注意事項
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ビジネスにおいて、発注書や請求書のやり取りは円滑な取引の要です。
そのため、少しでも書類が滞ってしまうと、取引に支障が出るだけでなく、どちらの立場にとっても共通のストレスとなってしまいます。
たとえば、フリーランスや中小受託事業者は「発注書が届かず着手できない」と悩む一方で、クライアント側は「請求書が届かず支払処理が進まない」と悩むなど、関係性にヒビが入ってしまうこともあるでしょう。
本記事では、発注者と受注者の両方の視点に立ち、角を立てずに書類を催促する際のメール術と、具体的な例文をご紹介します。ぜひ最後までご覧ください。
取適法(従来の下請法)やフリーランス新法の適用のある取引では、発注者は、契約金額や支払期日などの契約事項を書面(または電磁的記録)で明示する義務があります。発注書は、その役割を担うものです。対して、請求書は受注者側が発行するものですが、法令による発行義務はありません。
実務上では、発注書・請求書をお互いに当然のものとして発行している場合もありますが、法律上は義務のあるもの、ないものという違いがあります。(ただし、請求書については消費税の仕入税額控除のために必要な場合があります。)
法律上の義務をお互いに意識しておくことで、どこまで求めていいものか判断できるようになり、より円滑なコミュニケーションが図れるようになるでしょう。
【目次】
発注書・請求書の催促メールを送る際の3つの鉄則

催促メールを送る際に最も大切なのは、「相手を責めること」ではありません。
「事務的な確認を完結させること」です。
とくに、Web上でのやり取りが中心となる現代では、メールの書き方次第でその後の信頼関係が左右されることもあります。
相手が「忘れていた」としても、こちらが「丁寧な確認」というスタンスを崩さなければ、相手に恥をかかせたり不快感を与えたりすることなく、スムーズに返信をもらうことが可能です。
まずは、どのような相手や場面でも通用する“3つの鉄則”を解説します。
①自身の失念やお互いの行き違いを前提にする
先方が書類を送っていないことが明らかであっても、「なぜ送ってくれないのですか?」と問い詰めるのは絶対にNGです。
先方に心理的な負担をかけてしまう可能性があるほか、逆上させてしまうリスクもあるからです。
まずは、
- 「すでにご送付いただいている場合はご容赦ください」
- 「こちらの確認漏れであれば申し訳ございません」
といったクッション言葉を添えることを意識しましょう。
このようなクッション言葉で自分側の確認不足の可能性を提示することで、相手の心理的な負担を減らし、スムーズな謝罪と送付を促すことができます。
②件名だけで“内容と期限”を伝える
多忙な担当者は、1日に複数のメールを受け取ります。
そのため、件名を見ただけで「何をすべきか」が伝わらないメールは、後回しにされる可能性が高くなってしまうのです。
【NG例】
件名: お世話になっております【OK例】
件名: 【〇〇プロジェクト請求書のご送付につきまして(期限:〇/〇)】株式会社〇〇 △△(自分の名前)
このように、
- 案件名
- 書類の種類
- 期限(いつまでに返信が欲しいのか)
- 自社名
- 自身の名前
を件名に明記しましょう。
これだけで、メールの全文を読まなくてもある程度内容がわかるため、先方の負担を減らすことができる=対応速度も向上します。
③先方の探す手間をゼロにする
たとえば「以前のメールでお願いした件ですが」と書くだけでは、先方は過去の履歴を遡って探さなければなりません。
先方のミスが明らかだったとしても、この“探す”という手間により、担当者を不快な気持ちにさせてしまうことがあります。
催促メールを送る際は、以下の情報を本文に再度記載するか、ファイルを再添付するなど“思いやりのこもったメール”を作成しましょう。
| 記載すべき具体的な内容 | |
|---|---|
| 対象案件 | 案件名、プロジェクト名、発注番号など |
| 書類の種類 | 発注書、請求書、納品書など |
| 金額・個数 | 税込み合計金額、発注数量など |
| 振込先等 | 請求書催促の場合は、改めて振込先口座情報を記載 |
【例文あり:フリーランスからクライアントへ】発注書の催促
フリーランスや中小受託事業者が、たとえばIT開発やデザイン、コンサルティングなどのサービス提供を行う際、口約束だけで作業を進めるのはとても危険です。
とくに、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス新法)などの観点からも、書面での条件明示は必須といえるでしょう。
しかし、クライアント側が多忙で発行が遅れることは珍しくありません。
ここでは、作業前に角を立てずに発注書の発行を促すための例文をご紹介します。
【例文:発注書の発行を依頼する場合】
件名:【ご確認】〇〇プロジェクト 作業着手に伴う発注書ご送付のお願い △△(自分の名前)
本文:
株式会社〇〇
〇〇様いつも大変お世話になっております。
△△(自分の名前)でございます。先日ご相談いただきました「〇〇プロジェクト」につきまして、
現在、〇月の着手に向けた準備を整えております。本件の事務手続きに関しまして、一点ご相談がございます。
プロジェクトの正式な管理・進行にあたりまして、
もしよろしければ「発注書」を発行いただけますでしょうか。私どもの事務規定により、書類の拝受をもって正式なスケジュール確保とさせていただいております。
お忙しい折、大変恐縮ではございますが、
〇月〇日頃までにお手配をいただけますと、その後の着手が大変スムーズに進みます。もし本メールと行き違いですでにご手配いただいている場合は、何卒ご容赦ください。
〇〇様とお仕事をご一緒できることを楽しみにしております。
引き続き、どうぞよろしくお願い申し上げます。(自分の署名)
相手へ配慮を示しつつスムーズに動いてもらうためには、まず「ご相談」という言葉で切り出すことが有効です。
これにより、一方的な要求ではなく、協力的であるという姿勢を示せます。
また、自分個人の要望ではなく「事務規定」や「社内ルール」などの客観的な基準を理由に添えることで、相手に心理的な圧迫感を与えずに必要性を伝えられます。
さらに、期限内に返信をもらうことが相手側のプロジェクト進行(納期遵守)にどう寄与するかというメリットを明示することも、快い対応を引き出すカギとなるでしょう。
取適法(従来の下請法)やフリーランス新法の適用のある取引では、発注者は、契約金額や支払期日などの契約事項を書面(または電磁的記録)で明示する義務があります。一般的には発注書がその役割を持つ書面とされます。
したがって、受注者側としては、発注書を求めることは正当な権利と言えますので、最初は角を立てずに催促し、必ず発注書を出してもらうようにしましょう。
発注書を出してもらえないまま業務を行ってしまうと、代金額や支払時期があいまいになるなど、トラブルに発展しかねません。
【例文あり:クライアントからフリーランスへ】請求書の催促
委託事業者(発注者)側にとって、請求書が届かないことは会計処理や月次の締め作業が滞る大きな原因になります。
とくに建築業界や製造業など、多くの協力会社と取引がある場合、一社の遅れが全体の決算に影響することもあるでしょう。そうした現場では、受注側が作業に没頭して請求処理を失念しているケースも多いため、まずは「支払いをスムーズに行いたい」という前向きな理由で連絡をするのがコツです。
相手を急かすのではなく、助けるという姿勢がポイントですよ。
【例文:納品後の請求書送付をお願いする場合】
件名:【ご依頼】〇〇案件 請求書ご送付のお願い(〇月お支払い分)株式会社〇〇 △△(自分の名前)
本文:
いつも大変お世話になっております。
株式会社〇〇の△△(自分の名前)でございます。先日は「〇〇案件」にて、素晴らしい〇〇をご納品いただき、誠にありがとうございました。
プロジェクトが一段落し、私共も大変感謝しております。本案件のお支払い手続きにつきまして、一点ご確認をさせていただきたく存じます。
事務処理の都合上、弊社の支払い締め切りが近づいているのですが、その後、請求書のご準備の状況はいかがでしょうか。〇月〇日頃までにご送付をいただけますと、滞りなく〇月末にお支払いのお手続きを進めることができます。
お忙しいところお手数をおかけいたしますが、お手隙の際にご確認いただけますと幸いです。なお、もし弊社指定のフォーマットが必要な場合は、いつでもお気軽にお申し付けください。
引き続き、何卒よろしくお願い申し上げます。
(自分の署名)
催促メールの文面を柔らかく見せるためには、まず、こちらの一方的な要求ではなく現状を尋ねる姿勢を示すことがポイントです。
さらに、早く送ってほしい理由を「こちらの締め切り」ではなく「予定通りにお支払い手続きを完了させるため」と相手のメリットに結びつけることで、配慮の気持ちが伝わります。
最後に、自身の個人的な催促ではなく、「事務処理上の都合」という客観的な背景を添えて、語尾を「~いただけますと幸いです」と結ぶことで、事務的な必要性を保ちつつも圧迫感のない丁寧な印象になるでしょう。
発注書とは異なり、請求書については必ずしも発行すべき法的義務はありません。
取適法やフリーランス新法の適用のある取引においては、発注者側としては、60日以内に代金を支払うべき義務があります。受注者が請求書を出さなかったとしても、60日以内に支払わなければ取適法等に違反することになりかねません。
最初は角が立たないように催促するのは同じですが、発注者としては請求書がなくても支払いを忘れないように意識しておいてください。また、仕入税額控除のために請求書が必要な場合は、その旨を受注者側に説明してみてください。
【例文あり:重要】未入金時の「請求書催促(再催促)」
支払期日を過ぎても入金が確認できない場合、非常に不安を感じますよね。
しかし、だからといって感情的な文面の催促メールを送ることは控えましょう。
システムエラーや振込先の入力ミスなど、単純なトラブルの可能性も考えられるからです。
まずは「ご入金の確認が取れていない」という事実を淡々と、かつ丁寧に伝えることが大切です。
とくに、高額な取引の場合は相手の支払いサイクルを考慮しつつも、確実に回答を求めることを目的にしましょう。
【例文:支払期日を過ぎている場合】
件名:【重要:ご確認】〇月分ご入金状況に関するご確認 △△(自分の名前)
本文:
株式会社〇〇
〇〇様いつも大変お世話になっております。
△△(自分の名前)でございます。〇月〇日に発行いたしました請求書(No.123)につきまして、
誠に恐縮ながら、本日時点でご入金の確認が取れておりません。お忙しいところ大変恐縮ですが、お手隙の際にご入金状況を
ご確認いただけますでしょうか。もし、すでにお振込み手続きをお済ませいただいている場合は、
行き違いでのご連絡となりますこと、深くお詫び申し上げます。念のため、以前お送りいたしました請求書を再添付いたします。
ご不明な点などがございましたら、お気軽にご連絡ください。お手数をおかけいたしますが、ご回答のほど何卒よろしくお願い申し上げます。
(自分の署名)
未入金への催促メールでは、まず相手のミスを決めつけないように、謙虚な姿勢をとることが重要です。
請求番号を具体的に示し、さらに請求書を再添付することで、先方が即座に動ける状況を整えることができます。
最後に、手続き済みの場合を想定した「行き違いへの配慮」を一筆添えることで、信頼関係を損なわずに迅速な回答や対応を引き出すことができます。
契約法理において、支払期日(履行期限)は当然に守らなければならないルールです(民法412条)。取適法やフリーランス新法の適用のある取引では、支払期日を受領から60日以内と設定する義務があります。取適法、フリーランス新法の違反がある場合、公正取引委員会等の行政庁から指導や勧告をしてもらうことも可能です。
発注者側のうっかりミスということもありえますので、まずは丁寧に催促してみて、もしそれでも支払ってくれない場合には、直接の催促のほか、行政庁へ相談することも一つの方法と言えます。
スムーズな取引のために【催促メールを減らす防止策】

催促メールは、送る側も受け取る側もエネルギーを消費するものです。
取引を円滑に進めるためには、事前の仕組みづくりが欠かせません。
とくに、物理的な商品の移動が伴う「特定運送委託」などの契約や、形のないITサービスの発注では、認識のズレが遅延に繋がりやすいです。
これらを未然に防ぐためには、契約段階でのルール決めと、ITツールの有効活用が非常に効果的です。
日頃の業務フローを見直すヒントとして、以下の対策を参考にしてください。
- 契約時にスケジュールを明文化する
「納品後〇日以内に請求書を発行し、翌月末に支払う」といったフローを契約書や発注書に記載します。
あらかじめ発注書の備考欄などに、「請求書は納品後〇営業日までにご発行ください」といった文言を入れておくのも良いかもしれませんね。 - 管理ツールを活用する
クラウド型の請求管理ソフトを利用すれば、未発行や未入金の案件が一覧で確認でき、自動でリマインドを送ることも可能です。 - 連絡手段を複数持っておく
メールだけでなく、チャットツールや電話など、緊急時に連絡がつく手段を確認しておきましょう。
また、具体的な防止策として、すぐに取り入れられる実務的なアイデアを以下の表にまとめました。
| メリット | 備考 | |
|---|---|---|
| リマインド送付 | 締め日の3日前に自動メールを送る | 相手の失念を大幅に減らす |
| フォーマット共有 | Word(ワード)やExcel(エクセル)形式で配布 | 相手の作成ハードルを下げる |
| 電子契約の導入 | 押印の手間を省き、即時発行が可能 | 郵送によるタイムラグを解消 |
これらの対策を導入することで、お互いに「うっかり忘れ」を責め合う必要がなくなります。
とくに電子契約やクラウド管理は、中小受託事業者の事務効率を大幅に向上させ、Web完結のスマートな取引を実現します。
まずは取引先と相談し、双方にとって最も負担の少ないルールを模索してみることが、ストレスのないビジネスパートナーシップを築く第一歩となるでしょう。
記事のまとめ:思いやりのあるスムーズな取引を心がけましょう

ビジネスにおける催促は、決して相手を攻撃する行為ではありません。
むしろ、トラブルを未然に防ぎ、お互いの仕事を完結させるための「必要なコミュニケーション」です。
フリーランス、中小受託事業者、そして委託事業者のどの立場であっても、丁寧かつ事務的なアプローチを徹底することで、相手に不快感を与えずに目的を達成することができます。
今回ご紹介したメール術や例文を参考に、まずは「相手が動きやすい状況」を作ることを意識してみてください。
件名の工夫やクッション言葉、そして時にはITツールの力を借りることで、催促という心理的な重荷は劇的に軽くなります。
お互いにリスペクトを持ち、スムーズなやり取りを続けることで、より強固で信頼できるビジネスパートナーシップを築いていきましょう。
取引相手と良好な関係を築きたいというのは、皆さん同じだと思います。ただ、良好な関係を築くためには、法令(ルール)を守るのが不可欠です。発注書、請求書の発行は日常的に行われているものですが、発行する義務があるかどうかについてはルールがあります。
最初は角が立たないよう柔らかく催促する点は同じですが、更に強く求めるべきかどうかについて、取適法やフリーランス新法などのルールをもとに検討してみてください。
参考:厚生労働省「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」
本記事は、作成時点の法令、ガイドライン、および公的機関の情報に基づいて作成されています。内容の正確性には万全を期しておりますが、法改正や制度変更等により、最新の情報と異なる場合があります。
また、本コンテンツは一般的な情報の提供を目的としており、法律的、税務的その他の具体的なアドバイスをするものではありません。個別具体的な事案については、必ず弁護士、税理士等の専門家にご相談ください。
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