注意事項
・本記事は公開時点の情報に基づいています。法令・制度変更等により内容が変わる可能性があるため、最新情報は公式サイト等でご確認ください。
・記事内の画像はイメージです。実際の商品・サービスとは異なる場合があります。
会社の経営において、「利益は出ているのにお金が足りない」という悩みを抱える方は少なくありません。
その原因の多くは、売掛金と買掛金の管理にあります。
この記事では、キャッシュフローや売掛金・買掛金の基本から、それらが増減することで手元の資金にどのような影響があるのかをわかりやすく解説します。
物理的な商品の仕入れだけでなく、IT系や建築系などのサービス発注にかかわる中小受託事業者の方もぜひ参考にしてください。
【目次】
そもそもキャッシュフロー・売掛金・買掛金とは?
会社の資金繰りを理解し、適切な経営判断を下すためには、まずは基本的な用語の意味を正しく把握することが大切です。
ここでは、
- キャッシュフロー
- 売掛金
- 買掛金
の3つの言葉について解説します。
とくに経理や財務の実務に初めて触れる方は、それぞれの役割と違いをしっかりとおさえてください。
キャッシュフローとは
キャッシュフローとは、会社に入ってくるお金(キャッシュイン)と、会社から出ていくお金(キャッシュアウト)の流れ(フロー)のことです。手元にいくら現金が残っているかを示す重要な指標となります。
売掛金とは
売掛金とは、商品やサービスを提供したものの、まだ受け取っていない代金のことです。
こちらが受注側でWeb制作などの業務を完了し、相手に請求書を出してから実際に入金されるまでのお金が売掛金に該当します。
買掛金とは
買掛金とは、商品やサービスを購入または発注し、まだ支払っていない代金のことです。
こちらが発注側で、協力会社に業務を委託したあとの外注費など、後日支払う義務のあるお金を指します。
利益とキャッシュフローにはズレがある?

損益計算書上では利益が出ているにもかかわらず、手元の現金が少ないと感じたことはありませんか?
これは、売上や経費が計上されるタイミングと、実際に現金が動くタイミングにズレが生じるため起こるのです。
経営を安定させるには、この時間的なギャップを正しく管理しなければなりません。
ここでは、ズレが発生する具体的な仕組みと、それが引き起こすリスクについて解説します。
売上と入金のタイミングはズレる
企業間の取引では、商品やサービスの提供ごとに現金をやり取りするのではなく、1か月分などをまとめて後日請求する掛け取引が一般的です。
そのため、売上が確定した日と、実際に現金が振り込まれる日までには、数週間から数か月のタイムラグが発生します。
利益が出ているのに資金がショートする“黒字倒産”とは
帳簿上は黒字であっても、売掛金の入金よりも先に買掛金や経費の支払い期限がきてしまい、手元の現金が底をつく状態を「黒字倒産」と呼びます。
事業自体は順調でも、資金繰りの悪化によって倒産してしまうこともあり得ますので、あらかじめ十分な対策をしてください。
売掛金・買掛金の増減がキャッシュフローに与える影響
売掛金や買掛金が増えたり減ったりすることは、手元の現金に直接的な影響を及ぼします。
それぞれの勘定科目がどのようにキャッシュフローと連動しているのかを整理し、日々の取引が資金繰りに与える効果を正確に把握してください。
以下の表に、増減とキャッシュフローの関係をまとめました。
表の内容をあらかじめ頭に入れて、より安全な資金計画を立てていきましょう。
| 項目 | 増加した場合 | 減少した場合 |
|---|---|---|
| 売掛金 | キャッシュフローの悪化(マイナス) | キャッシュフローの改善(プラス) |
| 買掛金 | キャッシュフローの改善(プラス) | キャッシュフローの悪化(マイナス) |
売掛金の増減が与える影響
売掛金が増加するということは、まだ受け取っていないお金が増えることを意味するため、手元の現金は減少しキャッシュフローは悪化します。
逆に、売掛金が減る(回収できる)と、現金が増えるためキャッシュフローは改善します。
買掛金の増減が与える影響
買掛金が増加すると、支払いを後回しにできている状態となるため、手元の現金は一時的に残り、キャッシュフローは改善します。
反対に、買掛金が減少する(支払いをする)と、現金が出ていくためキャッシュフローは悪化します。
表や解説を見て、
「なぜ売掛金が増えるとマイナスになるの?」
と疑問に感じた方は、売掛金を「ツケで売っている状態」、買掛金を「ツケで買っている状態」とイメージしてみてください。
ツケで売る(売掛金が増える)とお金はまだ入ってこないため手元の現金は不足しやすくなります。
反対に、ツケで買う(買掛金が増える)と支払いを待ってもらっている状態になるため、手元の現金は残ることになります。
キャッシュフロー計算書(間接法)での扱われ方

会計の世界では、会社の資金の流れを正確に把握するためにキャッシュフロー計算書を作成します。
実際の現場では、損益計算書の利益からスタートして現金の増減を計算していく間接法という手法がよく使われます。
この計算書において、売掛金や買掛金がどのように表示され、どのような計算処理がされているのかを確認してください。
仕組みを理解することで、財務状況を読み解く力が身につきます。
※間接法(かんせつほう)とは
損益計算書の「利益」を出発点として、そこに現金の出入りをともなわない項目や、売掛金・買掛金の増減などを足し引きすることで、現在のキャッシュフローを計算する方法のことです。一からすべての現金の動きを集計する「直接法」にくらべて作成の手間がかからないため、多くの会社で採用されています。
営業活動によるキャッシュフローにおける表示
キャッシュフロー計算書は、
- 営業活動
- 投資活動
- 財務活動
の3つに分かれています。
売掛金や買掛金の増減は、本業の営業取引にかかわるため、すべて「営業活動によるキャッシュフロー」の項目内に記載されます。
なぜ売掛金の増加分をマイナス(減算)するのか?
間接法では、まず売上(未入金を含む)を利益としてプラス計上しています。
しかし、売掛金が増加した分はまだ現金として手元に入ってきていません。
そのため、帳簿上の利益と実際の現金を一致させるために、売掛金の増加分をあえてマイナス(減算)処理するのです。
売掛金と買掛金のバランスと立替期間に注意
キャッシュフローを健全に保つためには、売掛金の回収と買掛金の支払いのタイミング、つまり両者のバランスを意識することが不可欠です。
支払いが先で回収が後になると、会社が一時的に資金を立て替える期間が発生してしまいます。
この期間が長引くほど、手元の現金が目減りしていくため注意してください。
ここでは、支払いと回収の関係性や、立替期間が資金繰りに与える影響について詳しく解説します。
支払いサイトと回収サイトの基本的な関係
取引が発生してから入金されるまでの期間を「回収サイト」、支払いを行うまでの期間を「支払いサイト」と呼びます。
キャッシュフローを安定させる基本は、回収サイトを短く、支払いサイトを長く設定することです。
サイトのズレが引き起こす資金の立替期間とは
たとえば、協力会社への外注費を月末に支払い、自社の売上入金が翌月末になる場合、1か月間は自社で資金を立て替えることになります。
この立替期間が長くなるほど、手元の現金が不足しやすくなるため、余裕を持った資金計画を立てていきましょう。
キャッシュフロー安定の鍵は「売掛金と買掛金の確実な管理」

資金繰りを安定させるためには、日常的な業務における確実な管理が重要です。
玄人向けの手法に惑わされずに、まずは基本となる契約条件の明確化や、入出金期日の管理を徹底していきましょう。
これらを怠ると、どれだけ売上を伸ばしても資金ショートの危機に陥る可能性があります。
ここでは、ビジネスを安全に進めるための具体的なポイントを紹介しますので、自社の業務フローと照らし合わせながらご覧ください。
契約書や注文書で回収条件を明確に取り決める
取引を始める際は、口約束ではなく、発注書や注文書などの書類を用いて、支払いサイトや回収条件を明確に定めてください。
とくに中小受託事業者やフリーランスとの取引では、製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(通称:取適法)などの法令を遵守し、適正な条件を設定しましょう。
なお、特定運送委託に該当する取引などにおいても同様の注意が必要です。
※取適法については、以下の弁護士監修記事にて詳しく解説しております。ぜひあわせてご覧ください。
取適法対応の契約書作成ガイド|条項例・チェックリスト・改定ポイント
支払・入金の期日管理を徹底し、回収遅延を防ぐ
Excel(エクセル)やWord(ワード)などのツールを活用し、いつ・誰から・いくら入金されるのかを正確に管理してください。
入金が一日でも遅れている場合は、すぐに取引先に状況を確認し、回収遅延を防ぐことが重要です。
資金繰りの選択肢としてファクタリング(早期資金化)を知っておく
万が一、一時的な資金不足に陥った場合の備えとして、売掛債権を専門の事業者に売却して早期に現金化するファクタリングという手法を知っておきましょう。
手数料はかかりますが、いざというときの資金繰りの選択肢として有効です。
記事のまとめ:売掛金と買掛金を適切に管理してキャッシュフローを安定させましょう

この記事では、売掛金と買掛金の仕組みや、それらの増減がキャッシュフローに与える影響について解説しました。
手元の資金を枯渇させないためには、利益だけでなく現金の動きに目を向けることが不可欠です。
Excel(エクセル)やWord(ワード)などのツールを活用して日々の入出金を正確に把握し、期日管理を徹底してください。
紹介したポイントをもとに自社のルールを見直し、安全で安定した経営基盤を作っていきましょう。
なお、自社の具体的なキャッシュフロー分析や資金繰り表の作成、適切な回収サイトの設定などに不安がある場合は、顧問税理士や顧問会計士などの専門家に相談しながら、自社に最適な資金管理体制を整えていくことをおすすめします。
参照:公正取引委員会「中小受託取引適正化法ガイドブック「下請法」は「取適法」へ~知っておきたい制度改正のポイント~」
本記事は、作成時点の法令、ガイドライン、および公的機関の情報に基づいて作成されています。内容の正確性には万全を期しておりますが、法改正や制度変更等により、最新の情報と異なる場合があります。
また、本コンテンツは一般的な情報の提供を目的としており、法律的、税務的その他の具体的なアドバイスをするものではありません。個別具体的な事案については、必ず弁護士、税理士等の専門家にご相談ください。
本記事の情報を利用して行われた判断やアクションによって生じた損害、およびリンク先情報の正確性等について、当社は一切の責任を負いかねます。なお、本記事の記載内容は予告なしに変更することがあります。
この記事を書いた人
TCNBが運営する、ビジネスパーソンのための情報発信メディアです。皆様の業務効率化、最新トレンド把握、知識向上を徹底的にサポート。「困った」を解決するすぐに役立つノウハウや専門性の高いコラムを提供します。