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「発注書はどちらが用意するもの?」とお悩みのあなたへ|発注の基本を解説【取適法対応】


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企業間で取引をおこなう際、「発注書はどちらが用意するもの?」と迷うことはありませんか?

本記事では、発注書は仕事を依頼する側と受ける側のどちらが作成するべきか、という発注の基本ルールから、2026年1月1日施行の取適法(中小受託取引適正化法)に対応した最新の注意点まで、初心者の方にもわかりやすく解説します。

この記事を読めば、発注の仕組みを正しく理解することができるはずです。発注の要点を押さえて、スムーズな取引をはじめましょう。

【結論】発注書は発注者(依頼する側)が用意する

まず結論をお伝えします。発注書は、仕事を依頼する側である「発注者」が用意するのが原則です。

ここでは、なぜ発注者が書類を用意しなければならないのかという基本的な理由と、実際のビジネスの現場で起こりうる対応について詳しく解説します。

弁護士・南 陽輔のコメント:
「発注書は、発注者が用意するもの」というのは、当然のことのようにも思えますが、契約実務では必ずしもそうではない場面もあります。例えば、システム開発の委託など、委託者(発注者)側としては、システムのなんとなくのイメージしかないようなケースでは、受託者側が依頼者の意向をヒアリングして具体的な仕様書を作成していくというようなことが起こります。こうしたケースでは、発注者が詳細な発注書を作成することができず、受注者側で作成した仕様書等が発注書の役割を兼ねることがあります。
ただし、以下の解説で触れられている通り、取適法の適用のある取引では、発注書の交付が義務となりますので、ご注意ください。

発注者が発注書を作成する理由

発注書とは、「この条件で正式に仕事を依頼します」という意思表示をするための書類です。

そのため、仕事を依頼する側(発注者)が作成し、仕事を受ける側(受注者)へ渡すのが正しい流れとなります。

たとえば、オフィスで日常的に使用する消耗品などの物理的な商品を購入する場合だけでなく、自社で利用するシステムの開発や、Webサイトのデザイン制作といった形のないサービスを発注する場合も同様です。

あらかじめ金額や納期、具体的な依頼内容を明記した発注書を発行することで、「言った・言わない」という認識のズレを防ぐことができます。

口頭だけのやり取りでは、後になって、

「見積もりと金額が違う」
「約束した期日が守られていない」

といった深刻なトラブルに発展するリスクがあるため、発注者が責任をもって発注書を発行することが非常に重要です。

受注側がひな形を用意してもOK

発注書は原則として発注者が用意するものですが、実際のビジネスの現場では、受注側が発注書のひな形(フォーマット)を用意するケースもあります

受注側が用意する場合の流れとしては、受注側があらかじめExcel(エクセル)やWord(ワード)で作成した発注書のデータを見積書と一緒に送り、発注者はそこに必要事項を記入して社印を押す、というものになります。

受注側がひな形を用意することには、以下のようなメリットがあります。

  • 発注者の書類作成にかかる手間や時間を省くことができる
  • 受注側の管理システム(受発注システムなど)に合わせた形式でデータを処理できる
  • 記載漏れや認識のズレを防ぎ、スムーズに契約へ移行できる

このように、受注側が用紙やデータを用意すること自体はまったく問題ありません。

ただし、最終的な内容の確認や合意、および押印(または電子署名)をおこなうのは、あくまで発注者であることを覚えておきましょう。

発注の仕組みがわかる【各書類の作成者一覧表】

企業間の取引では、発注書以外にもさまざまな書類がやり取りされます。

全体の発注の仕組みを把握するためにも、見積書から請求書までの一般的な流れと、それぞれの書類の基本的な作成者を一覧表で確認しましょう。

書類名 書類の役割 基本的な作成者
見積書 依頼内容に対する金額や条件を提示するための書類 受注者(仕事を受ける側)
発注書 提示された条件に合意し、正式に依頼するための書類 発注者(仕事を依頼する側)
発注請書 依頼内容を承諾し、確実に引き受けることを示す書類 受注者(仕事を受ける側)
納品書 依頼された商品やサービスを納品したことを証明する書類 受注者(仕事を受ける側)
請求書 納品した商品やサービスの代金を請求するための書類 受注者(仕事を受ける側)

取引は、発注者が「こんな業務をお願いしたい」と相談し、受注者が見積書を提出するところからはじまります。

その見積書の内容に納得した場合、発注者が発注書(注文書と呼ばれることもあります)を発行します。

とくに形のないサービスの取引では、納品のタイミングや検収(納品物が要望通りか確認すること)の基準が曖昧になりやすいため、各工程で適切に書類を残す一連の作業が重要になります。

書類を順番通りに作成して適切な相手に交付し、受け取った側もそれを正しく保管することが大切です

発注書と取適法の関係

発注書と取適法の関係

取引を適正におこなうため、発注書の取り扱いには法律が深く関わっています。

ここで注意したいのが、発注側と受注側のあいだで起こりやすい不公平な取引を防ぐための法律です。

ここでは、2026年1月に施行された取適法を踏まえて、発注書の法的な位置づけについて解説します。

取適法において発注書の作成・交付は義務

資本金などの規模が大きい企業(委託事業者)が、規模の小さい企業やフリーランス(中小受託事業者)に対して業務を委託する場合、法律によって書面の交付が義務づけられています

以前の下請代金支払遅延等防止法(下請法)から拡充された取適法のルールの下でも、発注者は口頭での依頼を避け、必ず具体的な取引条件を記載した書面(または電磁的記録)を交付しなければなりません。

これは、弱い立場になりがちな中小受託事業者を守るための重要なルールです。

取適法の対象となる業務は幅広く、物品の製造や修理だけでなく、プログラムの作成などの情報成果物作成委託、および役務提供委託(サービスの提供)、特定運送委託などが含まれます。

発注者は「書類を作るのが面倒だから」という理由で書面の交付を怠ると、法律違反として指導や勧告の対象となるため、十分にご注意ください。

弁護士・南 陽輔のコメント:
取適法は、中小受託事業者の利益を保護することを目的とする法律です。実務上では、受託者は、何をどこまですれば完成となるのか、報酬をいつ、いくら支払ってもらえるのか、ということが分からないまま、発注者側の言いなりに作業を行わざるを得ないという事例が散見されます。こうした事態を回避するために、従来の下請法のもとで、着手前に作業内容等の契約条件を明記した書面を交付する義務が定められ、この義務が取適法にも引き継がれました。

取適法の対象となる企業の基準は?

先述したような取適法の対象となる業務で、なおかつ発注者と受注者の資本金・従業員数が基準に当てはまっている場合、取適法の対象取引となります。

発注者と受注者の資本金・従業員数について、取適法の対象となるケースは複数ありますが、代表的な基準は以下のとおりです。

対象となる取引の区分 発注側(委託事業者) 受注側(中小受託事業者)
物品の製造・修理・特定運送
および政令で定める情報成果物・役務
※1
資本金 3億円超 資本金 3億円以下(個人を含む)
資本金 1,000万円超 3億円以下 資本金 1,000万円以下(個人を含む)
情報成果物作成・役務提供
(※1の政令指定分を除く)
資本金 5,000万円超 資本金 5,000万円以下(個人を含む)
資本金 1,001万円以上 5,000万円以下 資本金 1,000万円以下(個人を含む)

※1:政令指定分=プログラムの作成、運送、物品の倉庫保管、情報処理を指します。

法律の改正によって従業員数の基準が追加されるなど、これまで対象外だと思っていた企業間取引が新たに対象となるケースもあります。

発注業務をおこなう担当者は、あらかじめ自社と取引先の従業員数や資本金を確認し、自社が法律の対象となるかどうかを正確に把握しておきましょう。

※取適法の対象業務・企業については以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。

取適法の対象取引とは?5種類の取引類型と適用条件をわかりやすく解説
取適法の対象とは?適用基準・対象会社・対象外を解説【2026年1月施行】

弁護士・南 陽輔のコメント:
取適法は、従来の下請法よりも適用対象が広くなっています。取適法の適用の有無は、本文にある通り、資本金要件と従業員要件によって決まります。このうちの従業員要件は、従来の下請法にはなく、取適法で新しく定められたものです。資本金要件を満たさなくても従業員要件が満たされれば取適法が適用されるため、この点で従来の下請法よりも適用範囲が広くなっています。また、業種としては特定運送委託が追加されています。
したがって、2025年以前の下請法のもとでは適用されなかった取引も、2026年の取適法施行後は取適法の適用対象になっている可能性があります。取適法の適用がある場合には発注書の交付義務を負います。まずは、自社の取引が取適法の適用を受けるのかどうかをしっかりと確認しましょう。

取適法を守りながら発注書(4条書面)を作成するには

取適法の対象となる取引では、単に発注書を出せばよいというものではなく、法律で定められた項目をすべて記載した第四条の規定による書面(4条書面)を交付する必要があります(旧下請法では3条書面と呼ばれていました)。

発注書に記載すべき主な必須項目は以下のとおりです。

No. 記載事項 記載のポイント
1 委託事業者(発注者)および中小受託事業者(受注者)の名称(氏名) 略称ではなく、正式名称(株式会社〇〇など)を記載。部署名や担当者名もあるとより確実
2 発注日(契約締結日) 発注書を発行した日付。「業務開始日」より後になっていると、先行着手の証拠となる
3 給付の内容(製造・修理・作成・役務の内容) 最も重要な項目。何を委託するのか具体的かつ明確に記載。「別紙仕様書通り」とする場合は、その仕様書が特定できるように記載
4 給付を受領する期日(納期) 「2026年〇月〇日」と特定。「要相談」「随時」「出来上がり次第」といった曖昧な表現は不可
5 給付を受領する場所(納品場所) 物品の納入場所(住所、倉庫名)や、データの送信先(メールアドレス、サーバーのURL)を記載
6 給付の内容の検査を完了する期日 納品後に検査をおこなう場合、検査完了期日を記載。検査を行わない場合は記載不要だが、トラブル防止のため検査の有無は明記すべき
7 製造委託等代金の額(発注金額) 確定した金額を記載。単価契約の場合は「単価×数量」という算定式でも可(具体的金額が計算できる状態であること)
8 製造委託等代金の支払期日 「受領日から60日以内」かつ「できる限り短い期間」で設定。「月末締め翌月末払い」などが一般的

とくに注意が必要なのは支払期日です。発注者は、納品物を受け取った日から60日以内に代金を支払う義務があります。

また、手形払いなどの制限も厳しくなっているため、現金振り込みなどの適切な支払条件を発注書に明記してください。

なお、建築現場での施工など建設業の請負契約にかかわる発注をおこなう場合は、別途「建設業法」が適用されるケースもあるため、対象となる業界ごとのルールもあわせて確認しておきましょう。

弁護士・南 陽輔のコメント:
取適法では、発注の際に「直ちに」発注書を交付すべき義務があります。この「直ちに」について、公正取引委員会が公表しているQ&Aを参照すると、数日空けることも許容されないものとされています。
他方で、発注時にその内容が定められないことについて「正当な理由」がある場合には、その事項については明示せずに交付することも可能です。ただし、その場合には交付書面に「正当な理由の内容」と、「内容を定めることとなる予定期日」を記載したうえで、後日、内容が確定した際にはその内容を記した書面(補充書面)を交付する必要があります。

発注書の用意にまつわるQ&A

発注書の用意にまつわる

発注書の作成や管理について、よくある疑問をまとめました。日々の業務のなかで迷うことがあれば、ぜひ参考にしてください。

Q. 発注書と発注請書との違いは?

発注書は、依頼する側が「この内容で仕事をお願いします」と意思表示をするための書類です。

一方の発注請書(はっちゅううけしょ)は、依頼された側が「その内容で仕事を引き受けます」と承諾の意思表示をするための書類です。

これら2つの書類が揃うことで、双方が条件に合意したことが客観的に証明され、契約が成立したとみなされます。

トラブルを防ぐため、発注書を発行したら必ず発注請書を返送していただく運用をおすすめします。

※発注請書については以下の記事でも詳しく解説しております。ぜひあわせてご覧ください。

発注請書(注文請書)とは?発注書との違い・書き方・印紙の要否を解説

Q. 発注書に印鑑や収入印紙は必要?

発注書への印鑑(押印)は、法律上必須ではありません。印鑑がなくても発注書としての効力は持ちます。

しかし、実務上は文書の偽造や改ざんを防ぎ、社内での決裁が完了していることを証明するため、角印(社印)などを押すのが一般的です。

近年ではWeb上での取引が増えているため、電子署名や電子印鑑を利用することも多くなっています。

また、収入印紙についてですが、発注書単体には原則として収入印紙を貼る必要はありません。

ただし、発注書自体に請負契約を成立させる効力を持たせている場合や、受注者が発行する発注請書には、契約金額に応じて収入印紙の貼付が必要になることがあります。

迷った場合は、あらかじめ専門機関や公的なガイドラインを確認しましょう。

※発注書への押印については以下の記事でも詳しく解説しております。ぜひあわせてご覧ください。

発注書は角印と丸印のどちらを押すべき?正解と失敗しない押し方を解説

弁護士・南 陽輔のコメント:
補足しますと、収入印紙は、紙媒体の場合に必要になります。電子契約、電子メール等の電磁的記録で4条書面を交付する場合には、印紙は不要です。

Q. 発注書の保存期間は何年?

法人の場合は、原則として事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から「7年間」保存しなければなりません(欠損金の繰越控除を受ける事業年度などは、最長10年間となります)。
個人事業主の場合は、原則「5年間」(消費税の課税事業者は7年間)です。

また、電子帳簿保存法により、メールやクラウドサービスなど電子データでやり取りした発注書は、紙に印刷して保存するのではなく、電子データのまま所定の要件を満たして保存する必要があります。

システムを導入するなど、適切な保存環境を整えましょう。

※電子帳簿保存法については以下の記事にて詳しく解説しております。ぜひあわせてご覧ください。

【電子帳簿保存法】義務化後の発注書はどう保存する?2026年最新版

記事のまとめ:発注の仕組みを理解し、適切な発注書を用意しましょう

記事のまとめ:発注の仕組みを理解し、適切な発注書を用意しましょう

発注書は、仕事を依頼する側である発注者が用意するのが基本です。

しかし、実務においては受注側がひな形を用意するなど、双方が協力してスムーズな取引を目指すことが大切です。

本記事でご紹介したルールや書類ごとの役割をあらかじめ把握し、取引先との間でトラブルのない健全なビジネスコミュニケーションを構築していきましょう。

参照:公正取引委員会「中小受託取引適正化法テキスト」
参照:政府広報オンライン「2026年1月から下請法が「取適法」に!委託取引のルールが大きく変わります」

※取適法と発注書については以下の記事でも詳しく解説しております。ぜひあわせてご覧ください。

取適法における発注書とは?必要な記載事項を徹底解説【2026年法改正対応】

弁護士・南 陽輔のコメント:
取引実務では、発注者が発注書を作成せずに、受注者側の見積書や仕様書、請書などが事実上の発注書の役割を兼ねるということもあるかと思います。
ただ、取適法の適用のある取引においては、発注者が取引内容を明示した書面(4条書面)を交付する義務を負っています。4条書面の交付義務を怠ってしまうと、公正取引委員会等から指導、勧告を受けたり、罰則が適用されるおそれがあります。
取適法は、従来の下請法よりも適用範囲が広くなっています。事業者の皆様は、従来から継続している取引関係についても、改めて取適法の適用を受けるかどうかご確認いただき、適用のある場合には、法令の要件を満たす正確な発注書を発行するようにしてください。

※免責事項

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