発注・契約実務

秘密保持契約書と機密保持契約書の違いとは?NDAの必須条項も解説

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ビジネスや業務で初めて「秘密保持契約書」や「機密保持契約書」を扱うことになった際、

「結局、どちらの表記を使えばいいの?」
「NDAとはまた別物?」

と、戸惑う方も多いのではないでしょうか。

本記事では、用語の意味の違いといった基礎知識から、契約書に盛り込むべき必須条項、適切な締結タイミングまでを分かりやすく解説します。

物品の発注はもちろん、ITや協力会社へのサービス委託の場合でも役立つ実践的な内容ですので、ぜひ参考にしてください。

弁護士・南 陽輔のコメント:
秘密保持契約(NDA)は、単なる形式的な書類ではなく、事業者の大切な技術やノウハウ、事業アイデアという資産を守るための命綱です。「機密」と「秘密」に法的な違いはありませんが、契約を結ぶタイミングや条項の定め方を誤ると、万が一の漏洩事故の際に十分な法的保護を受けられなくなるリスクがあります。
本記事では、実務で必須となる基本ルールが分かりやすく整理されています。実務上のトラブルを防ぐためのワンポイント解説も各所に添えられていますので、ぜひ契約締結前のセルフチェックにお役立てください。

【結論】秘密保持契約書と機密保持契約書の法的な違いは無い

結論から言うと、秘密保持契約書と機密保持契約書の法的な違いはありません。また、実務上の違いを心配する必要も全くありません。

ここでは、その理由と関連用語(NDA)について整理します。

法的な違いはなく呼び名が違うだけ

秘密保持契約書と機密保持契約書には、法律上の明確な違いや効果の差がないため、どちらの名称を用いても、契約書としての法的効力はまったく同じです。

企業によって社内の慣習やフォーマットの呼び方が異なるだけであり、取引先から「機密保持契約書」という名称で提示された場合でも、内容が同じであれば「秘密保持契約書」と本質的に変わらないものとして扱って問題ありません。

英語表記の略称「NDA」との関係性は?

ビジネスシーンでは、秘密保持契約書のことを「NDA」と呼ぶことがあります。

NDAとは、秘密保持契約書を英語表記した「Non-Disclosure Agreement」の頭文字を取った略称です。

つまり、「秘密保持契約書」「機密保持契約書」「NDA」の3つは、表現や言語が異なるだけであり、すべて同じものを指しています。

海外企業との取引等では「NDA」と呼ばれることが多いため、同義語として覚えておきましょう。

営業秘密との関連性を解説

法律の観点から自社の情報を守る際、重要になるのが「不正競争防止法」における「営業秘密」という概念です。

法律上の営業秘密として認められるには、次の3つの要件を満たす必要があります。

  • 秘密管理性:秘密として厳重に管理されていること(アクセス制限や「社外秘」表示など)
  • 有用性:事業活動に役立つ技術上または営業上の情報であること
  • 非公知性:公に知られていない情報であること

秘密保持契約を結ぶことは、相手方に「この情報は秘密である」と客観的に認識させるだけでなく、上記の「秘密管理性」を証明・補強する上で非常に重要な役割を果たします。

弁護士・南 陽輔のコメント:
この「営業秘密」というのは、NDAでの実務で最も注意が必要なポイントです。
単にNDAを締結しただけでは、開示した情報がただちに法律上の「営業秘密」として認められるわけではありません。裁判例でも、受領者が「どれが秘密情報か」を客観的に認識できる状態(秘密表示など)になければ、法的な保護を受けられないとされるケースが多いです。
NDA契約を交わすだけで安心せず、渡す資料に「社外秘」「CONFIDENTIAL」と明記したり、口頭で伝えた内容は後からメールで特定・通知したりする「現場の管理運用」があってこそ、最大の法的効力を発揮してくれます。

秘密保持契約(NDA)を結ぶ目的と適切なタイミング

秘密保持契約(NDA)を結ぶ目的と適切なタイミング

秘密保持契約(秘密保持契約書)は、単なる形式的な手続きではなく、大切な自社情報や独自のノウハウを守るための大切な防衛手段です。

契約を結ぶタイミングを見誤ると、情報漏洩や盗用のリスクが高まってしまいます。

なぜ情報を渡す前に契約が必要なのか

一度社外へ漏洩してしまった情報や、競合他社に真似されてしまった技術・ノウハウは、後から取り戻すことが非常に困難です。

事前に秘密保持契約を結んでおくことで、

「開示された情報を第三者に漏らしてはならない」
「決められた用途以外に使ってはならない」

という法的な義務を相手に課すことができます。

これにより、うっかりミスや不正な流用を未然に防ぐ抑制力が働きます。

契約を結ぶ原則のタイミングは「情報開示の前」

秘密保持契約を交わす絶対的な原則は、「秘密となる具体的な情報を相手に渡す前(開示前)」です。

取引が正式に決まった後に契約を結ぶのではなく、検討段階や商談の段階であっても、自社の具体的なデータやノウハウを提示する直前には必ず締結を完了させておく必要があります。

弁護士・南 陽輔のコメント:
NDAについては、基本契約とは別個のNDA契約を交わすケースと、基本契約の中で秘密保持条項を定めて一つの契約で契約するケースのいずれも考えられます。いずれであっても法的な効力に違いはありません。
一般的には、M&A(事業譲渡)のような、基本契約締結前の契約交渉段階で、ある程度の情報提供を伴う契約の場合や、契約後に重要な機密情報を開示することが想定されている契約の場合には、基本契約とは別個の契約としてNDAを結ぶことが多いです。

具体的な取引シーン別のタイミング

取引の内容が「物理的な商品の発注」なのか「協力会社へのサービス発注(IT構築や各種業務委託等)」なのかによって、情報を提示する具体的なシーンやタイミングが異なります。

取引シーン 具体的な開示内容の例 適切な締結タイミング
商談 自社の事業データ、顧客リスト、価格表等 提案書や詳細な資料を提示する直前
業務委託 システムの仕様書、業務マニュアル、設計図等 見積もり作成のために詳細な仕様を渡す直前
共同開発 新製品のアイデア、実験データ、技術ノウハウ等 技術交流や共同検証をスタートする直前

それでは、各取引シーンについて詳しく見ていきましょう。

商談

本格的な取引に入る前の打ち合わせであっても、自社の顧客データや価格設定、具体的な企画案を共有する場合は、商談資料を渡す前に秘密保持契約を結びます。

業務委託

物品の製造委託はもちろん、システム開発やマーケティング支援、建設・施工などのサービス発注(協力会社への委託)では、委託先に見積もりを作成してもらうために詳細な業務情報(仕様書や構成図など)を渡す必要があります。

そのため、この「見積もり・検討段階」で秘密保持契約を結ぶことが重要です。

共同開発

他社とタッグを組んで新しい商品やサービス、技術を開発する場合は、お互いの強みやコア技術を共有することになります。

双方のためにも、プロジェクトのキックオフ前に必ず秘密保持契約の締結を完了させましょう。

秘密保持契約書の作成時に必須となる7大条項

秘密保持契約書の作成時に必須となる7大条項

契約書を作成する場合や、相手から提示された内容をチェック(リーガルチェック)する際には、必ず盛り込むべき必須条項が存在します。

ここでは、特に押さえておきたい7大条項のポイントをわかりやすく解説します。

①秘密情報の定義(何を守る対象にするか)

何が「秘密情報」に該当するのかを具体的に定める条項です。
書面やファイルだけでなく、口頭で伝えた情報や、やり取りの中で知った技術情報・営業データなども含まれるのかを明確にします。

「『秘密』と明示した書面またはデータ」と限定する場合もあるため、自社の運用に合っているか確認が必要です。

弁護士・南 陽輔のコメント:
商談や打ち合わせで、口頭で伝えた情報も秘密保持の対象に含める定め方をしているケースも見られます。しかし、トラブルになった際、何を話したかを後から客観的に証明するのは非常に困難です。そのため実務上の契約書では、「口頭で開示した場合、開示後◯日(通常は14日〜30日程度)以内に書面や電子メールで『秘密情報である旨』を相手に通知して特定しなければ、秘密情報とみなさない」という条件を定めておくという工夫も考えられます。

②除外事由(秘密保持の対象から外れるケース)

開示された情報であっても、秘密保持義務を負わせるのが不適切なケースを「例外」として定める条項です。

一般的に、以下の情報は除外されます。

  • 開示された時点で、すでに公知(世の中に知られている)であった情報
  • 開示された後、自社の責任によらず公知となった情報
  • 開示を受ける前から、すでに自社で知っていた情報
  • 正当な権限を持つ第三者から、秘密保持義務を負わずに合法的に入手した情報

③目的外使用の禁止(決めた目的以外で使わない)

開示された秘密情報を、「何のために使うのか(契約の目的)」を限定し、それ以外の用途で勝手に使うことを禁止する条項です。

たとえば、「〇〇システムの開発検討のため」と定めた場合、取得したノウハウを相手方が自社の別事業に流用することは明確な違反となります。

④有効期間と存続条項(いつまで秘密を守るか)

秘密保持義務が、いつからいつまで続くかを定める条項です。「契約締結日から〇年間」といった形で指定します。

また、契約期間が終了した後も秘密情報を守り続けさせるため、「契約終了後も〇年間は本条項の効力が存続する」という「存続条項」を入れるのが実務上の標準的ルールです。

⑤返還・廃棄(契約が終わったあとのデータの扱い)

取引やプロジェクトが終了した際、渡した資料や試作品、データファイルをどのように処理するかを取り決める条項です。

基本的には「開示者の指示に従い、直ちに返還または確実な方法で廃棄(消去)し、証明書を提出する」といった内容を盛り込みます。

⑥損害賠償と差止請求(ルール違反が起きたときの対応)

万が一、相手が秘密を漏洩させたり不正利用したりした場合に、受けてしまった被害を追及するための条項です。

発生した損害の補償を求める「損害賠償請求」と、これ以上の情報拡散や利用を今すぐ止めさせる「差止請求」の両方を明記しておくことが、強い抑止力につながります。

弁護士・南 陽輔のコメント:
秘密保持義務違反が起きた際、相手に損害賠償を求めることは可能ですが、現実には「漏洩によって自社が具体的にいくらの損害を被ったか」を金銭的に立証するのは極めて難しく、裁判でも請求が認められにくい傾向があります。
そのため、漏洩が発覚した瞬間に「これ以上の拡散や不正使用をただちに止めさせる」ことができる「差止請求権」を契約書に明記しておくことが、自社のノウハウや事業を守る上では実質的に最大の防衛策・抑止力となります。

※損害賠償については、以下の記事でも詳しく解説しております。ぜひあわせてご覧ください。
契約書の損害賠償と遅延損害金(遅滞利率)|押さえるべき基本のポイントをわかりやすく解説

⑦協議事項(想定外のトラブルが起きたときの話合い)

契約書に書かれていない事態が発生した場合や、条文の解釈に疑問が生じた際に、「双方で誠意をもって協議し、解決を図る」旨を定めた規定事項です。

相手から契約書が送られてきた際や、自社で作成する際は、まずこの7つの条項が揃っているかを目印にチェックしてみてください。

最初は難しく感じるかもしれませんが、この基本項目が抜けていないかを確認するだけで、致命的なリスクや抜け漏れを大きく減らすことができるはずです。

不利な条件を防ぐ!契約前に確認したいチェックポイント

不利な条件を防ぐ!契約前に確認したいチェックポイント

相手企業から渡されたテンプレートや提示された契約書をそのまま確認せずに押印してしまうと、自社にとって非常にリスクの高い内容になってしまうことがあります。

特に、以下の2点については必ず確認するようにしましょう。

自社だけが過度なリスクを負う内容になっていないか

契約には、自社だけが秘密保持義務を負う「片務(へんむ)契約」と、お互いに義務を負う「双務(そうむ)契約」があります。

まずは、自社からも情報を渡す可能性があるにもかかわらず、相手方の秘密だけを守る片務契約になっていないか確認してください。

  • 一方的に自社だけがペナルティを背負う形になっていないか
  • 双方で立場が対等になっているか

この2つのポイントが守られるだけでも、気持ちの良い契約に繋がります。

弁護士・南 陽輔のコメント:
相手方から提示された契約書が、相手の秘密だけを守る「片務契約」になっているケースは少なくありません。「今回はこちらから情報を出す予定はない」というものであれば片務契約でも問題ありません。しかし、打ち合わせが進む中で自社の独自の技術・ノウハウを少しでも開示する可能性がある場合は、最初からお互いに義務を負う「双務契約」に修正してもらうよう交渉しましょう。

損害賠償の金額や範囲に適切な上限をつける

損害賠償の条項で、

  • いかなる損害も全額賠償する
  • ○億円の違約金を支払う

といった過大な内容が記載されていないか確認しましょう。

予期せぬ過失によって万が一トラブルが発生した際、会社が倒産するような負担を負うリスクを避けるため、損害賠償の対象を「直接かつ通常の損害に限定する」としたり、「直近の取引金額の上限まで」とするなど、適切な範囲や金額について協議・調整を行う視点が大切です。

秘密保持契約書のひな形(テンプレート)活用と注意点

秘密保持契約書のひな形(テンプレート)活用と注意点

自社で一から契約書を作成するのは大変ですが、公的機関が公開している信頼性の高いひな形(テンプレート)を活用することで、記載漏れのないベースを作成できます。

IPA(情報処理推進機構)などの公的機関が提供するひな形

IT系のシステム構築や協力会社への業務委託を行う場合、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)や中小企業庁などが公表しているモデル契約書やひな形等が非常に参考になります。

これらの公的テンプレートには、条項ごとの意味や作成時の注意点が詳しく解説されているため、全体像を理解しやすい優れた見本となります。

ただし、公的テンプレートであっても、日々内容が更新されていくため、一度使用したものを使い続けないようにしましょう。

ひな形をそのまま使うリスクと修正の必要性

先述した公的機関のひな形は非常に便利ですが、「ダウンロードしたまま自社や取引の実態に合わせず使う」のは危険です。

実際の取引内容(物理的な商品の売買なのか、協力会社へのサービス委託なのか)、情報の開示方法、期間の設定などは案件ごとに異なります。

自社のビジネス実務に合致するよう、必ず不要な部分を削除したり必要な条件を加筆・修正したりしましょう。

最終的なリーガルチェックは弁護士などの専門家へ

ひな形をカスタマイズして契約書を作成した場合や、相手方から提示された契約内容に不安がある場合は、最終的に弁護士や法務専門家への確認(リーガルチェック)を依頼するのが最も安全です。

特に取引金額が大きい案件や、自社のコア技術・ノウハウを開示する重要な取引では、プロの目を入れることで将来のリスクを劇的に減らすことができます。

契約締結後に情報漏洩を防ぐ「社内運用」と「電子化」

契約締結後に情報漏洩を防ぐ「社内運用」と「電子化」

立派な秘密保持契約書を交わしても、現場の管理がずさんであれば情報漏洩事故は防げません。

締結した後の社内運用と効率化についても考えておきましょう。

社内教育や周知徹底でうっかり漏洩事故を防ぐ

情報漏洩の原因で最も多いのは、従業員のうっかりミス(メールの誤送信、置き忘れ、SNSへの書き込みなど)です。

契約を結んだだけで満足せず、現場で実際に情報を扱う従業員に対して、

  • どの情報が秘密にあたるのか
  • どのように管理すべきか
  • 何が情報漏洩にあたるのか など

を、周知・教育・啓蒙活動することが不可欠です。

アクセス制限の設定やパスワード管理など、現場の運用ルールを徹底しましょう。

弁護士・南 陽輔のコメント:
どれだけ万全なNDAを締結したとしても、実際の運用ができていなければまったく奏功しません。そのため、NDAでは契約締結後の情報管理こそが最も大事とも言えます。
情報漏洩が発生した場合には、NDA違反による相手方への補償のみならず、漏洩した情報に個人情報が含まれている場合では個人情報保護委員会への報告と本人への通知など、NDA以外の対応が必要になってしまうケースもあります。

手続きのスピード化と管理を効率化する電子契約(電子化)

紙の契約書の場合、印刷・製本・郵送・押印といった手続きに数日から1週間以上の時間がかかり、商談やプロジェクトの開始が遅れてしまうことがあります。

クラウド型の電子契約を活用すれば、Web上で迅速に締結を完了できるため、スピード感を損なわずに適切なタイミングで契約を交わすことができます。

また、過去に締結した大量の秘密保持契約書を一元管理・検索しやすくなる点も大きなメリットです。

記事のまとめ:契約の基本を押さえて安全でスムーズな取引を進めましょう

記事のまとめ:契約の基本を押さえて安全でスムーズな取引を進めましょう

記事冒頭でも解説した通り、秘密保持契約書と機密保持契約書は法的効力に差がなく、どちらもNDAを指す重要な契約です。

秘密保持に関する契約では、物品の購入だけでなく、協力会社へのシステム開発やサービス委託といった各種取引において、自社の大切な情報資産やノウハウを守る鍵となります。

本記事でご紹介した必須の7大条項や適切な締結タイミングを押さえ、必要に応じて専門家のチェックも取り入れながら、リスクのないビジネス取引を目指しましょう。

弁護士・南 陽輔のコメント:
秘密保持契約(NDA)は、ビジネスを進める上でトラブルを未然に防ぎ、互いの信頼関係を担保するための重要なものです。
形式的なチェックで終わらせず、「情報開示の前に締結できているか」「開示資料に『社外秘』と明記する運用ルールがあるか」といった現場での実践まで見据えて締結しましょう。
自社で作成したテンプレートや相手から提示された契約内容に不安がある場合は、後からの紛争リスクを回避するためにも、ぜひ事前に弁護士などの専門家へご相談ください。

参考:中小企業庁「知的財産取引に関するガイドライン・契約書のひな形について」
参考:経済産業省「営業秘密管理指針」

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この記事を書いた人

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