品・検収 → 請求書の受領 → 代金の支払い」という流れで進みます。
ここでは、発注書の送付方法と送付時に気をつけるべきマナーについて解説します。
メール送付の場合の注意点と文例
近年、発注書をPDFにしてメールで送付するケースが増えています。
迅速で効率的な方法ですが、いくつか注意点があります。
メール送付時の注意点
- 件名に「発注書送付の件」など、内容が分かる件名を付ける
- 本文には発注内容の要点を簡潔に記載する
- PDFファイルにパスワードをかけ、別メールでパスワードを送る(セキュリティ対策)
- 送信前に宛先メールアドレスを再確認する
- 重要な取引では、送信後に電話で確認する
メール文例
件名:発注書送付の件(発注書番号:PO-2025-001)
株式会社〇〇商事
営業部 山田太郎様
いつもお世話になっております。
株式会社△△の鈴木と申します。
先日お見積りいただきました件につきまして、
下記の通り発注させていただきます。
発注書をPDFファイルにて添付いたしますので、
ご確認の上、注文請書をご返送くださいますようお願い申し上げます。
【発注内容】
・発注書番号:PO-2025-001
・商品名:〇〇〇
・合計金額:100,000円(税込)
ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
よろしくお願いいたします。
郵送の場合(メール便は使用不可)
発注書を郵送する場合、信書に該当するため、郵便または信書便で送る必要があります。
郵送時の注意点
- メール便(クロネコメール便、ゆうメールなど)は使用不可
- 普通郵便、簡易書留、レターパックライト・プラスを利用する
- 重要な取引や高額取引は、配達記録が残る簡易書留やレターパックプラスがおすすめ
- 送付状を添えて送ると丁寧
信書に該当する理由
発注書は「特定の受取人に対し、意思を表示し、または事実を通知する文書」に該当するため、信書として扱われます。
メール便で送ると郵便法違反となる可能性があるため注意しましょう。
FAX送付後の原本送付の必要性
急ぎの発注の場合、FAXで発注書を送ることもあります。FAXは迅速ですが、原本の扱いに注意が必要です。
FAX送付時のポイント
- FAX送付後、原本を郵送するか電子データ(PDF)をメールで送るかを確認する
- 重要な取引では、FAX送付後に必ず原本を郵送する
- FAX送信後、送信完了を電話で確認すると確実
原本送付が必要なケース
- 高額な取引
- 下請法対象取引(書面交付義務があるため)
- 取引先から原本の要求がある場合
近年は、FAX送付後にPDFをメールで送る方法が一般的になっています。
発注書送付後の確認フロー
発注書を送付したら、必ず以下の確認を行いましょう。
確認フロー
- 送付完了の確認:メールの送信完了、郵便の投函確認
- 受領確認:発注先に届いたか電話やメールで確認
- 注文請書の受領:通常2〜3営業日以内に受領
- 内容の照合:注文請書の内容が発注書と一致しているか確認
- 納期の再確認:納期に問題がないか確認
注文請書が届かない場合や、内容に相違がある場合は、速やかに発注先に連絡して調整しましょう。トラブルを未然に防ぐために、発注書送付は単なる「送りっぱなし」にせず、しっかりと確認プロセスを踏むことが重要です。
発注書の保管期間と保存方法
発注書は税務上の重要書類であり、法律で定められた期間保管する義務があります。
適切に保管していないと、税務調査で指摘を受けたり、取引トラブル時に証拠として使えなくなったりする可能性があります。
法人の保存期間は原則7年(最長10年のケースも)
法人の場合
法人税法により、発注書は「取引に関して作成または受領した書類」として、原則として7年間の保存が義務付けられています。
ただし、以下のケースでは保存期間が延長されます。
- 欠損金が生じた事業年度:10年間(2018年4月1日以降開始事業年度)
- 帳簿の記載事項に関係がある書類:その帳簿の保存期間に準じる
起算日は、「その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日」からです。
例えば、3月決算の会社が2025年3月期の発注書を保存する場合、2025年5月末が申告期限であれば、2025年6月1日から7年間、つまり2032年5月31日まで保存が必要です。
個人事業主の場合
所得税法により、発注書は7年間の保存が必要です(前々年の所得が300万円以下の場合は5年間)。
起算日は、確定申告の期限(通常3月15日)の翌日からです。
電子保存と紙保存のルール
発注書は紙で保存することも、電子データで保存することも可能です。それぞれのルールを理解しておきましょう。
紙で保存する場合
- 発行した発注書の控え、受領した注文請書を保管
- ファイリングして、事業年度ごとに整理
- 直射日光や湿気を避け、劣化しないよう保管
電子データで保存する場合
- PDFなどの電子ファイルで保存
- バックアップを取り、データ消失に備える
- 電子帳簿保存法の要件を満たす必要がある
紙で受け取った発注書を電子化する場合(スキャナ保存)
- スキャナやスマートフォンで読み取って保存
- 一定の要件(解像度、カラー、タイムスタンプなど)を満たす必要
- 2024年1月以降は要件が緩和され、実務的に対応しやすくなった
電子帳簿保存法に対応した保管方法
2024年1月から、電子取引データ保存の義務化が完全施行されています。
メールやクラウドシステムで受け取った発注書や注文請書は、電子データのまま保存しなければなりません。
電子帳簿保存法の保存要件
- 真実性の確保(改ざん防止)
- タイムスタンプを付与する
- 訂正削除の履歴が残るシステムを使用する
- 訂正削除の防止に関する事務処理規程を定める
- 可視性の確保(検索・閲覧)
- 取引年月日、取引金額、取引先で検索できるようにする
- パソコン画面で明瞭に確認できる
- プリンタで速やかに出力できる
具体的な対応方法
- 電子帳簿保存法対応のクラウドシステムを利用する
- ファイル名に日付・金額・取引先を含める(例:20251201_100000円_株式会社〇〇_発注書.pdf)
- 専用フォルダで年度別・取引先別に整理
電子データを紙で印刷して保存するだけでは要件を満たさないため注意しましょう。
発注書に関するよくあるトラブルと対処法
実務では、発注書に関するトラブルが起こることがあります。代表的なトラブルと対処法を知っておくことで、冷静に対応できます。
発注書なしで発注してしまった場合
急ぎの案件で、つい口頭やメールだけで発注してしまうことがあります。この場合、後からでも発注書を発行することが重要です。
対処法
- 速やかに発注書を作成し、発注先に送付する
- 発注書の発行日は「実際に口頭で発注した日」を記載
- 備考欄に「〇月〇日に口頭にて発注済み、本書面は事後発行」と明記
- 発注先から注文請書を受領し、双方で記録を残す
事後発行でも、契約内容を書面化することで証拠として有効です。
ただし、下請法対象取引の場合、発注と同時に書面を交付しなければ違反となるため、必ず発注と同時に発注書を発行する体制を整えましょう。
発注書と納品内容が異なる場合
納品された商品やサービスが、発注書の内容と異なるケースがあります。
よくある相違
- 商品の型番や仕様が違う
- 数量が多い、または少ない
- 納期に遅れた
- 金額が異なる請求書が届いた
対処法
- 速やかに発注先に連絡:相違内容を具体的に伝える
- 発注書と見積書を確認:どちらの記載が正しいか確認
- 協議して対応を決定:返品・交換・値引き・追加発注などを決める
- 合意内容を書面で記録:メールや変更発注書で記録を残す
特に、自社のミス(発注書の記載誤り)が原因の場合は、誠実に対応することが取引継続のために重要です。
口頭発注後の発注書発行タイミング
「口頭発注後に発注書を発行しても有効か」という質問をよく受けます。
回答
口頭発注後に発注書を発行しても、契約内容を明確にする書面としては有効です。
ただし、以下の点に注意が必要です。
注意点
- 発注書の発行日:実際に口頭で発注した日を記載する
- 発注先との確認:既に作業が開始されている場合、発注書の内容と齟齬がないか確認
- 下請法対象取引:下請法では発注と同時の書面交付が義務付けられているため、事後発行は違反
望ましい対応
口頭で発注した後、できるだけ早く(当日中が理想)発注書を発行・送付しましょう。
継続的に並行して発注している相手との取引の場合、口頭での発注とは別の発注を行ったものとの誤解を招くおそれもありますので、「〇月〇日に口頭でお願いしました件について、改めて発注書を送付します」など、口頭での発注との関係性を明示しておくと良いでしょう。
発注書の紛失時の対応
発注書の控えを紛失してしまった場合、税務調査や社内監査で困ることがあります。
紛失時の対処法
- 発注先に連絡:発注書のコピーや注文請書の控えを依頼
- 社内の他部署に確認:経理部門などが保管している可能性
- メールやシステムの履歴を確認:電子データが残っていないか確認
- 再発行:どうしても見つからない場合、「再発行」として作成し、備考欄に「紛失による再発行」と明記
紛失を防ぐ対策
- 発注書のコピーを複数箇所で保管
- 電子データ化してクラウドに保存
- バックアップを定期的に取る
紙の書類は紛失リスクが高いため、電子化による管理をおすすめします。
【Q&A】発注書・注文書に関するよくある質問
発注書の作成や運用について、実務でよく寄せられる質問にお答えします。
発注書に印鑑(社印)は必要ですか?
法律上、発注書への印鑑の押印は必須ではありません。印鑑がなくても、発注書としての効力は有効です。
ただし、以下の理由から印鑑を押すことが一般的です。
- 商習慣として定着:取引先から印鑑を求められることがある
- 偽造防止:会社印があることで、正式な発注書であることを示せる
- 社内統制:承認者が押印することで、承認プロセスを明確にできる
押印する場合、以下のいずれかを使用します。
- 会社の角印(社印)
- 代表者印(実印)
- 担当者の認印
電子発注書の場合、電子印鑑や電子署名を利用することもできます。取引先との関係や社内ルールに応じて、印鑑の要否を判断しましょう。
口頭発注後に発注書を発行しても有効ですか?
口頭発注後に発注書を発行しても、契約内容を書面化する証拠として有効です。
ただし、以下の点に注意が必要です。
- 発注書の発行日:実際に口頭で発注した日を記載する
- 発注先との確認:既に作業が開始されている場合、発注書の内容と齟齬がないか確認
- 下請法対象取引:下請法では発注と同時の書面交付が義務付けられているため、事後発行は違反
口頭で発注した場合でも、できるだけ早く(当日中が理想)発注書を発行・送付することが望ましいです。
急ぎの場合は、メールで発注書のPDFを送付し、後から正式な書面を郵送する方法もあります。
発注依頼書と発注書はどう使い分ける?
発注依頼書と発注書には明確な法的定義はありませんが、一般的に以下のように使い分けられます。
| 書類 | 用途 | 法的効力 |
|---|---|---|
| 発注依頼書 | 発注の検討段階で、 仮の依頼内容を伝える書類 |
弱い(正式な契約ではない) |
| 発注書 | 正式な発注を行う書類 | 強い(契約の申込みとなる) |
使い分けの例
- 発注依頼書:「このような内容で発注を検討しています。対応可能か教えてください」という段階で使用
- 見積書:発注先が見積書を提出
- 発注書:見積書の内容を確認し、正式に「この内容で発注します」と意思表示
発注依頼書は、正式な発注前の確認段階で使用されるため、発注依頼書を出した後でも、発注をキャンセルすることが比較的容易です。一方、発注書を発行した後のキャンセルは、契約解除となるため、相手方の了承が必要で、場合によってはキャンセル料が発生することもあります。
実務上のアドバイス
正式な取引では、発注依頼書を省略し、見積書を受領後に直接発注書を発行する方がスムーズです。
発注依頼書は、内容が不確定な段階や、相手方の対応可否を確認したい場合に限定して使用するのが良いでしょう。
記事のまとめ:発注書作成を効率化するなら専用ツールの活用を

発注書は、取引内容を明確にし、トラブルを防ぐために非常に重要な書類です。
必須記載項目10点を漏れなく記載し、下請法対象取引の場合は12項目すべてを網羅することが求められます。
作成方法は手書き、Excel(エクセル)・Word(ワード)、専用ソフトの3つがありますが、発注頻度が高い企業やバックオフィス業務の効率化を図りたい企業には、専用ソフトの活用をおすすめします。
クラウド型のシステムを利用すれば、発注書番号の自動採番、見積書からの変換、電子帳簿保存法への対応がスムーズになり、業務効率が大幅に向上します。
適切な発注書の運用で、安心・安全な取引を実現しましょう。
発注書は、その記載内容が契約内容に直接結びつく重要な書類です。発注書の内容が明確でない場合には、後々の法的なトラブルに発展しかねません。また、個数の誤りなど発注内容を誤って発注書に記載してしまっていた場合には自社に不測の損失を負わせることのもなりかねません。
発注書の作成に際しては、宛先、発行日、発注者番号、自社の情報、商品、数量、単価、消費税、納期などを正確に記載するようにしましょう。また、当該取引が下請法やフリーランス保護法の適用を受ける場合には、同各法の要件を満たす発注書を作成して交付する義務があります。
裏を返せば、正確な発注書を作成しておけば、トラブルを回避でき、円滑な事業活動を行うことが可能になります。本稿で挙げられている注意点などを踏まえて適切な発注書を作成するようにしましょう。
本記事は、作成時点の法令、ガイドライン、および公的機関の情報に基づいて作成されています。内容の正確性には万全を期しておりますが、法改正や制度変更等により、最新の情報と異なる場合があります。
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