注意事項
・本記事は公開時点の情報に基づいています。法令・制度変更等により内容が変わる可能性があるため、最新情報は公式サイト等でご確認ください。
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2024年11月1日に施行されたフリーランス保護法は、企業が個人で働くフリーランス(特定受託事業者)に業務を委託する際の新ルールです。
これまで曖昧になりがちだった契約内容や支払い期限を明確に定めることで、企業とフリーランスの双方が安心して働ける環境を整えるのが狙いです。
本記事では、フリーランス保護法の正式名称や呼び方、さらに押さえるべき重要ポイントについてわかりやすく解説します。
フリーランスになりたての方や、初めてフリーランスと取引を行う委託事業者の方でもわかるように解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
2008年に弁護士登録し、大阪市内の法律事務所に勤務したのち、2021年に独立開業しました。契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
※本記事で解説する支払ルールや禁止事項などの多くは、従業員を雇用している発注者(企業・個人問わず)に適用される義務です(書面等の交付義務は従業員を使用していない発注者も対象となります)。
【目次】
フリーランス保護法の正式名称は?
フリーランス保護法の正式名称は、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」といいます。
俗称として、「フリーランス法」「フリーランス新法」「フリーランス保護法」といった呼び方が存在しています。
どの呼び方が良いのか迷った際には、公正取引委員会の特設サイトなどで記載のある「フリーランス法」を使用すれば間違いないでしょう。
フリーランス保護法の目的とは?
この法律の主な目的は、「フリーランスが安心して働ける環境を整備すること」と「取引の適正化を図ること」の2点です。
まずは、法律の具体的な内容について詳しく見ていきましょう。
フリーランス保護法は、端的に言えば取適法(旧・下請法)と労働基準法をフリーランスにも取り入れようというものです。取適法で定められている取引の適正化のための制度と、労働基準法で定められている労働者の環境整備に関する制度をフリーランスという働き方においても適用できるようにすることで、フリーランスの方々を保護するためのものとして制定されました。
フリーランス保護法とは
本法律では、仕事を発注する側を「特定業務委託事業者」、受注する個人を「特定受託事業者」と定義しています。
従来の下請法(現・取適法)ではカバーしきれなかった、資本金1,000万円以下の企業と個人間の取引なども広く対象に含まれるようになったのが大きな特徴です。
物理的な商品の納品だけでなく、Webサイトの制作や、協力会社へのシステムエンジニアリングサービス(SES)といった役務の提供も対象となります。
近年、多様な働き方が広がる中で、組織に属さないフリーランスの存在感が高まっています。
しかし、企業と個人(フリーランス)の間には、情報量や交渉力に格差が生じやすく、
「報酬が支払われない」
「一方的に仕様を変更される」
といったトラブルが後を絶ちませんでした。
とくにIT業界や建設業界では、委託の連鎖の中でフリーランスや小規模な事業者が不利な条件を押し付けられるケースも見受けられます。
また、貨物運送などの特定運送委託においても、適正な対価が支払われないなどの課題がありました。
これらを法律で規制することで、フリーランスの経済的安定を図り、健全なビジネスサイクルを生み出すことにつながるとされています。
取適法との比較でいうと、フリーランス保護法では業態の限定がなく広く適用されるという点に特徴があります。取適法では、製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託と特定運送委託という5種類の業態にのみ適用されるものですが、フリーランス保護法では業態による限定はありません。本文で挙げられている発注者(特定業務委託事業者)と受注者(特定受託事業者)の取引であれば適用されることになります。
フリーランス保護法で押さえておきたい3つのポイント

企業がフリーランスと取引を行う際、必ず遵守しなければならないポイントは大きく分けて3つあります。
これらは「知らなかった」では済まされない法的義務です。本章でこの3つのポイントについておさらいし、自社内でもフリーランス法に対する管理体制を整えておきましょう。
① 取引の適正化(書面での明示)
業務を委託した直後に、以下の内容を記載した書面(またはメールなどの電磁的方法)を直ちに交付しなければなりません(即時交付が原則です)。
- 発注事業者・フリーランスの名称
- 業務委託をした日
- 給付の内容
- 給付を受領する期日/役務の提供を受ける期日
- 給付を受領する場所/役務の提供を受ける場所
- 検査完了期日(検査をする場合のみ)
- 報酬の額および支払期日
- 報酬の支払方法に関すること(現金以外の方法で報酬を支払う場合のみ)
口頭での約束はトラブルの元です。
書面と電磁的方法(Web上の契約締結サービスなど)のどちらで明示するかは、発注者側が決めることができます。
もし、電磁的方法で明示した場合に、フリーランス側から書面でも残したいと求められた場合は、フリーランスの保護に支障がある場合を除いて、書面を交付しなければなりません。
② 報酬支払のルール(60日以内)
報酬は、納品物を受け取った日(またはサービス提供を受けた日)から起算して60日以内の、できる限り短い期間内に支払わなければなりません。
「クライアントから入金があってから支払う」といった自社都合の支払サイクルは認められません。
たとえIT開発の検収に時間がかかる場合や、建設の工程が遅延している場合であっても、この60日ルールは厳守する必要があります。
ただし、委託事業者がフリーランスに再委託をした場合、通常明示すべき書面内容に加えて、
- 再委託である旨
- 元委託者の名称
- 元委託業務の対価の支払期日
を明示した場合には、元委託業務の支払期日から起算して30日以内のできる限り短い期間内で支払期日を決定することができます。
60日ルールとの関係では「納品物(サービス提供)を受けた日」を基準としなければならない点に注意が必要です。よくある誤解として「検収を完了した日」から60日と認識してしまうケースが挙げられます。検収は、発注者側の都合で完了時期を延ばすことが可能になり、60日ルールが形骸化してしまうおそれがあります。そのため、フリーランス保護法では、「検査するかを問わず」、「給付を受領した日から起算して60日以内」と明確に定められています。
③ 就業環境の整備
フリーランスが安心して働けるよう、以下の配慮が義務付けられています。
| 募集情報の正確な表示 | 求人サイトやWebサイトなどで募集を出す際、虚偽の内容や古い情報を載せてはいけません。 |
|---|---|
| 育児・介護等への配慮 | 6か月以上の継続的な契約の場合、フリーランスが育児や介護と仕事を両立できるよう、申し出に応じて必要な配慮を行う義務があります。 |
| ハラスメント対策 | セクシュアルハラスメントやパワーハラスメントを防ぐための相談窓口の設置など、適切な体制整備が必要です。 |
| 中途解除の事前予告 | 6か月以上の継続的な業務委託契約を解除する(または更新しない)場合、原則として30日前までに予告する義務があります。 |
委託相手がフリーランスだからといって、ぞんざいな扱いは決して許されません。
対等なビジネスパートナーとして尊重することで、自然とフリーランス法も守れるようになるはずです。
就業環境の整備との関連で注意していただきたいのが、実質的な働き方によっては労働基準法等の労働法規の適用もありうるという点です。業務委託の契約形態を取りながらも実質的には雇用契約における労働者と同じ働き方をしている(させている)場合には、「労働者」に当たります。ケースバイケースですが、一般的には業務時間や業務場所を指定して働いている場合には、「労働者」に当たる可能性が高くなります。実質的に労働者と評価される場合には残業代や解雇制限などの労働法規の適用を受けることも考えられます。
フリーランス保護法でやってはいけない禁止事項

継続的な業務委託(期間が1か月以上など)を行う場合、発注者側は以下の禁止事項を守らなくてはなりません。
これらは、たとえ双方で合意があったとしても認められませんので、注意して確認しておきましょう。
| 禁止事項 | 内容の例 |
|---|---|
| 受領拒否 | 注文したWeb(ウェブ)システムを、理由なく受け取らないこと |
| 報酬の減額 | 発注時に決めた金額を、後から一方的に安くすること |
| 返品 | 納品された物品を、欠陥がないのに返品すること |
| 買いたたき | 相場に比べて著しく低い報酬を無理やり押し付けること |
| 購入・利用強制 | 自社の製品やサービスを強制的に買わせること |
| 不当な給付の要請 | 契約にない追加作業や、金銭の提供を無償で要求すること |
| 不当な変更・やり直し | 発注者の都合で、何度も無償で修正をさせること |
IT系の案件などで、当初の契約時の要件にない機能を「サービスで追加して」と要求することも、不当な給付の要請にあたる可能性があるため注意が必要です。
上記のような禁止事項が行われた場合には、公正取引委員会または中小企業庁に申し出ることができます。申し出があった場合には調査が行われ、違反事実が認められれば発注者側に対して是正勧告、命令が出されることになります。事案によっては公表されて社会的制裁を受けることになる可能性もあります。なお、労働環境の整備に関する違反があった場合には厚生労働大臣に申し出ることができます。
記事のまとめ:フリーランス保護法を守って良好なビジネスパートナーシップを構築しましょう

フリーランス法は、個人で働くビジネスパートナーを守るだけでなく、発注側である企業にとっても、コンプライアンス遵守と優秀な人材確保のために重要な法律です。
書面の交付や60日以内の報酬支払い、ハラスメント対策といった基本ルールを徹底することで、不要なトラブルから身を守ることにもつながります。
どのようなビジネス形態においても、透明性の高い取引を行い、より強固な協力関係を築いていきましょう。
フリーランス保護法は、取適法(従来の下請法)では保護されなかった事業者間の取引にまで適用範囲を拡大し、フリーランスで働く方々を保護するためのものです。フリーランスの方々が安心して働けるように、労働基準法での就業環境の整備と同様の規定も設けられています。違反行為があった場合には、公正取引委員会等の是正勧告等を受けることになります。
フリーランスで働く方々にとっては非常に心強い法律であると言えます。
参考:公正取引委員会「2025年公正取引委員会フリーランス法特設サイト」
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